ソニーオープン最終日は大混戦になったが、34歳の米国人、ジミー・ウォーカーが混戦を抜け出し、通算2勝目を挙げた。

石川遼、松山英樹は2014年PGAツアーで活躍できる?
 優勝争いの終盤は見応えのある展開だった。最初に混戦を抜け出して首位に躍り出たのはハリス・イングリッシュ。高い集中力を維持しながらハイレベルなゴルフを見せていたイングリッシュだったが、セカンドショットをバンカーに入れてボギーを喫した15番から一気に流れが変わった。
 バーディチャンスを逃した16番はボギーに匹敵するパーとなった。17番、然り。首位から陥落し、首位を追撃する立場へ後退してしまった以上、攻めない限りは追いつけないし、優勝もできない。その状況が終盤の彼の焦りと苛立ちを倍増させ、あれほど見事で勝利の至近距離まで近づいていた彼のゴルフは、瞬く間に勝てるはずもないゴルフに変わってしまった。そんなイングリッシュの姿を眺めていたら、ゴルフがいかにメンタルなゲームであるか、流れを保つことがいかに大切であるかを痛感させられた。
 ちょうどそのころ、ウォーカーが15番、16番で連続バーディを奪い、イングリッシュと入れ替わって単独首位の座に躍り出た。ウォーカーが持ち前の飛距離と正確性を生かすダイナミックで確かなゴルフを披露する一方で、追撃をかけてきたジェリー・ケリーはどんな場所からでもグリーンに乗せ、ピンに寄せる熟練の技で攻めてくる。その対比が何とも面白かった。そんな対比を楽しめるということが、米ツアーの層が厚いということなのだろうと思えた。
 通算10アンダー、4位タイからスタートし、7バーディ、ノーボギーの見事なゴルフで通算2勝目を達成したウォーカー。初優勝を挙げたのは、つい2か月前。14年シーズンの開幕戦、フライズコム・オープンだった。今大会の勝利は彼にとって通算2勝目であり、今季2勝目。つまり彼は今、ノリノリだということになる。
 とはいえ、ウォーカーがこれまで歩んできた道程は長く険しい道だった。01年にプロ転向。下部ツアーで戦い始めて3年目だった04年に2勝を挙げ、05年に米ツアーにデビューしたが、シード落ちして下部ツアーへ逆戻り。さらに2年間、腕を磨き、08年から米ツアー復帰を果たした。が、それから6年も未勝利のまま長い長い年月を過ごし、ようやく今季になって初優勝と2勝目を続けざまに挙げた。
「辛抱強く耐えてきた」
 開口一番、そう語ったウォーカー。忍耐の日々は「言うは易し、行うは難し……」と感慨深げに振り返った姿が印象的だった。
 さて、同大会には開幕前に欠場した松山英樹を除くと、7名もの日本人選手が大挙して出場し、4名は予選落ち、1名はセカンドカットにひっかかって最終日には進めなかった。
そして、最終日。谷原秀人の優勝に日本のゴルフファンの期待が寄せられていたが、その谷原は8位タイ、今田竜二は20位タイ。
 この成績をどう見るかと問われたら、4日間をプレーできたのがわずか2名という割合は「あまりにも情けない」と答えるが、予選落ちした中で米ツアー選手は石川遼のみで、それ以外はスポンサー推薦でノープレッシャーの“お客さん”であったことを思えば、情けないと嘆く以前に、妥当な結果だと、ついつい頷いてしまう。
 逆に言えば、スポンサー推薦でノープレッシャーという状況にあった谷原が、優勝を狙える位置で最終日に挑み、トップ10に食い込んだことは驚きに値する大健闘だったと言える。このトップ10で再来週のファーマーズ・インシュアランス・オープンの出場資格を得たことも素晴らしい。
 だが、ホールアウト後、日本のテレビのインタビューに答えた際、谷原はファーマーズ出場を明言せず、どうしようかと迷っている様子だった。私には、それが、またまた驚きだった。
 米ツアーを目指す世界の若い選手だったら、せっかく得たトップ10による次週、次々週の出場資格を無駄にすることは、まずない。もっとも、35歳の谷原はもはや若いとは言わないのだろうし、谷原には谷原の考えや価値観や事情、都合があるはずだから、それをとやかく言う権利は誰にもない。
 けれど、かつて、それこそ若かったころ、フロリダまでやってきて自主的に練習を積み、一度は米ツアー選手として世界に挑み、全英オープンでも優勝を意識しながらプレーするほどの活躍をした谷原が、せっかく自力で掴み取った米ツアーの大会出場の権利を活用しないと決めたら、それは何とも残念だ。
 優勝したウォーカーは谷原と同世代の34歳。今でこそ米ツアー2勝のチャンピオンになったが、つい2か月前まで、彼が味わった勝利は下部ツアーでの勝利しかなく、プロ転向から13年間、陽の当たらない道を歩んできた。そんな日々は、まさに「言うは易し、行うは難し」だったのだろう。
 そういう選手が米ツアーとその周辺には無数に控えている。ソニーオープンに出たくても出られなかった選手も山ほどいた中で、その貴重な出場枠を分け与えられたのが推薦出場した日本人選手たちだ。
 もちろん、谷原のファーマーズ出場資格は「分け与えられた」ものではなく、彼が自力で「掴み取った」ものだが、そのトップ10に入りたくて入れなかった選手たちも何人もいる。20位だった今田竜二も、その一人。
 何ごとも「行うは難し」だ。ファーマーズ出場に対してどんな結論を出そうとも、それはもちろん谷原の判断次第で、それは彼の権利でもあるのだけれど、その重さ、その希少性は、彼にも彼を取り巻く周囲にも、心して噛み締めてほしい。
 そして、願わくば、せっかくのチャンスは、そのチャンスを得られなかった選手たちのためにも、十二分に活用する決断をしてほしいと願わずにはいられない。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
※このコラムはソニーオープン終了後に執筆されたものです。その後、谷原選手はファーマーズインシュランスオープンへの出場を発表しました。
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