ガガ様以上の風格、ケイティ・ペリーの“どう猛”なるポップス魂
 2010年に発売されたアルバム『Teenage Dream』の大ヒット以来、すっかりトップアーティストの仲間入りを果たしたケイティ・ペリー。

 レディ・ガガほどにアクも強くなく、かといってテイラー・スウィフトのように可憐なわけでもないということで、本国での人気に比べて日本ではいまいち馴染みのない彼女ですが、昨年発表された最新作『Prism』からのファーストシングル『Roar』には、ガガ様やテイラー嬢の曲にはないキラーチューンのしたたかな風格が漂っています。

 現在29歳のケイティですが、ここまでのキャリアは順風満帆というわけにはいきませんでした。2001年に本名のケイティ・ハドソンとして、アラニス・モリセットとジュエルの中間に位置するようなオルタナシンガーソングライター風のアルバムを制作するも、ほとんど話題を呼ばず、その3年後にはせっかく作ったアルバムも陽の目を見ることなくお蔵入り。その間、レコード会社を2社もクビになっているのです。

 その苦労があるからでしょうか。所詮ポップスなのだから、それがどんなに端整に作られた曲だったとしても流通しなければ何の意味もない。そんな堂に入ったどう猛さが彼女の最大の魅力なのではないでしょうか。

 ニューヨークパンクの女王パティ・スミスとの活動で知られる、ギタリストで音楽ライターのレニー・ケイは、『Roar』を聴くとボリュームを上げ、一緒に歌ってしまうと書いています。この曲にはそういう魔力があるのですね。

 曲の構造は至極単純。クイーンの『We Will Rock You』を思わせるリズムパターンにヒップホップ的なノリで歌詞を乗せるAメロ、Bメロに続いて、雄大なハーモニーとコードを引き立たせるべく、ゆったりとしたメロディでコーラスが歌われる。近年のヒット曲によく見られる構成です。

 しかし、ケイティが他と異なるのは、とにかく英語の発音がクリアなのです。曲を聴きながら一言一句書き起こせそうなほどに明瞭で、それは発音というよりも、唇で綴りを刻み付けるような歌い方なのです。恐らく、英語を公用語としない国でも曲が流れることを想定してのことでしょう。彼女はレコード会社が投じた巨資に対して責任があることを理解しているのと同時に、それが世界最大の公用語である英語に甘えないという姿勢になって、このシンプルなポップソングに心地よい緊張感をもたらしているのですね。

 本名でゴスペルソングを歌っていたときよりも遥かにゴスペル的なカタルシスが、『Roar』にはあるのです。

 今後彼女がどのようなキャリアをたどっていくのかは分かりません。シンディ・ローパーのようにタイムレスな傑作を残せるような能力があるとも思えません。しかし、『Roar』という楽曲が、マスプロダクトに抗うのではなく、むしろその渦中に飛び込んでいくことでこそ作品の個性が際立つのだと教えてくれているように思います。 <TEXT/石黒隆之 PHOTO/Featureflash>