東南アジアで一番好調なベトナム株。外資の規制緩和で8年ぶり急上昇も!?
東南アジア株の多くが2013年5月からの米国金融緩和縮小懸念で伸び悩む中、いちばん好調なのがベトナム株。景況感の改善や通貨の上昇などが好感されているようだ。外国人の株式保有制限が緩和され、久々の大相場が到来するとの見方もある。

外国人保有比率が49%から60%に拡大。資金流入が増える!

ベトナム株の主要インデックスであるVN指数は、2012年11月28日の375ポイントを底値として上昇トレンドに転換。2013年を通じて500ポイント前後の高値圏で推移した。

インドネシアやフィリピン、タイなど、ほかの東南アジア株が2013年5月以降、米国の金融緩和縮小懸念によって調整を強いられたのとは対照的である。

「金融緩和縮小懸念を嫌気して、多くの資金が東南アジアの株式市場から流出し、株安をもたらしました。しかし、すべての資金が欧米に戻ったわけではなく、一部は東南アジアの中でも通貨が安定し、経済が回復局面を迎え、株式市場が割安なベトナムにシフトしたのです」と語るのは、ベトナム株などの取引サービスを提供する日本アジア証券の今井正之さん。

ベトナムは、東南アジアの中でもいち早く企業や消費者の景況感が改善し、通貨ベトナムドンも安定した推移を見せている。懸念材料であった銀行の不良債権問題も債権買取会社の設立で峠を越した。つまり、外国人の投資意欲をそそる好材料が整ってきたのだ。

しかも「ベトナム株相場は2012年11月の底値から3割以上上昇しましたが、予想PER(株価収益率)は11倍前後と日米やほかの東南アジアの国々に比べて約3割も割安な水準です。さらに、ベトナム株には未だに配当利回りが10%を超えている銘柄もあり、今後、円安(ベトナムドン高)が進行すれば、円ベースの配当利回りはさらに高まるでしょう。こうした魅力も、ベトナム株式市場に資金が流れ込んでいる大きな理由です」(今井さん)

気になるのは2014年も好調が持続するかどうかだが、今井さんは「昨年とは比較にならない大相場になる可能性がある」と指摘する。外国人によるベトナム株の保有比率制限が8年ぶりに緩和される公算が大きいからだ。

ベトナム当局は、優良企業が外国資本の傘下に入ることなどを避けるため、外国人によるベトナム株の保有比率を制限してきた。現在、外国人は発行済み株式数の49%(銀行は30%)までしか保有できず、すでに保有比率いっぱいになっている優良銘柄は買いたくても買えないのが実情だ。

しかし、「すでにベトナムの証券管理当局は外国人保有比率を60%に拡大する改革案を首相に提出、政府の最終承認を待っている段階です。遅くとも2014年初めには緩和されるのではないでしょうか。緩和が実現すれば外国からの資金流入はますます拡大し、ベトナム株相場が急上昇する可能性は高いとみています」と今井さんは語る。

実際、外国人保有比率が20%から30%に引き上げられた2003年と、30%から49%になった2005年は、その後1年間でベトナム株式市場は指数全体が2倍以上に上昇した。同じような大相場が再びやって来ても不思議ではない。

個別銘柄では、国営ガス会社のペトロベトナムガスが注目株だという。「上場からわずか1年でベトナム最大の時価総額を誇る銘柄になりました。国内のガス供給の7割を担い、価格決定力を握っています。また、収益力も抜群で業績の上方修正、増配も期待できます」

ペトロベトナムガス(ガス)

石油ガスや天然ガスの輸送・貯蔵・販売を手がけるベトナム最大のガス会社。2012年5月、市場が低迷する時期にIPO(新規株式公開)を行なった。当初は見向きもされなかったが増益増配を繰り返し、2013年に株価は大きく上昇。次第に注目されるようになった。
同社の特徴は価格決定力。儲け過ぎ批判が出た2013年10月に急遽ガス料金の値下げを行なったが、同年11月に約2倍、更に同年12月に約10倍もの値上げを行ない「鬼の倍返し」「10倍返し」となった。

株価:6万4500ドン
日本円だと:約314円
売買単位:10株
時価総額:122兆2275億ドン
PER:12.46倍
配当利回り:4.65%

ファーライ火力発電(電力)

東南アジア最大級の石炭火力発電所を運営。総出力は1000MW以上で、ベトナム全体の発電量の約5%を占める。
ファーライ火力発電所は日本からの円借款で建設された経緯があり、足元のベトナムドン高(円安)は返済負担の軽減に結びついている。2012年度業績は前期比で売上高が10・5%増、税引き後利益が約66倍と好調。2013年も4割増収を見込む。電気料金収入などのキャッシュフローも潤沢で、配当などへの還元期待が大きい。PERは4倍前後と割安。

株価:2万5600ドン
日本円だと:約125円
売買単位:10株
時価総額:8兆1447億5800万ドン
PER:4.19倍
配当利回り:3.90%

フンブオン水産(HVG)

ベトナムを代表する水産加工会社。ベトナム南部のメコンデルタにある工場で養殖ナマズや養殖エビなどを加工して、欧米など海外に輸出している。欧米では健康志向の高まりとともに、白身魚のフライ等の原料であるナマズの需要が高まっており、同社のナマズ輸出量は年々拡大している。
また、近年は規模の拡大に注力して、競合他社やエビ養殖業、水産飼料会社を次々と買収して傘下に収めている。のどかな養殖池の景観とは対照的な、積極的な攻めの経営が特徴的といえる。

株価:2万6100ドン
日本円だと:約127円
売買単位:10株
時価総額:3兆1319億9900万ドン
PER:10.8倍
配当利回り:2.55%

※株価、指標は2013年12月9日現在。為替は1000ベトナムドン=約4.9円。

今井正之(MASAYUKI IMAI)
日本アジア証券 グローバルマーケティング部投資情報課

日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。1975 年生まれ。日本アジア証券入社後、2010 年より現職。同社の米国株の取り扱い開始を担い、現在はアジアの新興国を担当。「投資の現場主義」をモットーに海外企業を訪問。独自視点で分析する。現在『ストックボイス 東京マーケットワイド』に出演、アジア株を解説している。



この記事は「WEBネットマネー2014年2月号」に掲載されたものです。