今すぐ頭金ゼロで買うほうが、計算上はトク!

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以前は、公的金融機関である住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)では物件価格の8割までしかローンが借りられなかったので、2割の頭金は必須だった。最近は頭金ゼロでも組めるローンが一般的になり、あまり疑問を持たずに100%ローンでマイホームを買ってしまう人も多い。

しかし、ファイナンシャル ・プランナーの模範的なアドバイスとしては、「頭金ゼロでマイホームを買うのはやめましょう」ということになる。例えば、3000万円のマンションを購入する場合に、1000万円頭金があり、2000万円のローンを組むAさんと、全額3000万円のローンを組むBさんでは、Bさんのほうが返済リスクが高くなる。頭金で払った分には金利はかからないが、ローン部分には長期間にわたって金利が発生する。借入金額が大きいほど、返済リスクが高くなるのは当然だ。毎月の返済額が同じだと仮定すると、Bさんのほうが返済期間が長くなってしまう。

さらに、なぜ「頭金ゼロ」でマイホームを買わなければならない状態なのかを考えてみよう。頭金がないということは、貯蓄の習慣ができていないのに買うということである。このまま頭金ゼロで住宅購入してしまうと、ローンの返済額に加え、維持費がかかってくるから、ますます貯蓄ができなくなる。今後、子どもの教育費や老後資金がかかってくるときに対応できなくなる可能性が高い。まずは頭金分くらい貯蓄できるようになってから、マイホームを買おうとアドバイスするのが一般的だ。

とはいえ、計算上はできるだけ早く買ったほうが住宅にかかるお金をセーブできるという場合もある。表のような前提で住宅にかかる経費を計算すると、住宅ローンの総返済額は、頭金を貯めて10年後に買ったほうが少なくなるけれど、頭金を貯めている間にかかる家賃の分を考慮すると、早く買ったほうがトクなことがわかる。同じ60歳までにローン期間を終えるのなら、早く買ったほうが返済期間を長く取れるというメリットもある。家賃を払いながら、物件価格の1〜2割の300万〜600万円の頭金を貯めるには、5〜10年はかかる計算だから、金利上昇局面ならなおさら、貯蓄が貯まるのを待つより、頭金ゼロでも先に買ったほうがいいだろう。

基本的には、ある程度の貯蓄をしながら返済できる金額で組めるローンの額と、買いたい物件の金額の差の分は頭金が必要になる。頭金がゼロでも、返済できる金額で全額ローンが組めればいいのである。頭金がないときは、その分物件価格を抑えれば購入できる可能性もある。

頭金ゼロでも買っていい人は、現在払っている住宅関連費用(家賃、駐車場代など)の範囲内に、新たに組むローン返済額、固定資産税、維持費(マンションなら修繕積立金、管理費など)が収まって、なおかつ余るという人。マイホームを買ったほうが家計に余裕ができる人。親から確実な援助が受けられる人など。

逆に頭金ゼロで買ってはいけない人は、今でも家計が赤字の人、貯蓄ができない人、ローンを借りる癖がついている人など。家計の状況によっても随分差はあるが、年収400万〜500万円の場合、2000万〜3000万円弱までが頭金ゼロで買える物件価格の目安。ギリギリまで借りると返せなくなるので、要注意。さらに注意したいのは返済期間。できれば60歳、遅くとも65歳までには完済するプランにしたい。

いずれにせよ、マイホーム購入は大きな買い物。消費税増税後のほうが反動で増税分以上に物件価格が下落する可能性もある。消費税増税や金利上昇などに振り回されずに、わが家のライフプランにとって適した購入時期かどうかを考えて購入しよう。

(ファイナンシャル・プランナー 菱田雅生 構成=生島典子 図版作成=ライヴ・アート)