『テラスハウス』オープニング曲のT・スウィフトへの賛否両論
 フジテレビ系列で放送中のリアリティショー『テラスハウス』のテーマソング『We Are Never Ever Getting Back Together』で、日本での人気を不動のものにしたテイラー・スウィフト。昨年の「ヴィクトリアズ・シークレット」(下着ブランド)のファッションショーで、モデル顔負けのスタイル(膝の内側のラインが美しすぎる!!)を披露したその姿は、まさにアメリカンアイドルそのものでした。

◆”音楽好き”から批判されるわけ

 そんなティーンのカリスマとしての名声の代償なのでしょうか。本業の音楽では「なぜこれがグラミーの年間最優秀アルバムなんだ」と音楽好きから不評を買ったり、2009年のMTVビデオ・ミュージック・アワードで賞を受賞した際には、突如カニエ・ウェストが壇上に上がり、「ビヨンセが受賞すべきだ」と発言してスピーチを妨害されたりと、何かと批判を受ける機会の多いアーティストでもあるのです。

 もちろん、テイラーは技術的に最高の水準にあるボーカリストではありませんし、十代のいわゆる“スイーツ女子”に向けた他愛のないラブソングを、広く薄く売ることで利益を上げているアーティストであることも間違いありません。

 しかし、それでも彼女の演奏には、およそ最高水準のJ-POPのアーティストでも成し得ない奥深さがあることも、これまた事実なのです。

◆奥田民生や斉藤和義より豊かなギター

 YouTubeにあるテイラーの公式チャンネルで、少数のファンを前にソファに腰掛けながらアコースティックギターの弾き語りライブを行う動画が公開されています。2012年に発表されたアルバム『Red』から三曲が取り上げられ、まず『テラスハウス』のテーマソングからスタートするのですが、そこでのアコースティックギターの扱いが、実に滋味豊かなものなのです。

※【動画】http://www.youtube.com/watch?v=2obMo7y-rvA

 オリジナルバージョンで特徴的なドラムのキックを再現すべく、テイラーはコードを弾くその瞬間に手首をギターのブリッジに押し当てて、低音弦をミュートします。そうすることでバスドラとベースの二役を模しながら、AメロとBメロを展開していきます。

 転じてサビに入ると、高音弦のきらびやかな響きを強調するために腕を大きく振り、しかし低音弦には強くヒットしないように注意を払いながら、コードストロークを行うのです。楽器一つで、一曲の中で三役を担わせているのですね。

 こういったアコースティックギターの特性を知り尽くした扱い方は、昨今のJ−POPでそうお目にかかれるものではありません。たとえば、奥田民生や斉藤和義のように商業的に成功し、そして音楽的にも高い評価を受けているアーティストでさえ、テイラーのようにアコースティックギターを操ることは出来ていないのが現状です。

◆くだらないラブソングだけれど……

 最近では、「ゲスの極み乙女。」や「凛として時雨」といったバンドなどが、その演奏能力の高さと複雑な音楽性によって話題を集めていますが、しかしやはりそれは表面的な難度であり、いわば偏差値に換算出来るような技術にとどまっているのですね。

 確かにテイラー・スウィフトは、アメリカ音楽の衰退の象徴であり、くだらなく取るに足らない、ポップスの醜悪な部分を集約したような存在かもしれません。しかし、楽曲と聴き手をもてなす技術において、彼女と肩を並べられるだけの存在が今の日本にいないということも忘れてはならないことだと思います。

<TEXT/石黒隆之 PHOTO/Anton Oparin>