もしも自転車で電気を作って売電したら「全力で8時間こいでも日当は182.4円」

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自分で電気を作るとしたらどのような方法が考えられるだろうか。各家庭で発電できれば送電ロスもなく合理的なのだが、日本の電力は複雑で、融通しあうのも、家庭で発電するのも一筋縄ではいかないのだ。

家庭用コンセントに流れる電気は交流と呼ばれ、電池とは異なりプラス/マイナスの明確な区別がない。コンセントを左右逆に差し込んでも扇風機が逆回転しないのは、交流はプラスとマイナスが周期的に入れ替わるように、電圧が波打ちながら増減しているためだ。

対して太陽電池パネルは直流を発電するため、そのままつないでも家電には使えないため、直流を交流に変換する装置が必要だ。

交流で大事な要素は2つあり、周波数と波形だ。どちらも増減する電圧に関係し、周波数は1秒間に起きる波の回数がHz(ヘルツ)で表される。日本には2種類あり、静岡県の富士川と新潟県の糸魚(いとい)川付近を境に、東が50Hz、西は60Hzで、導入時におとなの事情で分かれたらしい。

Hz数と供給電力会社をまとめると、

・50Hz地区 … 北海道、東北、東京

・60Hz地区 … 中部、北陸、関西、四国、中国、九州、沖縄

・50/60Hz混合 … 中部

だ。周波数は音の高さと同様に、簡単には変更できない。しかも日本には変更できる設備が3つしかないので、東西をまたいだ大規模な電力融通は、事実上不可能なのだ。

また、波形はサイン波と呼ばれる滑らかなカーブを描く必要がある。白熱球や電動工具はサイン波以外でも動作するものが多いが、パソコンのような精密機器は誤作動の原因となる。そのためインバーターと呼ばれる回路で制御するのだが、消費電力が増えるにつれ強力なインバーターが必要となり、規模もコストも格段と跳ね上がってしまうのだ。

■日給182円!

この悩みを解決するのがオルタネーターで、回転させると交流を発電する便利な機械だ。工事現場で使われる発電機や、自動車のバッテリーを充電する装置にも使われ、これを自転車につないで回転させれば、少ない部品で発電できそうだ。

神奈川県の調査によると、スポーツジムにあるフィットネスバイクの稼働率は平日で49.1%、平日以外は69.9%にも及び、これにオルタネーターを取り付けると1時間当たり100W、つまり0.1kWh発電できると試算されている。

ただしこの電力量ではトイレの照明が関の山で、フィットネスバイクを10〜15台同時にこがないとエアコンは作動しない。自転車のライトを点けるだけでもペダルが重くなるように、オルタネーターを回すには多大の労力が必要なのだ。

そこで軽い力でも回せるコアレス発電機を利用することにしよう。直径30cmものを毎分300回転させると500W、35cm・350回転/分なら2,000Wも発電できる。高知工科大学のwebでは瞬間最大600Wを発電できたというから、その威力や推して知るべしだ。

フィットネスバイク、発電機、制御装置を用意すると50万円程度だろうか、これでビジネスが成り立つのか? 瞬間最大600Wを維持すべく1日8時間ひたすらこぎ続け、制御装置でロスが生じなかったと仮定すると、1日4.8kWh、月に20日勤務で年間1,152kWhが発電できる。

これを太陽光発電(住宅用)と同額で売ったとすると、1kWhあたり38円なので年間で43,776円、元手を回収するまでに11.4年かかる計算だ。24時間・365日稼働しても5,256kWh=20万円弱で、むこう2年半は給料なし状態となってしまう。

全力で8時間こいでも日当は182.4円。たとえ個人事業でもブラック過ぎる。その脚力で競輪選手を目指した方がはるかに現実的だ。

■まとめ

2016年の電力小売自由化を控え、家庭での発電もあらたな局面を迎えようとしているが、人力発電では赤字確定なので止めておこう。

ただし2010年にスタートした売電も、わずか3年で10円も値下がりしているから、主力の太陽光発電でももとがとれるか疑問なのだが。

(関口 寿/ガリレオワークス)