年始のスポーツと言えば、駅伝。元日は実業団によるニューイヤー駅伝、そして2日、3日は箱根駅伝。野球のように配球を読みながら観戦する必要もなく、サッカーのように固唾をのんで見守る必要もない。家族と会話をしながら、お屠蘇(とそ)気分でリラックスして観戦できる。これほど正月向きのスポーツはないだろう。

 この盛り上がりを受けて「東京オリンピックで公開競技にしたらどうか」という声もあがっているようだ。よしんば競技に採用された場合、駅伝ランナーの走力の基準となる10000m走の成績がケニアとエチオピアの独壇場であることから鑑(かんが)みるに、この2カ国が優勝候補筆頭だろう。しかし、駅伝は団体競技。日本にも勝機はある。日本の場合、水泳も陸上もリレー種目は強い。駅伝が「EKIDEN」へと国際化されれば、新たな人気競技になる可能性は十分だ。

 それにしても、日本人はどうしてここまで走ること、そしてそれを見ることが好きになったのか? 今年は2月23日に開催される東京マラソンは、参加希望者が増えすぎて、倍率がどんどん上がっているし、皇居ランナーと散歩者とのトラブルもよく聞かれる。友人や仕事関係の知人を見回してもランニングを始めたという人は驚くほど多いし、「市民ランナー」川内優輝のように、実業団チームに所属しないで、あれよあれよという間にトップランナーとなり、ついには世界陸上にまで出場してしまうという傑出した選手まで現れている。

 とはいえ"ただ走るだけ"という気軽さがウケているわけでもなさそうだ。走りに目覚めた人は、シューズやウェアにも凝って、ギアにも資金をつぎ込む。那覇やホノルル、オークランドにまで遠征してマラソン大会に参加する人だって少なくない。これは、とても「気軽に」と呼べるレベルではない。

 皇居ランナーの年収は700万円以上とも言われているが、その多くは皇居周辺に勤めている大企業のビジネスマンだと考えると、妥当なデータだろう。アメリカでもマラソンは比較的裕福な人が楽しむスポーツになっており、企業経営者の中には、マラソンやトライアスロンに親しんでいる人も多い。どんな人でもトレーニングを積めば、個人差はあるものの確実にタイムが縮まるというシンプルな構造が、努力をいとわぬトップビジネスマンに受けているのかもしれない。

 タイムを縮めるためには日々のトレーニングが欠かせないが、そこで役立つのが「ランニングウォッチ」だ。これはランナーの能力を引き出すためのツールのひとつ。走行ペースを確認するだけでなく、ハートレートモニターと連動させて心拍数を管理し、体に強い負担をかけないように調整する目安となる。昨今のランニングウォッチは、専属コーチのようにトレーニングの指示を出してくれるモデルまで発売されている。

 代表的なところでは、世界最大のコンパスメーカーという出自を生かし、その計測能力を磨いた「スント」、トライアスロンウォッチの元祖であり防水性能に優れる「タイメックス アイアンマン」、さらに「ナイキ」や「アシックス」、「プーマ」などのスポーツメーカー系も人気だ。では、このジャンルのトップメーカーはどこなのか?

 実はセイコーこそが、陸上ウォッチの名門。セイコーは1964年に開催された東京オリンピックで、スイスメーカーの牙城を崩して公式計時を担当して以来、マラソンの国際大会や世界陸上など、大規模な陸上大会の公式計時を担当している。さまざまな計時システムを考案し、さらに1/1000秒を感知してフライングか否かを判定するスタートシステムも開発。現在はIAAF(国際陸上競技連盟)のオフィシャルタイマーを務めている陸上界の影の功労者だ。ゆえに彼らが作るランニングウォッチに妥協はない。

 一般的にスポーツウォッチは、ライフスタイルアイテムのひとつとして、街用やファッション的要素を加えているモノが大半だ。しかし、セイコーのランニングウォッチは、あくまでも走りに真面目に取り組み、機能性と使いやすさにこだわる。

 通常であれば計時バリエーションや測定方法に力を入れるところを、セイコーでは計測精度にもこだわる。オシャレとかカッコいいとか、そんな要素は不要。ひたすらタイムアップを目指すのが、セイコーのランニングウォッチのスタイルなのだ。

 サンデーランナーとは一線を画する本格アスリート志向のランナーであれば、"陸上のセイコー"を身に着けるのは当然。日々の練習から、タイムを縮めようという気合いがみなぎってくるはずだ。

篠田哲生●文 text by Shinoda Tetsuo