NHK新会長に就任した籾井勝人氏(70)の従軍慰安婦発言が、国内外に波紋を広げている。公平・中立が求められる公共放送。そのトップの偏った“持論”に対して安倍首相が衆院本会議でコメントを迫られるなど、事態は一向に収まる気配がない。

 籾井氏とはいったいどんな人物なのか――。

 福岡県出身で地元の九州大学を卒業後、大手商社の三井物産に入社。同社内でも本流と呼ばれる鉄鋼畑を歩み、1997年には取締役鉄鋼原料本部長に就任した。

「大きな取引先だった新日鉄(現・新日鉄住金)にさらに深く食い込むため、落語を習っていた」(業界関係者)

 とのエピソードもあるほどで、相手の関心を引く話術は三井物産時代に磨かれていた。そうした努力も報われ、2000年に米国三井物産の社長にまで昇りつめるも、本社内の役職は副社長まで。

 出世コースに乗りながらも社長になれなかったのは、「バンカラな社長よりも調整型の社長のほうが相応しかった」(前出・関係者)から。結局、口が災いの元になったのかもしれない。

 その後、2005年に三井物産から日本ユニシス社長に転じて、この度、NHK会長に就任した。

 実は、三井物産出身のNHK会長は籾井氏が初めてではない。1988年にNHK初の経済界出身会長になった池田芳蔵氏は三井物産の元社長。日本とイランの石油化学プロジェクトを推進するなど、凄腕の商社マンだった。

 だが、そんな池田氏もNHKで失態を演じ、わずか9か月で会長を退任してしまった。経済誌『月刊BOSS』編集長の関慎夫氏が当時を振り返る。

「経営センスが期待されてNHK会長になったものの、国会答弁でいきなり英語を喋り出すなど支離滅裂な言動が目立ちました。じつは池田氏は加齢のせいか判断能力に欠けていたのです。物産の関係者はそのことに薄々気付きながらNHKに送り出したといいますから、信じられない話です」

 いずれにせよ、池田氏、籾井氏と2人もNHK会長職でミソをつける結果となった三井物産の元幹部。だが、前出の関氏は「ある意味では昔の物産マンの典型」と話す。

「今でこそ官僚的なイメージがある三井物産ですが、昔の物産マンは破天荒なイメージが強く、社員一人ひとりが自分で新しい仕事を開拓していく野武士精神のある会社でした。元副社長で米国デュポン社の取締役だった渡邊五郎さんも、『オレが侍大将だ』みたいな人ですからね(笑い)。

 組織の三菱に対して、人の三井――。自分の意思をはっきり述べて実行する社風はぜひとも次代に受け継ぐべきだと思いますが、民間企業とNHKでは立場が違うのは当然。行き過ぎた言動が物議を醸すことを、もう少しわきまえたほうがいいでしょうね」(関氏)

 個性豊かなキャラクターが仇となった今回の一件。NHK会長の職務や権限のあり方も含めて、改めて議論したほうがよさそうだ。