ワールドクラスの余興!

あけましておめでとうございます。今年もまた新年早々からこのくだらないブログを読みにきていただき、ありがとうございます。誰が読みにこなくても更新をやめるつもりはありませんが、まぁ多少人がいたほうが張り合いがありますので、今年も時間の無駄遣いのために、ときどき見にきてやっていただければ幸いです。

どうせくだらない話なら、本来なら3が日くらいは休みたいところですが、僕は元日から衝撃を受け、プルプルと震えていました。日本にはサッカーの神がいる。その驚きと喜び。午前中に初詣に行ったときでも手を合わせなかった僕が、二拍・二礼・一拍して神の御姿を拝んでいました。

その名は中村俊輔。2013年のJリーグMVPを獲得した、日本サッカー界最高の選手のひとり。その左足から繰り出される正確無比なキック。それを神技と呼ぶのなら、蹴ってる本人は当然「神」。かねがねワールドクラスのオジサンであることは認識していましたが、よりわかりやすい形でその神技を見せつけられ、改めてそのワールドクラスぶりに感嘆させられました。

これは日本にいるすべてのサッカー選手…特に日本人で、若く、世界への野心があり、だが取り立てて身体能力に自信があるわけでもなく、技術で勝負しようなんて思っている選手にはぜひ見てほしい。俊さんの神技を見て、自分もその「神」にならなければワールドクラスではないんだということを、しっかりと噛み締めてほしい。一年の計は元旦にありといいます。僕は自分で計するのは大嫌いですが、他人が神妙に反省している姿は大好きです。どうぞ、しっかりと「計」してくださいね。

ということで、中村俊輔さんの神技と、それを実戦で活かすとこうなるという例について、元日のテレビ番組からチェックしていきましょう。


◆25メートル程度の距離で許される誤差はボール1個分と心得よ!

サッカーという競技を改めて考えていくと、やはりボールを止める・蹴るという2つの技術こそが真髄なのだろうと僕は思います。野球のピッチャーでも、豪速球であるとかキレ味鋭い変化球であるとか能力はさまざまある中で、最終的にはコントロールこそが重要であるように、サッカーもボールコントロールというのが根っこなのだろうと。

システムや身体能力はあくまでもそのサポート。結局、1人の選手に2人の選手を集中させようが、相手にスペースを与えないように動こうが、広いピッチと広いゴールマウスすべてを埋め尽くせるものでもありません。「ココをこうやって通せば何ぼでもいけるやん」という通り道を、正確に通るコントロールがあれば無問題。何人ついてきても全員かわせば無問題。

その域に達するとはどういうことか。それを感じさせてくれたのが、1日に放送された日本テレビ「TOKIO×嵐 ウルトラマンDASH」。各界の超人が、困った事態の解決に挑戦するというコンセプトの番組です。俊さんはコチラの番組に恒例のご出演をはたしました。

一昨年のお願いは「バスの中にボールを届けたい」というものでした。俊さんは走るバスの開いた窓めがけてボールを蹴り、見事にバスの中に放り込みました。昨年のお願いは「船の上から家にボールを届けたい」というものでした。俊さんは船上から川沿いに立つ一軒家の開いた窓にボールを蹴り込み、惜しくもボールを蹴り込むことができませんでした。

↓船の上からボールを蹴って窓に入れる技術は必要ないが、やろうと思えばやれないこともない!


誰よりも練習すること、それが自信になる!

って、コレを練習する必要も機会もないけどな!


そんな俊さんへの今年のお願い。それは「ウェディングケーキのてっぺんに置いてある人形を、蹴ったボールで叩き落としてほしい」というものでした。しかもただのケーキではなく、何故か無駄に上下動を繰り返すというもの。「ぜひやらせていただきたい。絶対当てます」と力強く応じるワールドクラス。昨年の失敗で「事務所のスタッフと反省会を開いた」と語る負けず嫌いが、本気になりました!

制限時間は10分。距離は25メートル。結婚式場の端に設置された人工芝の上からボールを蹴り、上下動するウレタン製のケーキのてっぺんにボールを当てる。25メートルの距離から空き缶程度のサイズのものにボールを当てるのは、野球のピッチャーでも困難な仕事。それを足でやろうというのです。もし、時間いっぱいスカりつづけたら、正月からトンデモない恥さらし。「サッカーwww」となるのは必定です。俊さん、やれるのか!?

↓そして俊さんはサッカー界を背負って余興に挑戦した!
●1球目
カーブをかけたボールはケーキを直撃。人形に対してボール1個下を叩いてしまう。解説というラクな立場でギャラをもらう松木安太郎氏は「2発目でいっちゃうんじゃない!」と無責任な手ごたえを覚える。

●2球目
精度を増したボールは、先ほどより高い位置からグンと落とす軌道。さきほどよりボール半個分ほど上に当たり、人形の台座に触れる。射的場なら「台におもちゃ固定してるだろ!」とオヤジに鉄砲向けるレベルの惜しい一発。

●3球目
簡単にクリアしそうなので、番組サイドは手前に目隠しとなる風船を設置。俊さんは「もっとカーブかけます」と軌道を変えれば十分狙えると言い、自信は揺るがない。ボールはやや右にずれ、ケーキを直撃。松木氏は「これいくね、いっちゃうね、イッチャッピーだね」と僕がディレクターならカットするコメントでギャラを泥棒。

●4球目
鋭く落とす軌道のボール、蹴った瞬間に俊さんは「ヨシッ!」と叫びます。しかし、目隠しの影響かケーキの上下動を読み違い、ボールは人形の頭をかすめるだけ。当たったのに飛ばないという理不尽さには、日本の接着剤の性能を恨むしかありません。

●5球目
時間的にはラストとなる1球。松木氏が何故か「よーしっ」と無駄な気合いをこめる中、俊さんが蹴ったボールは人形の横に設置された、人下用より小さいカメラに一直線。人形にもボールは当たるものの、カメラを叩き落とすにとどまる。

●6球目
時間切れとなるも、延長戦を要求する俊さん。しかし、集中力を欠いた状態での1球はトンデモないところへ。初のスカ。

●7球目
家族との食事の約束を変更。事務所のスタッフに「ここに来い」と家族へ電話をかけさせます。当てるまで絶対に帰らない…ワールドクラスを本気にさせた結果がコレだ!

<動画:「MVPもらったときくらい嬉しい」と語るワールドクラス新年会の余興>


7球映って、6球はケーキに当たってるからね!

スカをたくさんカットしていたとしても、これだけ当てられたら大したもんだ!


この精度でもって、さらに蹴り方や軌道・回転を変えながら、相手のイヤなところや味方の欲しがるところに蹴ってくる。それがワールドクラス。この技術をドリブルという形で活かせば相手にボールを奪われずに済み、FKという形で活かせばネットにボールが突き刺さる。だから怖い。だから強力。そんな俊さんでも、必ずしも世界で頂点を極めたわけではないという現実。世界とはまっこと遠いもの。サッカー関係者の一年の計を定めるにあたって、最高に刺激的な余興だったと思います。

昼間に行なわれた天皇杯の決勝。改めて俊さんの技術を見ると、「なるほどケーキに当たるわな」と思わされるものばかり。ボールを持てば2人が寄せてきても奪われずに保持する。少し自陣に下がって、相手をひきつけながら、空いたスペースに長いボールを蹴り込む。放っておけばズバズバとパスを通されるし、寄せれば寄せたで結局ズバズバとパスを通される。味方にすれば頼もしく、敵にすれば厄介極まりない選手です。

試合を決めた2点目のCK。マリノス選手はゴール目の前と、やや遠目にわかれて位置取り。広島のマークを引き寄せ、中央に数メートルほどの無人地帯を作ります。いざ蹴ろうという瞬間。ゴール前にいた中町が相手を一旦ゴール側に寄せてから反転し、無人地帯にダッシュします。デザイン通りの動きと、そこに正確に合わせてくる俊さんのCK。上下動するケーキに当てられるのですから、自分からゴールに向かって微調整する人間の頭なら当たって当然!

↓ココに蹴るという打ち合わせ通りに蹴れる精度!人間の頭に当てるなど造作もないこと!


曲がって、落ちて、当たる!

何でJリーグで優勝してないんだろ、去年!


↓CK程度の距離なら、ゴールを狙うことだって造作もないこと!


曲がって、落ちて、枠へ!

何でJリーグで優勝してないんだろ、去年!


一昔前のテレビなら、出川哲郎さんがかけたサングラスをボールで叩き落とすという企画を実践し、微妙な失敗で何度も出川さんの顔面にボールが当たるなどの企画が見られたはず。俊さんの精度なら「何回当てるんだよ!」「ていうか落ちないでしょ!」「メガネ食い込むわ!」という出川さんの怒りで、正月の茶の間も大爆笑になったことでしょう。俊さんが引退したあと、コレをやれる人間は誰なのか。サッカー界の誇りをかけて、余興の練習に励んでほしいものですね。


余興でできないことは本番でできない!本番でできるなら余興もできる!