ここ数年、世界経済を牽引してきた中国経済だが、その勢いにも陰りが見られるようになってきた。さらなる成長シナリオを中国指導部はどう描こうとしているのか、中国経済に詳しいTS・チャイナ・リサーチの代表、田代尚機氏が解説する。

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 今後の中国を見通すうえで重要なことは、どのような構造改革を行なっていくのかしっかりと把握しておくことである。

 そのための重要な手がかりが11月に開かれた「三中全会(第18期中央委員会第3回全体会議)」で示されている。全面的に改革を深化するという大方針となったが、具体的な注目点は2つある。

 ひとつ目は規制緩和、自由化、市場化といった「改革開放」の加速である。中央政府は規制緩和を進め、できる限り地方政府に権限を移譲する。地方政府も自由化、市場化を推し進める。たとえば上海では「自由貿易試験区」という経済特区が新設され、これまで制限されてきた為替の資本取引が自由化されたり、人民元の自由化、国際化が試されようとしている。規制緩和で金融を強くするだけではない。

 その背景にあるのはドル一極集中によるリスクの低減である。ドルを大量に保有したり、貿易決済通貨として使うことに大きなリスクを感じている中国は為替取引を自由化することで、人民元をアジアの基軸通貨にしようと考えているのだ。そこに向けて金融を軸にした改革開放の動きが今後、大きく加速するだろう。

 そして、もうひとつの柱が「環境対策」の強化だ。中国ではPM2.5などによる深刻な大気汚染によって、健康被害が問題となっている。

 北京市、河北省や東北地方の冬は厳しい。寒冷地では氷点下20度を下回ることも珍しくなく、暖を取らなければ生きていけない。都市部ではガスと並び、スチームが各家庭に供給されて、燃料は主に石炭が使われる。

 石炭を燃やして発生する煙には大量のPM2.5が含まれ、これが放射冷却によって発生する霧と交じり合い、街中に立ち込めるのだ。石炭は発電所や製鉄所、セメント工場などでも使用され、そこに自動車の排気ガスなども加わり、毒性を増すことにつながっている。環境対策は急務だ。

 ここまで深刻化すると対症療法では解消できず、抜本的な対策が必要となる。風力や太陽光、天然ガスといったクリーンエネルギーへの切り替えが早急に求められる。これらの産業は政府が発展育成に力を入れる「戦略的新興産業」の中核であり、今後ますます政策支援によって強化されるのは必至だろう。

 改革開放にせよ、環境対策にせよ実現までにはある程度の時間を要する。ただ、こうした産業の発展は、中国に息の長い安定成長をもたらすに違いない。

※マネーポスト2014年新春号