■佐古賢一のカットインNBA

 新年を迎えたNBAは、現在40試合ほど消化したレギュラーシーズンの折り返し地点。スターティングメンバーもようやく固まり、各チームはプレイオフ進出に向けて邁進している。チーム一丸となって戦っているシーズン中盤、スタープレイヤーやベテランのプレイとともに、気になるのは台頭してきたルーキーだ。2014年からNBL(ナショナル・バスケットボール・リーグ)に参加する広島ドラゴンフライズの初代ヘッドコーチに就任した「ミスター・バスケットボール」こと佐古賢一氏に、今シーズン、目に留まった新戦力について話を聞いた。

 全試合を見ているわけではないのですが、今シーズンいろんなカードを見てきた中で、非常に気になっているルーキーがいます。それは、デトロイト・ピストンズでプレイしている2年目のセンター、20歳のアンドレ・ドラモンドという選手です。この選手はすごいですよ、将来怪物になるなと感じました。

 初めてドラモンドのプレイを見たのは昨年12月1日、ピストンズのホームで行なわれたフィラデルフィア・76ers戦でした。ドラモンドは19リバウンドを記録する大活躍を見せたのですが、衝撃を受けたのはそのスタッツだけではありません。なんと、センターというポジションでありながら、スティールを6つも決めて見せたのです。

 通常、自軍がゴールを決めた後、敵陣はエンドラインの外からスローインでボールを入れてゲームを再開します。その際、センターの選手がボールを奪おうと邪魔することはあるのですが、ボールが取れないと分かれば、すぐに自陣のゴール下に帰るのが定石です。しかし、ドラモンドの場合はボールをカットできなくても、あきらめることなく一生懸命に相手選手を追いかけるんです。そういう無茶なプレイばかりしていると、ファウルを取られる危険もあるのですが、ドラモンドは一心不乱に相手ボールを奪おうとします。ボールさばきがうまく、スピードも速いガードの選手からスティールを狙うのですから、かなり自信があるのでしょうね。事実、76ers戦では相手ガードからボールを何度も奪うことに成功しました。こんなビッグマン、今まで見たことがありません。

 ドラモンドの「走る」「跳ぶ」という身体能力は、NBAの中でも群を抜いていると思います。ボールを必死に奪おうとする「気質」も、バスケットボール選手として惹かれるものがあります。ただ、ドラモンドが魅力的な点は、もうひとつあります。それは彼、シュートがものすごくヘタなんです(笑)。フリースローが不得意で知られる同じセンターのドワイト・ハワード(ヒューストン・ロケッツ)でさえ、成功率は今シーズン約55%ですが、ドラモンドのフリースロー成功率は約36%。正直、かなり問題アリです(笑)。もし、ドラモンドがフリースローで7割ぐらいの成功率を残せれば、ドリームチーム入りは間違いと思いますよ。

 ただ、それでもピストンズは、スティール狙いの大胆プレイを注意するのではなく、若いドラモンドを自由にプレイさせているのです。フリースローはヘタでも、毎試合15リバウンドぐらい記録し、スティールも狙えるドラモンドの並外れた身体能力を買っているのでしょう。ドラモンドの潜在能力を信じて使い続けるピストンズの姿勢も、非常に好きですね。

 ルーキーの使い方はヘッドコーチによってそれぞれあると思うのですが、僕が思うに、将来のチームの中心選手に育てたいルーキーは、サブ的な扱いからスタートさせると絶対にうまくなりません。ルーキーが足らないものは「経験」なので、試合で多くの失敗をしないといけませんし、逆に多くの成功体験も得ないと成長しないと思うからです。厳しい環境の中で、ルーキー時代からチャレンジする気持ちを持ち続けてこそ、バスケットはうまくなっていくのです。

 そうして若い時期から多くの経験を積んだ選手は、必ずリーダーシップを発揮するようになります。チームをまとめるためにどうすればいいのか、コートの中で日々考える時間が、その選手の人間力を高めていくのです。逆に言うならば、それまでチームを引っ張ってなかった選手に対して、ベテランだからリーダーシップを発揮しろと言っても、これは難しい。そんな選手がいくら口酸っぱくチームメイトに指示しても、周囲は彼の言うことを聞かないでしょう。それほど、スポーツの世界はすごくシビアなんです。だからこそ、将来リーダーになれそうか否か、ルーキーの素質を見極めるのは、ヘッドコーチにとって非常に重要な仕事だと思います。

 コービー・ブライアント(ロサンゼルス・レイカーズ)がいい例です。高卒でNBA入りしたコービーは、入団当初、ずっとワガママなプレイばかりやっていて、周囲からは「使うな」という声も多かった。しかし、それでも当時のヘッドコーチはコービーを使い続けました。その結果、シャック(シャキール・オニール/1992年から2011まで活躍したNBAを代表する名センター)がチームを去った2004年以降、それまで得点を奪うことばかり執着していたコービーが、コート内でリーダーシップを発揮するようになったのです。バスケット感がガラッと変わった瞬間です。そのときを境に、コービーの言動には責任感が生まれ、チームの勝利のためにプレイするようになりました。

 最近では、ポール・ジョージ(インディアナ・ペイサーズ)もルーキーから起用され、リーダーに成長した好例ですね。プロ1年目の平均得点は7.8点でしたが、2年目に12.1点、3年目に17.4点、そして今シーズンは約24点をマークしており、プロ4年目にしてチームの精神的支柱になりました。たとえスタッツが悪くても、試合に起用され続けたことで責任感が芽生え、リーダーシップを発揮する選手となったのです。ルーキー時代からスタメンとしてコートに立ったことで、技術が向上したばかりでなく、心も育っていったのでしょう。

 ドラモンドのプレイはまだ荒削りですが、スタメンとして起用され続ければ、1年後、2年後には大きな変化を見せると思います。デニス・ロッドマン(1992年から1998年まで7年連続リバウンド王)のように、一芸に秀でたNBAを代表する選手になる可能性も十分にあります。なにより、あんなにもリバウンドを奪いつつスティールも狙えるビッグマンは、過去の歴史を振り返っても見たことがありません。フリースローはヘタですが(笑)、そんな面白いルーキーを、今後ぜひともチェックしてみてください。

佐古賢一●解説 analysis by Sako Kenichi