1200ドル割れも視野に。今後の金融市場の展開が判断材料に
2013年11月21日、米国上院銀行委員会はFRB(連邦準備制度理事会)のイエレン副議長を次期議長に指名することを承認した。今後のイエレン体制下におけるFRBが金市場に与える影響について考えてみよう。

2013年11月14日の公聴会におけるFRBのイエレン副議長の発言内容は、バーナンキ議長の下での緩和路線の継続以上にハト派的な内容といえた。まず、量的緩和策の縮小について「特定の時期は決めていない」として、大まかなスケジュールを白紙に戻す意向を示した。バーナンキ発言がその後の世界的な金融波乱の原因になったことを配慮したのは言うまでもないが、FRBの持ち分が巨大化したことにより安易に動くことができない現状を表わしたものといえるだろう。

以前もこの連載で取り上げたが、5年を超える資産買い取りの結果、今やFRBは世界最大の米国債保有者でもある。その動向が米国債市場に与える影響は、以前にも増して大きなものとなっている。イエレン副議長はそうした点には言及せず、たとえば雇用市場は「非常に脆弱」で「性急に金融緩和をやめれば高くつく」という表現で、緩和策の継続方針を示した。

この公聴会での発言とその後に公開された2013年10月のFOMC(連邦公開市場委員会)議事録要旨から推察できるのは、量的緩和策の縮小方向は既定路線となっており、着手の際の混乱をどう抑えるかに重点が移っているということ。したがって政策転換の際には、反対側で異例の低金利環境のさらなる長期化が図られるのではないかと思う。

それ以外で金価格にも関連するのは、株式市場の動きだろう。イエレン副議長は公聴会において、「株価は力強く上昇したが、採用しているPER(株価収益率)に似た伝統的な価値評価指標で見るとまだバブルの状況ではない」と断言した。NYダウなど主要株価指標は過去最高値を連続して更新している。カネ余りの矛先が株式市場に向けられているのは間違いないだろう。バーナンキ議長と同様にイエレン体制下でも株価上昇の資産効果に目を向け、多少の行きすぎには目をつぶるということか。

当面、株式市場は活況が続き金の存在は脇に置かれることになるだろうが、その傾向が続けば続くほど低迷する金に注目すべきだと考えている。その先の波乱の中で、再び金市場に関心が向けられることになるのではないだろうか。おそらくFRBは株式市場の変調を放置できず緩和策を繰り出すだろう。2014年春までの金融市場の展開が、そのタイミングを計る判断材料となる。

亀井幸一郎(KOICHIRO KAMEI)
マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表

中央大学法学部卒業。山一證券、に勤務後、日本初のFP会社MMI、金の国際広報機関WGCを経て独立し、2002年より現職。市場分析、執筆講演など幅広く活躍中。



この記事は「WEBネットマネー2014年2月号」に掲載されたものです。