米国で電子通貨「ビットコイン」の人気が高まっている。銀行を通さない決済制度がその人気の背景にあるのだが、決済を認める電子取引のサイトが増えており、徐々にだが決済通貨としての地位を高めている。

マンハッタンのニューヨーク・タイムズ紙(以下、NYT)は毎年11 月になると「ディールブック・カンファレンス」なる会合を主催する。ウォール街や、メインストリートと呼ばれる実業界など、ビジネスの第一線で活躍する人材を招待して、NYTの記者が観客の前で公開インタビューする趣旨である。

11月12日に開催した今年の会合は、ヘッジファンド業界からレイ・ダリオ氏、ケン・グリフィン氏、企業買収ファンド業界からはデイビッド・ルービンスタイン氏といったウォール街の大物が登場し、会場は満員御礼状態だった。

会合を主催しているNYTの編集部門は、「ディールブック」と呼ばれるM&A(企業の合併・買収)を取り扱う経済の専門部隊である。米国の金融メディアは長らくウォールストリート・ジャーナル紙の独壇場だったが、スター記者を抱えるディールブックがウォール街での認知度を高めている。

今年は、電気自動車で知られるテスラモーターズを創業したイーロン・マスク氏などベンチャーの旗手たちも招待された。なかでも目立ったのは、一卵性双生児の事業家、キャメロンとタイラーのウィンクルボス兄弟である。

ウィンクルボス兄弟はフェイスブックを創業したマーク・ザッカーバーグ氏と同じ時期にハーバード大学に通っていた。フェイスブックの立ち上げを描いた映画「ソーシャル・ネットワーク」をご覧になった方はご存じかもしれない。「アイデアを盗まれた」とザッカーバーグ氏を訴えた長身の双子である。

ウィンクルボス兄弟が今回のディールブック・カンファレンスで披露した事業計画は、仮想通貨への投資だった。インターネット上の電子通貨「ビットコイン」に連動する上場投資信託を設定するという。

2008年に誕生したビットコインは、銀行を通さない決済制度が人気となっている。2013年10月時点で1日当たりの取引額で3000万ドルほど。ストックの経済規模で17億ドル規模ある。米ドルに換金できるのだが、夏まで100ドル前後だった価格は秋口から急に買いを集めており、900ドルを突破した。

ビットコインでの決済を認める電子取引のサイトが増えており、徐々にだが決済通貨としての地位を高めているのだ。ウィンクルボス兄弟のような投資家が登場して需給も逼迫しているわけなのだが、人気の根源的な理由は、FRB(連邦準備制度理事会)による量的緩和の長期化にある。

会議では出口戦略に踏み切れないFRBが話題となり、来年も引き続き株式相場の堅調ぶりを予想する声が相次いだ。もっか、株式市場では3D印刷、ウェブ、太陽光発電といったセクターで、「モメンタム・ストック」と呼ばれる材料株の商いが活発だ。

ビット・コインもモメンタム・ストックも、その人気は同根。爛ネ余り現象〞のあだ花なのである。

松浦 肇(Hajime Matsuura)
産経新聞ニューヨーク駐在編集委員

日本経済新聞記者、コンサルタントなどを経て現職。ペンシルベニア大ウォートン校、コロンビア大法科大学院、同ジャーナリズム・スクールにて修士号を取得。




この記事は「WEBネットマネー2014年2月号」に掲載されたものです。