成功者は「開運のカギ=言葉」を持っている。経済評論家・森永卓郎&作家・本田 健が古今東西の賢人たちの言葉を厳選、解説。

●天下に先んじて憂い、天下に後れて楽しむ
――鍋島直正(肥前佐賀藩主)

【森永氏】佐賀藩の明君、鍋島直正が藩主になったのは、わずか17歳だった。そのとき佐賀藩は莫大な借金を抱えて財政破綻の状態にあった。直正は、粗衣粗食令を出し、自ら率先して取り組んだ。その成果で佐賀藩の財政は、数年後には立ち直った。その後、直正は反転攻勢に出て、先端産業と最強の西洋式軍隊を持つに至り、司馬遼太郎は、当時の佐賀藩を日本で1番モダンな藩と称した。口で言うだけでは駄目で、まず自らを律することが必要だ。

●勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし
――野村克也(元プロ野球監督)

【森永氏】肥前国平戸藩の第9代藩主で、心形刀流剣術の達人である松浦静山の剣術書『剣談』からの引用だが、「偶然勝ってしまうことはあるが、負けたときには、負けのなかに必ず敗因が潜んでいる」という意味だ。なぜ負けたのかという「失敗の研究」を積み重ねることなしに、いくらチャレンジを続けても、必ず次の負けがやってくる。失敗を根絶することなどできないが、失敗の確率を減らすことが、成功への大きな近道になる。

●世の中で成功を収めるには、馬鹿のように見せかけ、利口に行動することである
――モンテスキュー(哲学者)

【森永氏】討ち入り前の大石内蔵助ではないが、何かを成し遂げようと思ったら、自分の能力をひけらかしてはいけない。芸能界で仕事をしていると、お笑い芸人の人たちに特にそれを感じる。ある芸人さんは、「ボクなんて全然インテリじゃないですから」と言いながら、いつもクイズで決勝戦まで残る。もちろん楽屋や移動中は真剣に勉強している。これはサラリーマン社会にも通用する法則だ。目立てば必ず潰しにかかる人が出てくるからだ。

●人間は働きすぎてだめになるより、休みすぎてサビつくことの方がずっと多い
――カーネル・サンダース(ケンタッキーフライドチキン創業者)

【森永氏】世の中が難しいのは、「ほどほど」というのが実現できないことだ。ワークライフバランスをきちんと考えて仕事と家庭を両立できるのが理想だが、そうはうまくいかない。有能な人には仕事が集まってくるが、集まりすぎて仕事を減らそうとすると、今度は誰も声をかけてくれなくなってしまう。だから、とりあえず働けるだけ働いて、もう十分だというくらいにお金が貯まったら、その後ゆっくりする人生が1番よいのかもしれない。

●この世界で1番不幸な人とは、自分の仕事に満足していない人だ
――ジョン・レノン(ミュージシャン)

【本田氏】これを読んでドキッとされた方も多いのではないでしょうか? 毎日、自分の大好きなことをやっている人は、それだけで幸せです。生まれ変わってもやりたいぐらい好きなことを情熱的にやっていれば、成功しやすくもなるでしょう。今やりたいことに満足していない場合、どうするのかが人生の分かれ目になります。選択肢は3通りしかありません。目の前の仕事と真剣に向き合ってみるか、別の仕事を探すか、ダラダラ時間を過ごすかです。

●考えすぎると、人間は臆病になる
――映画『コクーン』より

【本田氏】頭のいい人は損をします。なぜなら、すぐに自分の未来をシミュレーションして考えるからです。成功している人は、いい意味でも悪い意味でも考えません。「これだ!」と思ったら、体が先に動くタイプは、計算して飛び込むのではありません。何かをするとき、うまくいくかどうかに焦点を当てると、ダメという結論が出るはずです。リスクはあるけど、「おもしろそうだから、やっちゃえ!」という情熱とパワーが人生を切り開きます。

●今のあなたの思考と行動が未来のあなたをつくります
――ジョセフ・マーフィー(牧師)

【本田氏】今、あなたは何を考えていますか? それが、あなたの未来の原型をつくっています。そして、そこから行動するかどうかが、人生をつくっていきます。しかし、このことを真剣に考える人は少数です。あなたの思考と行動を観察してみましょう。楽しい未来をつくりそうでしょうか? それとも、つまらない未来をつくりそうでしょうか? 自分の思考と行動を本当に望むものにすることができれば、最高の未来は向こうからやってきます。

●一生を終えてのちに残るのは、われわれが集めたものではなくて、われわれが与えたものである ――ジェラール・シャンドリー(不詳)

【本田氏】あなたは、いつまで生きる予定でいるでしょうか? あたりまえのことですが、どんな人も永遠に生きることはできません。あと、80年もすると、今生きている人たちは、そっくり入れ替わってしまいます。私たちの人生は、どれだけ与えたかで、まわりの人に記憶されます。有名にならなくても、あなたのことを覚えている人は、きっといます。人生を通じて何を与えたいのか、1度時間を取って考えてみるといいでしょう。

●もし今日が自分の人生最後の日だとしたら、今日やる予定のことを、私は本当にやりたいだろうか? ――スティーブ・ジョブズ(アップル創業者)

【本田氏】私の大好きなスティーブの言葉を最後に入れます。彼はアップル社を創業する頃から、直感とハートの声を聞いて人生を生きています。自分にとって、本当に大事なことに時間を使える人は、幸せです。あなたには、本当に大切なことがありますか? それが何かわかっていても、やっていないとしたら、いつからやりはじめるのでしょう? 幸せにも成功する人は、自分に正直に生きる人です。あなたのハートは何と言っているでしょう?

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経済評論家 森永卓郎
1957年、東京都生まれ。東京大学経済学部経済学科卒業後、日本専売公社入社。日本経済研究センター、経済企画庁総合計画局、三井情報開発総合研究所、三和総合研究所、UFJ総合研究所等への出向・入社を経て、2006年より獨協大学教授。近著に『庶民は知らないデフレの真実』。
作家 本田 健
経営コンサルティング会社、会計事務所、ベンチャーキャピタル会社など、複数の会社を経営する「お金の専門家」。著書『ユダヤ人大富豪の教え』はシリーズ200万部を超えるベストセラー。これまでの著書は累計で400万部を超える。最新刊に『読むだけで心がラクになる22の言葉』。

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(経済評論家 森永卓郎、作家 本田 健)