昨季、日本女子プロゴルフの賞金女王を23歳の若さで初めて獲得した森田理香子選手。夏場に大きく調子を崩しながらも強靱な精神力で逆転した。そんな彼女が支えとした「師弟の絆」を訊いた。

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 開幕から賞金ランキング1位を走ってきたので自分自身に「タイトルを獲らなきゃ」という気負いがありました。調子が悪くなった8月以降は記者から「今年は賞金女王が獲れそうですね」と話を振られるだけでプレッシャーになり、精神的にもきつかった。一時期は周りが見えなくなるほど思い詰めていたんです。

 昨年3月の開幕戦で横峯さくらとのプレーオフを制して優勝し、その後6月までに3勝するも、夏から終盤にかけて思うような結果を残せず苦闘の日々が続いた。終盤は横峯にランキング1位の座を明け渡したが最終戦を前に再逆転し辛くも栄冠を勝ち取った。

 重圧を乗り越えられたのは師匠の岡本綾子さんや同門の仲間たちがいたからです。岡本さんは「今年で人生が終わるわけじゃないよ」と声をかけてくれました。その言葉が胸に響き、肩の力がスッと抜けました。仲間たちからは「別に賞金女王は獲らなくてもいいんだよ」と言われ、やはり楽になりました。

 言われればその通りで、今年ですべてが終わるわけじゃない。これからも長いゴルフ人生を歩むわけですから。そう思わせてくれたのが岡本さんたちでした。

 もう一つ、私を奮い立たせてくれたのが横峯さくらさんの存在です。女王争いをしたさくらさんが伊藤園レディスで優勝し、残り2試合を残して賞金ランキングで逆転されたことは大きな出来事でした。

 追い抜かれたことで、かえってやるべきことが明確になり「残り2試合で這い上がるだけだ」と覚悟を決められました。

 さくらさんは2009年の賞金女王獲得など実績があるので、周囲の期待も大きく相当なプレッシャーだったろうと思います。私は初めて賞金女王に挑む立場で、彼女ほどのプレッシャーはない。そう思えたことがプラスに働いたのかもしれません。

<そう語る森田の傍にはいつも師匠の岡本綾子がいた。岡本は日本女子ツアー通算44勝、米女子ツアー通算17勝、1987年には米ツアーの賞金女王を獲得した女子ゴルフ界の重鎮であり、近年は後進の育成に力を注いでいる。森田が岡本の門下生になったのは2009年秋。プレー技術のほか、精神面の指導が4年目にして花開いた>

 岡本さんは私がまだ経験したことのないゴルフの世界を練習以外の場面でも話してくれます。「こう頑張ればあなたにもチャンスがある」と言ってくれるので自分の目指す未来をイメージしやすいんです。賞金女王も「もっと上手くなりたい。少しでも岡本さんに近づきたい」と思いながらプレーしたからこそ、獲得できたのだと思います。

 試合中は孤独です。キャディさんがいるとは言え、最後は自分の力がすべて。いくら「いけるよ、大丈夫だよ」と言われても、自分が弱気になって「無理」と思えば良いプレーはできません。

 それでも試合中は岡本さんにかけられた言葉を思い出して助けられています。例えばミスショットをした後、林の中や深いラフからどうやってピンに寄せるかという時。いつも言われる「人にできることは自分でもできる」という言葉で勇気を呼び起こします。

 良いプレーが続いている時は「ふんどしを締め直せ」という言葉が頭に浮かびます。気を緩めるなという戒めですが、今年は何度も「ふんどし、ふんどし……」と心でつぶやきました(笑)。

そうした岡本さんの言葉の数々が自信につながっていると感じます。

※SAPIO2014年2月号