2013年の日本ツアーで史上初のルーキー賞金王に輝いた松山英樹。今季は、昨季から本格参戦を果たした石川遼とともに、米ツアーを主戦場として戦う。

 期待されるのは、この"両雄"が世界の舞台でどこまで飛躍するかだ。そして、誰もが楽しみにしているのが、ふたりが米ツアーで勝利し、さらに海外メジャーを制することだろう。

 正直、そのチャンスは十分にあると見ている。驚異的な強さを誇っていたタイガー・ウッズは、今年で39歳になる。ライバルのフィル・ミケルソンも、44歳を迎える。それぞれ体力的には下り坂に入っており、もはや圧倒的な存在ではなくなってきている。その他、世界ランキング上位の選手を見渡しても、ずば抜けている選手はいない。

 もちろん、世界ランキングトップ10に名を連ねる選手たちの実力は高い。彼らが常にトップパフォーマンスでプレイしたら、なかなか勝つことは難しいだろう。しかし彼らの調子が悪いとき、反対に松山や石川の調子が良ければ、十分に対抗できるはずだ。すべてが噛み合えば、松山にしろ、石川にしろ、勝つ可能性はある。ふたりの実力はすでにそのレベルに達している。

 特に松山は、昨年の海外メジャー、全米オープンで10位タイ、全英オープンで6位タイという好成績を残した。そして、世界ランキング23位(12月28日現在)というポジションも決して不相応ではない。海外の選手に対抗できるだけの身体能力も持ち合わせていて、ツアー優勝、さらにはメジャー制覇も、現実的な状況にあると思う。

 昨年、メジャー大会のみならず、米ツアーを何戦か消化できたことも、今季の糧となるはずだ。なかでも、世界トップレベルのほとんどの選手と一緒にラウンドできたのは、大きかった。自分に足りないものが明確になっただろうし、何よりどんな相手と回っても、変な緊張感を味わうことがなくなるからだ。

 また、全英オープンでペナルティー(※)を受けたり、米ツアーで同伴競技者から注意(※)を受けたりしたが、そうしたことを経験できたのも大きい。「なぜ、松山だけが......」と思った人もいるだろうが、ともに松山が近い将来結果を出す選手だと認められたからこそ、受けた指摘。もしそうしたペナルティーを、これから訪れるであろう優勝争いをしている状況で受けていたら、それこそ痛恨の思いをしたに違いない。世界には"世界のルール"があるわけで、それを早い段階で知ることができたのは良かった。

※全英オープン3日目、15番を終えた時点で一度警告され、17番の第2打地点でスロープレイによる1罰打を受けた。米ツアーのフライズドットコムオープン初日、グリーン上のマークにボールを戻す際、その位置について、同組のデービス・ラブIII世に注意を受けた。

 課題となるのは、"旅慣れ"できるかどうか。米ツアーでは、日本とは比べ物にならないほどの距離を移動する。そのうえ、試合数が多く、長丁場だ。その中で、どうリフレッシュをして、コンディションを整えられるか。つまり、きちんと体調を整えて、常にベストな状態でトーナメントに参戦できるかどうか。それが、松山が結果を出すためのポイントとなる。

 松山はまた、人一倍闘争心がある。そのため、知らず知らずのうちに無理をして戦って、それが結果として体の故障につながっている。その点をクリアするためにも、欠かせないのは、コンディション作りだ。松山にとって、すべてはそこにかかっている。

 一方の石川も、今年は米ツアー初勝利を飾っても不思議ではない。松山よりもそのチャンスが早く巡ってくるのではないかとさえ思っている。確かに結果だけ見れば、松山のほうが好成績を残している。しかし石川は石川で、松山とは違う登り口から、大きな山(世界の舞台)を一歩一歩確実に登ってきているのだ。

 際立っているのは、アメリカの著名なゴルフ解説陣がこぞって称えていた、ショートゲーム。その技術が増して、格段にうまくなった。その分、勝つチャンスは広がったと考えていいだろう。

 では、なぜショートゲームがうまくなるといいのか。例えば、パーオン率を見てみると、ほとんどの選手が70%以下(昨季の石川は約66%)。つまり、3割はグリーンをこぼれることになる。そこで、ショートゲームがうまければ、パーを拾えるが、そうでなければ、ボギー、ダブルボギーを叩いてしまう。上位を争ううえで、その差は非常に大きい。

 ロングホールの第3打も同様だ。残り100ヤード以内のショートゲームで、きっちりピンに絡むショットを打てれば、好スコアにつながる。以前、世界ランキング1位になったこともあるルーク・ドナルドは、パットも含め、そうしたショートゲームのうまさで勝利を重ねてきた。ショートゲームというものは、それほど重要なもので、そのレベルが向上した石川は、明らかに優勝する可能性が高まっているのだ。

 また石川は、米ツアーを1年間、きっちり戦ってきた。あらゆるコース、芝、セッティングをすべて経験してきた。その"慣れ"は、精神的な面でプラス材料となる。加えて、今季のシード権獲得のために、下部ツアーとの入れ替え戦に参加し、ぎりぎりの戦いを味わった。一度は「地獄の門」に入りかけたが、自力で抜け出してシード権を手にした。そこで得た自信は計り知れない。

 昨年の一年間で、しっかりと足りないものを補ってきた石川。その結果、技術面だけでなく、精神面、体力面、マネジメントと、米ツアーを戦ううえでの全体の平均点が上がった。だからこそ、昨季の終盤は大崩れすることもなくなかったのだ。

 完璧主義者ゆえ、スイングの形などにこだわり過ぎる面はあるものの、米ツアーに関しては、松山よりも一日の長がある。あまり考え過ぎないで、ゴルフを楽しむことができれば、石川はすぐにでも結果が出せるはずだ。

 何はともあれ、松山、石川という好対照なふたりが2014年、世界の舞台でどんな戦いを見せてくれるのか、本当に楽しみだ。そして近い将来、米ツアーの最終日最終組で優勝争いを繰り広げるふたりの姿を見てみたい。

三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho