2014年はどんな年になるのだろうか。

 予想はたいては当たらない(より正確にいえばコイン投げと同じで半分くらいは当たる)が、人間は未来を予測する動物でもあるのでいくつか気になることを書いておきたい。

経常赤字による国債の金利上昇が現実に?

 アベノミクスによる円安・株高で威勢のいい予想が並ぶ日本経済だが、こういうときこそ負の側面にも留意しておきたい。

 株価の上昇が円安によるものということはほぼ異論がないだろう。トヨタを筆頭に自動車メーカーは過去最高の利益を計上し、国際競争から脱落しつつあった電機メーカーも息を吹き返した。

 だが輸出産業が活況を呈する一方で、日本経済全体では10兆円を超える大幅な貿易赤字になっている。1ドル=120円前後の“円安バブル”だった2006〜07年でも貿易収支はずっと黒字で、「日本が貿易赤字になることはあり得ない」といわれていたことを思えば隔世の感がある。

 貿易赤字は原発事故による火力発電燃料の輸入増大によるものとされるが、これだけでは大きな赤字は説明できない。問題は、競争力の高い一部のメーカーを除いて、円安でも輸出が思ったほど伸びていないことにある。国内産業の空洞化によって円安メリットは薄れているのだ。

 円安になると、メーカーは手元にある製品を(円建てでは)より高い値段で売れるから利益を容易に確保できる。だがその後、原材料費や燃料費が高くなると製造コストが上がって利益は圧縮される。このように円安には利益を先取りする即効性があるが、その効果はそろそろ切れつつある。

 昨年の株価上昇は、円安効果と公共事業の増加、消費税増税前の駆け込み需要でほぼ説明できる。そう考えれば、4月以降に日本経済のほんとうの実力が試されるときがくるだろう。

 貿易赤字の拡大によって、昨年度は単月で経常収支が赤字になることもあった。「たとえ貿易赤字になることがあっても、分厚い所得収支の黒字があるのだから経常収支が赤字になるなど荒唐無稽だ」というのが専門家の合意だったことを思えば、日本経済に大きな転機が訪れたことは間違いない(経常収支≒貿易収支+所得収支)。

 もちろん国際収支における貿易「赤字」や経常「赤字」は損失ではない。日本が「失われた20年」で膨大な「黒字」を貯め込んでいたことからわかるように、国際収支と景気との関係は単純な因果論では説明できないが、それでも、産油国や資源国に貯蓄を流出させながらインフレにすることで「日本経済は復活する」というシナリオはかなりのあやうさを秘めている。

 経常収支が赤字化することのもうひとつの問題は、国債の国内消化に支障を来たす怖れがあることだ。これはマクロ経済の貯蓄投資バランスが概念上、経常収支と一致するためで、経常収支が黒字だと、国内の貯蓄だけで新規に発行される国債をすべて買うことができる(「日本経済は破綻しない」という論者はずっとこの理屈を振りかざしていたが、いまは口を閉ざしてしまった)。

 それに対して経常収支が赤字になると、その分だけ海外から資金が流入することになる。日本経済の問題は国内に投資機会がないことで、こうした資金は国債の購入に向かうことになるだろうが、そのときは相応の金利を求められるだろう。外国人投資家による日本国債の保有割合が高くなることで、現在のような日銀と国内金融機関との予定調和的な低金利の維持(国債価格の高値安定)が難しくなり、国債市場を動揺させるかもしれない。

 もともと「異次元緩和」の狙いはデフレによって高くなっていた実質金利を引き下げることだった。円安による物価の上昇で、現在は日銀の目論見どおり実質金利がマイナスになっているようだ。

 国債暴落といった極端なことが起こらなくても、実質金利がマイナスの状態が長期間続くことは考えにくく、このままだといずれ金利はゆるやかに上がってくる(あるいはふたたびデフレに戻る)。日本経済は90年代末から超低金利が常態化しており、私たちはそれを当然の前提にしているから、仮に金利が2〜3%上がったとしても社会に大きな影響をもたらすだろう(変動金利で住宅ローンをめいっぱい借りているひとは破綻してしまう)。

 だとしたら、今年は株価や為替よりも金利の動き(国債市場の動向)に注目すべきだ。年末までには、アベノミクスの成否が明らかになっているのではないだろうか。

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