コーヒー農園(ハワイ島で撮影)

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 前回は、人道主義者の善意がアフリカの紛争現場でどのような事態を招いているかを告発したリンダ・ポルマンの『クライシス・キャラバン』を紹介した。

参考記事:”悲惨な現場”を求めるNGOの活動がアフリカで招いた不都合な真実

 今回はそこまで深刻な話ではないものの、やはり「善意の裏側」を取材したコナー・ウッドマンの『フェアトレードのおかしな真実』(英治出版)を取り上げてみたい。

フェアトレードの主張は素晴らしいが…

 フェアトレードは、「市場経済は貧しい国や貧しいひとたちを搾取している」として、「公正な取引Fair trade」を企業に求めるアンチ・グローバリズムの運動のことだ。日本ではまだそれほど知られていないが、欧米(とくにイギリス)では「倫理的意識(ethical awareness)」の高まりで広く普及しているのだという。フェアトレード財団だけでなく、レインフォレスト・アライアンス(熱帯雨林保護)、フォレスト・スチュワードシップ・カウンシル(森林保護)、UTZサーティファイド(サスティナブルなコーヒー)など、同様の趣旨で運営されている認証機関はいくつもある。

 フェアトレードの主張は、「アフリカや中南米で、グローバル企業が農家のコーヒーやカカオ豆を不当に安く買い叩いている」というものだ。そのため農家は熱帯雨林を伐採し、それでも生活できず困窮に陥って破産してしまう。この問題を解決するもっとも有効な方法は、貧しい国の農家も労働に対する適正な利益が得られるよう、グローバル企業が「公正な価格」でコーヒーやカカオ豆を購入することだ。そうすれば農家の経営は安定し、無理な農地拡大も必要なくなり、自然もひとびともサスティナブル(持続可能)になるだろう。

 素晴らしい話だが、はたしてほんとうだろうか? そんな疑問を抱いたイギリスのジャーナリスト、コナー・ウッドマンは自分の目でフェアトレードの現場を確かめる旅に出る。

 “フェアトレード先進国”であるイギリスでは、スターバックスやネスレがいち早く倫理的認証を受け、「環境にやさしくない」企業の代名詞だったマクドナルドまでがレインフォレスト・アライアンスの認証マーク付きコーヒーを売っている。キャドバリー社の国民的なチョコレートも、2009年にフェアトレードの認証を受けることになった。

 その記者会見に出席したウッドマンは、なんともいえない違和感を持った。そこには「FAB(Fairtrade Association Birmingham)」と白抜きされた黒のTシャツを着た活動家たちが集まっていて、キャドバリー社の社長の発表を聞いて、「目には涙を浮かべ、誇らしげに胸を張り……『すばらしい!』とだれかがさけんだ」のだ。

 活動家の一人は、次のように声高に証言した。

「のんびりコーヒーを飲んだりチョコレートを食べたりしているだけで世界を変えられるなんてだれも思っていなかったけど、どうやらできるみたいだな」

 これって、カルト宗教の集会みたいじゃないか。

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