『僕は君たちに武器を配りたい』

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だれでも20歳になれば、成人として認められ、選挙権が与えられるし、酒を飲んでも煙草を吸っても、咎められることはない。しかし、だからといって、大人になったことの証明にはならない。子どもが産まれても親になれない人がいるように、成人式を迎えても大人になれない人がいる。本当の大人として生きることは難しいことなのだ。

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京大の人気の客員准教授による指南書

『僕は君たちに武器を配りたい』

正社員への道は依然として狭く、ブラック企業もはびこる。急激なグローバリゼーションのもと、ますます厳しい資本主義化が進む日本社会。20代が生き抜くために必要な武器とは何か。講談社文庫の『僕は君たちに武器を配りたい』(著・瀧本哲史、500円)は、京大で人気抜群の授業をもつ客員准教授が若きビジネスマンに贈る指南の書である。2012年のビジネス書大賞の受賞作をエッセンシャル版として文庫化したものだ。

著者は東大卒業後、マッキンゼーを経てエンジェル投資家としても活動している。過去の価値はもはや役に立たないと、熾烈な経済の実態を解説しながら、世界的な競争に勝ち残るために、スペシャリティをもった一人前の大人として身につけるベきスキルと思考法を紹介する。

ドイツ生まれの禅僧が説く大人の心得

『禅が教える「大人」になるための8つの修行』

道元の『正法眼蔵』を読んだ日本人はどれぐらいいるだろうか。祥伝社新書の『禅が教える「大人」になるための8つの修行』(著・ネルケ無方、840円)は、ドイツ・ベルリン生まれの禅僧が『正法眼蔵』の最終巻にある「八大人覚」をわかりやすく解説する。

「八大人覚」とは、大人として悟り知るべき8つの教えのことで、これを修得すれば、本物の大人になれるというものだ。具体的には「少欲」「知足」「楽寂静(ぎょうじゃくじょう)」「勤精進(ごんしょうじん)」「不忘念(ふもうねん)」「修禅定(しゅぜんじょう)」「修智慧(しゅうちえ)」「不戯論(ふけろん)」。著者によれば、ドイツ人は14歳からでも親の許可があれば酒が飲め、早くから自立をめざして家を出るが、日本では家がアイデンティティー確認の場となっており、大人になりにくい状況があると指摘する。

戦前から読み継がれるロングセラー

『君たちはどう生きるか』

岩波書店の岩波文庫になっている『君たちはどう生きるか』(著・吉野源三郎、903円)が世に出たのは1937年だったと知り、驚いた。戦後とばかり思っていたが、盧溝橋事件が勃発し、日中戦争に突入した年だ。そんな時代背景にあって、「だれもかれもが力いっぱいにのびのびと生きてゆける世の中」を願って出版され、80年近く読み継がれてきた。

こう生きるべきだという説教の書ではない。中学生の主人公「コペル君」が叔父さんとの対話を通して、生産と消費といった世の中の仕組みを学んだり、いじめの問題に心を悩ませたりしながら、大人になるための知識を身につけ、精神的にも成長していく姿が描かれている。子供たちに何をどう、教え伝えるか、中高生を持つ親たちにも参考になるのではないか。著者は岩波書店の総合雑誌『世界』の初代編集長を務めた。