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●「Zen」をもってしても、プロ棋士にはまだ歯が立たないのが現状ドワンゴは31日、人間とコンピュータが囲碁で対局する「囲碁電王戦」を開催することを発表した。

対局日程は2月11日と16日。対局会場は日本棋院の「幽玄の間」で、対局の模様はニコファーレにて大盤解説されるほか、動画サービス「ニコニコ生放送」でも生中継する。11日はプロ棋士の張豊猷八段と平田智也三段がコンピュータ囲碁ソフト「Zen」と9路盤で対局。そして、16日は江村棋弘アマ七段が13路盤、政治家の小沢一郎氏が19路盤でそれぞれ対局を行う。

ニワンゴ杉本社長は今回の企画に取り組むことになった経緯として、昨年大きな盛り上がりを見せた「将棋電王戦」を挙げ、「将棋の電王戦では多くの人を巻き込むことができた。囲碁に関しても、niconicoは2009年から囲碁講座やタイトル戦の中継を行ってきた。囲碁という日本を代表する伝統競技で新たな可能性を追求し、ファンの裾野を広げるために今回の取り組みに至った」と解説。また、日本棋院副理事長の山城宏氏は「将棋会ではいち早く(人間VSコンピュータの大戦が)人気を博しているが、ついに囲碁でもこうしたことをやっていただけるということでうれしく思う。電王戦が毎年続いて囲碁界が盛り上がるように日本棋院としても努力していきたい」とコメントしている。

さて、そんな囲碁電王戦で人間に挑むのは、加藤英樹氏率いるチームDeepZenが生み出した囲碁ソフト「Zen」だ。「第5回UEC杯コンピュータ囲碁大会」優勝をはじめ、各大会で25回の優勝をほこるなど、コンピュータ囲碁の世界では最強と名高いソフトである。

もっとも、その「Zen」をもってしても、プロ棋士にはまだ歯が立たないのが現状だ。近年は技術の進歩により急速に実力を増してはいるものの、ハンディキャップなしでは勝負にならない。そこで、今回の企画では、9路盤、13路盤、19路盤の3種類の盤を使って対局を行うことになった。

まず9路盤で「Zen」と対局するのは、プロ棋士として活躍する張豊猷八段と平田智也三段の2人だ。張豊猷八段は台湾出身の33歳。12歳で来日し、日本ナショナルチームのコーチも務める実力派だ。平田智也三段は、アジア競技大会で世界戦ベスト4などの実績を持つ韓国の羅玄三段に勝利した注目の若手棋士である。この2人の対局は2月11日に行われる。

続いて16日には、アマチュア日本代表である江村棋弘氏が13路盤で、そして政治家の小沢一郎氏が19路盤で「Zen」と対局を行う。江村氏は2年連続で世界アマチュア囲碁選手権日本代表になるなどアマチュア最強の実力者。小沢一郎氏は囲碁好きが多い政治家の中でも、トップクラスの強さの持ち主として評されている人物である。江村氏には及ばないが、アマチュアとしてはなかなかの実力者といえる。なお、いずれも勝負もハンディキャップはない。

ではなぜ同じ「Zen」に、プロ棋士、アマチュア、小沢氏という実力の異なるメンバーが挑むのか。簡単に解説しておこう。……続きを読む

●「自由度の高さ」こそ、コンピュータがもっとも苦手とするところポイントは「9路盤」「13路盤」「19路盤」という3種類の碁盤だ。通常、囲碁で用いられる碁盤は「19路盤」と呼ばれるもので、縦横に引かれた19×19の線で構成されている。囲碁は線と線との交点に石を置いていく競技なので、単純計算で石を置ける場所が361箇所ある計算になるわけだ。ということは、13路盤は「13×13」なので169箇所、9路盤は「9×9」なので81箇所となる。つまり、19路盤がもっとも勝負のフィールドが広く、自由度が高いのである。この「自由度の高さ」こそ、コンピュータがもっとも苦手とするところなのだ。

日本棋院と提携してコンピュータ囲碁の大会である「電聖戦」を開催するなど、囲碁界の発展に尽力する電気通信大学助教の伊藤毅志氏も、コンピュータ囲碁の現状について「プロ棋士と19路盤で対局できる力はまだない」と分析する。

しかし、それは逆にいえば「勝負のフィールドが狭くなれば、コンピュータが有利になる」ということでもある。事実、日本棋院副理事長の山城氏は「9路盤ならプロ棋士とほとんど互角ではないか」と述べている。

そこで、今回の企画では、「Zen」と互角になるよう対戦相手を調整したというわけだ。囲碁ファンとしては19路盤でのプロ棋士との対局がぜひ見たいところだが、現時点でのコンピュータ囲碁の実力を考えればやむを得ないルール設定だろう。

ちなみに伊藤氏によると、コンピュータ囲碁が急速に進歩したのは「モンテカルロ」と呼ばれる手法を取り入れるようになってからだという。かつてはアマチュア初段にも満たなかったコンピュータの実力だが、現時点での棋力はインターネット碁会所の欧米レートで5段程度。日本のレートに換算するとアマチュア6〜7段クラスとなり、これは「弱い県代表レベル」なのだという。まだまだプロには及ばないとはいえ、9路盤では決して油断のできない強さだ。

急速に力を増してきたコンピュータ囲碁ソフト「Zen」に、プロ棋士である2人はどう向き合うのか。

「電王戦」に出場する張豊猷八段は、「対局が決まってから仲間と研究を始めました。自宅で9路盤の棋譜並べをしたのは人生で初めて。研究すればするほど9路盤の奥深さに気付かされて、正直参ってます(笑)」と気合十分。「初めてコンピュータに負けた棋士にならないようがんばりたい。コンピュータでは見ることができない人間の一生懸命さをお見せできれば」と意気込みを述べた。

また、平田智也三段は「Zenは疲れもないですし、見損じも少ないと思う。そこに気をつけていかないと結果を残すのは難しい」と「Zen」の強さを認めつつも、最後には「勝ちます」と力強く宣言していた。

囲碁電王戦は2月11日の10時、16日の9時30分よりニコニコ生放送で生中継される。対局会場は日本棋院「幽玄の間」。ニコファーレでは武宮正樹九段(解説)、大澤奈留美四段(聞き手)が大盤解説を行う。

なお、本日の発表と同時に「ニコニコ動画」では、「将棋電王戦」と同様にPVも公開されている。

(山田井ユウキ)