第34回:ソチ五輪

2014年、今年も横綱は強い――。
初場所(1月場所)でも初日から白星を重ねて、
通算28回目の優勝も目前だ。
そんな横綱が今、最も注目しているのは、
まもなく始まるソチ五輪。
日本選手たちの活躍を期待しているという。

 年が明けて、1月12日から大相撲初場所(1月場所)が始まりました。両国国技館には初日から連日、多くのお客さまに足を運んでいただいております。とりわけ、初日、祝日だった2日目、さらに中日や千秋楽は、早々に観戦チケットが売り切れたそうです。そうした話を聞くと、世の中の相撲に対する興味が少しずつ増しているような気がして、とてもうれしく思います。

 それだけ注目度が増したのも、今場所はやはり大関・稀勢の里の「綱取り」という大きな話題があったからでしょう。多くのメディアでも取り上げられ、「ぜひとも日本人横綱の誕生を」という、ファンの方々の熱い思いがひしひしと感じられました。

 それは、稀勢の里も痛いほど感じていたと思います。が、中日を終えた時点で早くも3敗目を喫し、9日目も黒星と連敗してしまいました。稀勢の里の「綱取り」を左右するのは、前半戦で取りこぼしがあるか、ないかがカギになると思っていたのですが、結局その"関門"を突破できませんでした。期待していただけに、非常に残念です。とはいえ、まだこれからチャンスはあります。稀勢の里には最後まで奮闘してもらいたいと思います。

 また、昨年ブレイクした遠藤の活躍も、相撲への関心を高めた話題のひとつでしょう。初土俵から所要3場所で新入幕を果たした実力の持ち主で、そのクールな顔立ちから女性にも大人気です。こうした若手力士が台頭してくれるのは、本当に喜ばしいことだと思います。

 ところで、この初場所が終わってまもなくすると、冬季ソチ五輪(開会式は2月7日)が開幕します。夏、冬問わず、五輪好きの私は、年末から年始にかけて、続々と代表選手が決まっていくニュースを聞きながら、今回はどんな劇的な"ドラマ"が見られるのだろうかと、胸躍らせていました。

 私にとって、最初の冬季五輪の記憶は、1998年の長野五輪です。その頃は、まだ小学生でしたが、モンゴル・ウランバートルの自宅で、食い入るようにテレビを見ていたのを覚えています。

 今でも心に焼き付いているのは、スキージャンプの団体戦。日本がドイツと競った死闘です。最後までハラハラ、ドキドキしながら見ていましたが、あれはまさに岡部孝信選手、斎藤浩哉選手、原田雅彦選手、船木和喜選手の4人が、チームワークで勝ち取った金メダルだと思います。原田選手が涙を流して喜んでいるシーンは、何度見たかわかりません。以来、「ジャンプ=日本」という図式が私の中で植え付けられました。

 開会式の入場行進も、忘れられないひとコマ。何より、当時の関取衆が紋付はかまを着用し、各国の国名が入ったプラカードを持って選手団を先導する姿には目を奪われました。そして、横綱・曙関の土俵入りですね。堂々としていて、とても格好よかったです。

 思い返してみれば、私が力士や大相撲の世界に憧れを抱いていたのは、この頃だったかもしれません。あれから時を経て今、2020年に五輪が開催される日本で、私は横綱を張っています。運命的なものを感じるとともに、6年後、「五輪で土俵入り」という大いなる夢が実現できればいいなぁ、と思いを馳せています。

 さて、肝心のソチ五輪ですが、各競技で躍動する女子選手たちの活躍には目を見張るものがありますね。それも、フィギュアスケートの浅田真央選手やジャンプの高梨沙羅選手など、金メダルを狙える選手がいるということは、頼もしい限りです。

 なかでも注目しているのは、前回の2010年バンクーバー五輪で銀メダルを獲得した浅田選手です。

 なにしろ、毎年行なわれる世界選手権と違って、五輪は4年に一度のことです。選手にとって、最高の状態のときに行なわれるわけではありませんし、たとえピークの状態であっても、持っている力がそこで必ず発揮できるとも限りません。そういう意味では、五輪に出場することだけでもすごいことであって、メダルを獲得したならば、それはある種、奇跡に近いものがあるのではないかと思っています。

 1968年のメキシコ五輪で、レスリングの選手として銀メダルを獲得した私の父も、五輪の難しさ、そこに合わせて力を持続させることの大切さについて、よく話をしていました。だからこそ、私は五輪のメダルというのは、とても貴重なものだと思っています。

 浅田選手は、それほどの偉業に再び挑むわけです。五輪の出場は、今回のソチ大会が最後だと言われていますし、彼女の演技はしっかりと見届けたいと思います。

 もちろん、17歳の高梨選手がどんな活躍を見せてくれるのかも楽しみです。彼女をはじめ、スピードスケート男子のウィリアムソン師円(シェーン)選手(18歳)など、若い選手たちのがんばりには期待するものがあります。

 一方で、日本選手団の主将を務める、41歳のベテラン葛西紀明選手も見逃せません。若い選手たちに負けずに、大いに奮闘してほしいと思います。

 私自身、少年時代はモンゴルのスケートリンクでスケートを楽しんでいたんですよ。だから、冬のスポーツも大好きです。今は力士になって体重も増えて、負傷の心配もあってできませんが、現役を引退したら、スキーにも挑戦してみたいと思っています。

 頭脳戦とも言えるカーリングや、体と体がぶつかり合うアイスホッケーもやってみたいですね。特にアイスホッケーは"男らしいスポーツ"という感じがして魅力的です。

 何はともあれ、まずはソチ五輪を楽しみにしたいと思います。そして、ソチ五輪がスポーツの楽しさを、多くの人たちに伝えてくれる大会になってくれることを期待しています。

武田葉月●文 text by Takeda Hazuki