スポーツ観戦はナマに限る。バットがボールを捕らえる乾いた音や、ディフェンダーとフォワードの肉弾戦、あるいは観客の歓声と罵声のコーラスなどは、その場にいなければ体感することができない。

 しかしながら、広い競技場の中にいると、試合のディテールがよくわからない。つい選手そっちのけで大型ビジョンに見入ってしまう事も少なくない。実際、数年前にロンドンのスタンフォードブリッジで、チェルシー対バルセロナの試合を観戦した際、前から4列目という好席だったことが災いし、逆サイドの攻防が全く分からなかった......。しかもスタジアムにいるにも関わらず、当時バルサの中心選手だったロナウジーニョの神業的ゴールも見えず(敵チームのゴールなので大型ビジョンでのスロー再生もなし)、試合詳細はホテルのテレビで確認するしかなかったという残念な思い出もある。

 そういう点から考えると、テレビ観戦にはスタジアムの臨場感とはまた違った価値があるといえるのではないか。懇切丁寧な解説はあるし、スロー再生や拡大画像もすぐ入る。今季の成績や相性、配球の予想やコーチの表情、スタンドでふんぞり返るオーナーや、OBまで映してくれるので、スポーツ観戦を何倍にも楽しむことができる。

 2月7日に開会式を迎える(競技は前日からスタート)ソチ五輪も、大半の人は国内でテレビ観戦となると思うが、現地組を羨ましがる必要はない。自宅でヌクヌクと観戦する。最高じゃないか。

 今回の最大の目玉競技は、何といっても男女のフィギュアスケート。さらに冬季五輪史上最多となる7度目の出場となるスキージャンプのレジェンド、41歳の葛西紀明の雄姿や、初代女王を確実視されているスキージャンプ女子の17歳、高梨沙羅にも期待が高まる。

 個人的には、冬季オリンピックの花形であるアルペンスキーにも注目したい。アルペンスキーのトップ選手は、欧州のスポーツセレブで、観客が一番盛り上がる大会のハイライトだ。なかでも、カチカチのアイスバーン状のコースをまさしく飛ぶように滑走するダウンヒルのスピード感は鳥肌モノ。ただし、これも現場にいると一部しか見ることができない。つまりテレビ観戦に最適な競技だ。

 日本の湯淺直樹と佐々木明(どちらもスラローム)両選手の健闘にも期待したい。さらに、メキシコ唯一の出場選手、フーベルトゥス・フォン・ホーエンローエにも注目だ。彼のレーシングスーツは民族音楽を演奏する"マリアッチ"風。メキシコの大富豪の御曹司で、趣味が高じてスキー協会を設立し、そのまま五輪出場にまでこぎつけたとか。アルペン界の『クールランニング』的ポジションだが、こういう奇抜な選手がいるのもオリンピックの魅力のひとつだろう。

 アルペンスキーやスノーボードのスラロームなどで、各選手のタイムがテレビ画面上に表示されるが、"記録に関する情報量"がここ数年で一気に増えたと感じている人はたくさんいるのではないだろうか? 水泳で、ゴールにタッチした瞬間、プールのレーン上に選手名が表示されるシステムはその好例。選手たちの白熱した戦いの臨場感が、よりダイレクトにテレビに伝わる時代になっている。

 これに一役買っているのが、時計ブランド「オメガ」の技術だ。

 オメガは1932年のロサンゼルス大会から2012年のロンドン大会までの計25回のオリンピック公式計時を担当。もちろんソチ五輪もオメガが担当している。

 やり直しがきかないスポーツ計時を担うことは、時計メーカーにとって大きな名誉だが、オメガではオリンピックの計時を通して、さまざまな名シーンに立ち会い、記録計測という形で大会を盛り上げてきた。

 さらにテレビモニター上に世界記録との差を表示する「バーチャルレコードライン」や、GPSや無線装置を駆使して競技者の位置を把握し、ゴールまでの予想タイムを計測する技術も開発。オメガの技術が、テレビ観戦ならではの迫力や臨場感を伝える役目まで果たしているのだ。

 冬季オリンピックの場合、天候が急変しやすい雪山での競技が多く、計測機器の開発やメンテナンスには細心の注意を必要とする。また、最新技術にも力を入れており、2010年のバンクーバーオリンピックでは、閃光ガンと音響発生ボックスを組み合わせる「スターティングピストル」を開発。アルペンスキーでは「スノーゲート」というスターティングゲートを登場させた。

 当然、ソチでも新たな計時システムや器具が登場することだろう。つまり、オメガはオリンピックを支える陰の主役。記録だけでなく記憶に残る名勝負を演出するための黒子として、八面六臂の活躍をしている。そしてそれらの進化が、テレビ観戦者をさらに楽しませてくれることになるのだ。

篠田哲生●文 text by Shinoda Tetsuo