ソチ五輪で、羽生結弦と盒饗臺紊離瀬屮襯瓮瀬襪悗隆待も高いフィギュアスケート男子。その最大のライバルはやはり、世界選手権3連覇中の王者パトリック・チャン(カナダ)であることは間違いない。

 昨年12月のGPファイナル(福岡)で、羽生はそのチャンに勝利している。歴代世界最高得点をマークしたショートプログラム(SP)では、ジャンプでミスを繰り返したチャンに12点超の得点差をつけた。フリーでは、最初の4回転サルコウで転倒しながらも、その後しっかり立て直して193・41点を獲得し、合計293・25点で優勝。4回転+3回転が4回転+2回転になるなどの細かなミスをしていたチャンを、SP、フリーともに上回る勝利だった。

 だが、昨年11月のフランス杯でのチャンの演技のすごさは、ファイナルでの羽生の勝利以上に、強烈な印象を残すものだった。

 フランス杯でのチャンは、SPでは、4回転トーループを含むジャンプすべてを余裕を持って決め、98・52点の歴代最高得点(当時)を獲得。取りこぼしは、前半のチェンジフットキャメルスピンがレベル3に止まり、GOE(技の出来ばえ)が0・64点に止まったことだけ。ここをきっちりレベル4にしていれば、99点台が確実に出る演技だった。

 さらに、チャンはフリーで2度の4回転トーループを決めると、重厚ともいえる滑りで完璧な演技を見せ、196・75点を獲得した。しかも演技構成点では"演技表現"でジャッジ9人中4人が10点満点を出し、"音楽の解釈"でも4人が10点満点を出したほど。最も得点が出にくい"演技のつなぎ"でも、5人が9・50点を出して3人が9・25点。審判による点数のバラツキのなさは圧倒的で、ほぼパーフェクトな演技だった。

 得点でいえば、ファイナルでの羽生の合計は293・25点であり、これはチャンがフランス杯で出した295・27点に2・02点及ばないだけで、ソチ五輪でも十分勝負ができる可能性がある。だが、今シーズンのグランプリシリーズ各大会の得点の出方を見ていると、上位の選手は昨季より高い点が出ている傾向があり、今シーズンの得点だけでは推し量れない部分もある。

 ただ、技術基礎点を比較すれば、得点が1・1倍になる後半にジャンプを多く持ってきている羽生がチャンを上回っている。勝つためには、そのアドバンテージをどう活かせるかだが、少しでもミスをした方が負けるという熾烈な戦いになるのは間違いないだろう。

 もちろん盒兇癸寛鹽哨函璽襦璽廚SPとフリーですべて決めれば、演技構成点の高さでふたりの間に割って入るだけの力を持っている。また、他の出場選手を見ると、羽生やチャンのように、安定して演技構成点で高得点を出している選手はいないというのが実情だ。昨季の世界選手権で2位になったデニス・テン(カザフスタン)は、SP、フリーともに完璧な演技をしての結果だったが、得点は266点台ともう一歩であり、今季はそのときほどの調子のよさを発揮できていない。

 ほかに、1枠しかないロシア代表にエフゲニー・プルシェンコが選ばれたが、地元開催の優位性はあっても、かつて2006年トリノで金メダル、2010年バンクーバーで銀メダルを獲得したときのような勢いはないと思われる。

 そんな中で、メダル争いに加わってくるとすれば、複数種類の4回転ジャンプを持っている選手になってくるだろう。その可能性を持つひとりがサルコウとトーループの4回転を持ち、フリーに4回転を3回入れるプログラムを組んでいるハビエル・フェルナンデス(スペイン)だ。さらには、SPでもサルコウとトーループの2回の4回転を入れて、フリーでも4回転を3回入れるプログラムで臨むケビン・レイノルズ(カナダ)も、メダル争いにからむ可能性のある選手ということになる。

 町田樹(たつき)も含めた日本勢や、チャンの調整具合も気になるところだが、伏兵のフェルナンデスやレイノルズの存在も見逃せない。いずれにしても、互いにミスのないハイレベルな戦いになることが、メダルの価値をより高める。そんな熱い戦いが、ソチの舞台で繰りひろげられることに期待したい。

折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi