2014年は約700万人の「団塊の世代(1947〜1949年生まれ)」が全員、65歳以上となる。仕事から離れて余暇の時間が増える団塊世代の消費意欲は高く、各企業は彼らの取り込みに必死で知恵を絞る。団塊世代を中心とした「100兆円シニア市場」の最前線をリポートする。

 1964年創業の熱海ニューフジヤホテルでは、5年ほど前からフロア面積675平方メートルという県内最大級のダンスホールを設けている。土曜日を除く毎日、生バンドが演奏し多い日には数百人が軽やかに社交ダンスを踊る。宿泊客は無料で利用でき、“ダンサー”のほぼ全員がシニア世代だ。

「もともと小さなダンスホールを備えていたのですが、お客様の声に応えて宴会場を改装しました。宿泊される方の5%ほどがダンスホールを利用している状況です」

 こう語るのは同ホテルの齋藤勇支配人。同氏によれば60代以上の宿泊客獲得のために、周辺の同業者にもダンスホール設置の動きがあるという。

 昨年の人口推計では65歳以上(老年人口)が初めて総人口の25%を超えた。団塊世代が続々と老年人口に入っているからだ。この世代が60歳に差し掛かった07年には企業内の技術継承が「2007年問題」としてクローズアップされた一方、退職金をターゲットにしたビジネスが数多く生まれたが、仕事を続ける人も多く成功例はなかなかなかった。

 そんな中で団塊世代の本格的なセカンドライフがいよいよ始まると期待感が高まっている。第一生命経済研究所の熊野英生・首席エコノミストはこう語る。

「シニア市場(60代以上)は今でも日本の(帰属家賃・*を除く)個人消費230兆円のおよそ半分にあたる112兆円を占めます。そこにこれまで日本の消費文化を切り拓いてきた団塊世代が本格的に年金生活に入り、加わっていく。これから5年間は彼らの旺盛な消費意欲をどう掴むかがビジネスを成功させるカギとなります」

 日本の個人金融資産1600兆円のうち、団塊世代が200兆円近くを保有するという試算もある。各企業がその争奪戦を繰り広げているのだ。

【*】GDPでは家を自己所有している人が自らの持ち家に家賃を支払ったと考えて、その支出の推計値を消費支出に含んでいる。現在約45兆円規模。


※SAPIO2014年2月号