【今回の質問】

最近、TVでよく「NISA」のCMを見かけます。株をやったことはないのですが、これを機に始めてみようかと思います。随分、お得な制度のようですが、何か注意すべきことはあるでしょうか。(会社員・28歳)

女子高生と山田真哉の「5分間会計学」 来年1月から始まるNISAの仕組みについては、すでに多くのメディアで報じられていますので、私はまず、なぜこの制度が導入されるのかという経緯についてお話ししたいと思います。少し難しい話にはなりますが、お得だからといってすぐに飛びつくのではなく、国の狙いについても理解していただいたうえで、制度を利用するかどうかを検討してほしいからです。

 話は、バブル崩壊直後に遡ります。バブル崩壊後、株価が下がって、不況になりました。その後、企業は株式の「持ち合い」を解消していきます。それまで日本の企業は取引先やグループ会社、銀行との間で株式を持ち合い、そのことで良好な関係を築き、ほかには買収されにくい安定した経営状態も保っていました。しかしバブル崩壊後は、「不況で株価が下がってきたので、株式を早く売りたい」という動きが出てきて、結局、株式の持ち合いはどんどん解消されていきました。

 そうして、どんどん売られた株式は、いったい誰が買ったのかというと……そう、外資系です。外資による買収が盛んに行なわれるようになりました。外資による買収は国内産業の活性化にもつながるのですが、メディアや鉄道会社といった企業にまで食指が動くと、国としては好ましくない事態も起こります。例えば、西武鉄道の親会社西武H Dの大株主である外資系ファンドが、球団売却や路線廃止を口にしたら、地域住民の猛反対が起きましたよね。

◎外資に対抗するには個人株主の育成が必要

 こうした外資の買収に対して、金融庁が打ち出した方針が、「長期で株式を保有してくれる個人株主を増やす」ということ。個人株主が長く持ってくれたら、企業は安定した経営ができますし、国が困る事態にもなりにくいのです。金融庁は『貯蓄から投資へ』をスローガンに、様々な施策を展開していきます。具体的には、上場している株式の売却益や配当金にかかる税率を20%から10%に下げる「軽減税率」という制度を導入しました(今年末まで)。しかし、それは一律に税率を下げるので、税収を減少させますし、金持ち優遇という批判もありました。

 そこで、確実に「長期で持ってくれる個人株主」を増やす制度として用意された犧能兵器瓩、NISAなのです。NISAは税率を20%から0%へと非課税にすることで「日本人を投資好きに改造して、国家の安定を図る制度」とも言えます。

「持ち合い解消に伴う外資の買収を防ぐ」という目的なのですから、NISA口座で買っていいのは、株式や株式投資信託だけに限ります。 国債や社債など「株式じゃないモノ」は、今のところ対象外です。

 口座を使えるのが、日本に住んでいる人(20歳以上)のみとなっていることも、そのことを裏づけています。

女子高生と山田真哉の「5分間会計学」

◎投資額が年100万円になった理由

 また、「少額投資非課税制度」と言うように、投資限度額は年間100万円です。あまり上限が高いと、金持ち優遇という批判をまた受けてしまうからです。

 非課税の期間は5年間。100万円以内なら、さらに5年間繰り越すこともできます。そして、年間100万円の投資を5年間続けて行なえるので、合計額だと500万円になります。一気に500万円ではなく、毎年100万円ずつ投資させることによって、長期の視野を持った個人株主を育成しようとしているのです。

 当然、短期間で売買を繰り返す個人投資家には使いづらい制度で、1年間のうちに100万円を投資したら、年内に全部売却して100万円の枠が空いたとしても、もうその年はNISAを使えません。年間100万円が1回きりというわけです。

 それから、各省庁のせめぎ合いを思わせるような仕組みもあります。NISAを使うには、銀行やゆうちょ銀行、JAバンク、証券会社などの金融機関にNISA専用口座を開くことが必要ですが、1人1口座のみ。そして、その口座を4年間はほかの金融機関に移せないという縛りがあります。

女子高生と山田真哉の「5分間会計学」

 これらのルールは、「非課税という優遇制度なので監視したい」という財務省や国税庁の意向が反映されているのですが、利用者にとってはあまりいいルールとは言えませんよね。今後、金融庁との綱引きにより、変わる可能性もあるでしょう。

 とはいえ、国の思惑がどうであれ、個人投資家にとって有利な制度であることは間違いありません。一時的とはいえ、国民の3大義務のひとつである「納税の義務」を取っ払ってくれる超優遇措置。これを利用しない手はありません。さらに詳しく学びたい方は、拙著『NISAにゅうもん〜5分でわかるもん 100万円を2倍にするもん〜』もご一読ください。

女子高生と山田真哉の「5分間会計学」

『問題です。2000円の弁当を3秒で「安い!」と思わせなさい』

山田真哉

一般財団法人芸能文化会計財団理事長・公認会計士・税理士。160万部突破の『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』ほか著書多数。最新刊『問題です。2000円の弁当を3秒で「安い!」と思わせなさい』(小学館刊、1365円)も5万部突破!