脳はお酒が好きだって知ってた?「1日350mlのビールを4本飲み続けると、依存症になる可能性が高い」

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おとなの楽しみの一つであるお酒。往年のヒット曲ではないが、ちょいと一杯のつもりが深酒になってしまったなんてことは、誰もが経験しているだろう。

ついつい飲み過ぎてしまうのはなぜか? 緊張が解けてリラックスした気分を味わえるからだと思ったが、意外なことに人間は酒好きの構造になっている。糖しか養分にしないはずの脳が、お酒を欲しているのだ。

■飲めば飲むほど疲れがたまる?

お酒に含まれるアルコールはエチル・アルコールと呼ばれ、体内に入ると胃や小腸で吸収される。その後は血液に取り込まれ肝臓に移される。分解して無害なものへと変えるためだ。

肝臓でアルコールが分解され始めると、まずはアセトアルデヒドと呼ばれる物質に変わる。この物質は毒性が強く、粘膜や皮膚を刺激したり、麻酔作用をもたらすなどの悪さをする。顔が赤くなり眠気を感じるうちはまだ良いのだが、多量に残ると頭痛や吐き気を引き起こす。

二日酔いはアセトアルデヒドが原因なのだ。

肝臓の仕事はアセトアルデヒドまでで、その後は血管を通って全身に運ばれ、さらに分解が進む。筋肉や他の臓器に運ばれたアセトアルデヒドは、お酢に含まれる酢酸(さくさん)に分解され、最終的には水と二酸化炭素になる。

これで完全にお酒が抜けた状態になるのだが、分解できるスピードは非常に遅く、男性は一時間に9g、女性は6.5g程度が一般的だ。これをアルコール5%・350mlのビールに当てはめると、お酒が完全に抜けきるまでのおよその時間は、

・男性 … 1.5時間

・女性 … 2.1時間

だ。特に決まりはないのだが、居酒屋さんの大ジョッキは700ml前後なので、グイッと空けると男性でも分解に3時間かかる計算だ。ビール好きなら3杯は飲むだろうか、2.1リットルものビールだと9時間も要するので、寝ているあいだもからだを全開で働かせることになる。

疲れがとれないどころか、自覚がなくても二日酔い状態になっているのだ。

二日酔いこそ、あるべき姿?

楽しみながら飲んでいるうちは良いのだが、残念ながらお酒が手放せないひともいる。いわゆるアルコール依存症だ。厚生労働省のwebによると「大切にしていた家族、仕事、趣味などよりも飲酒をはるかに優先させる状態」と定義され、健康以前に社会生活すら困難になってしまう。

一日平均60gを超えるアルコール摂取は「多量飲酒」と呼ばれ、依存症につながる可能性が非常に高い。5%・350mlのビールに含まれるアルコールが約13.8gなので、毎日4本飲み続けると危険ゾーンだ。

なぜお酒が止められなくなるのか? 職場や家庭で日々ストレスを受けている人が多量飲酒の傾向があるのはご存じの通りだが、もともと人間のからだはアルコールを欲しがる傾向があることが近年の研究でわかった。よりにもよって脳がお酒を欲しがっているのである。

お酒に含まれるアルコールは脳をマヒさせ、論理性や思考能力を低下させる。これがリラックスにつながるので、依存症は精神的な要因が多い。対して脳がアルコールを好むのは、分解途中で発生する酢酸が欲しいからだ。本来は糖しか必要としないはずの脳が、お酢の原料である酢酸も養分にしているのだ。

血液中に酢酸が入ると、筋肉では2〜3分後に濃度が高まり、それから10分程度で分解され濃度が低下する。対して脳での酢酸濃度は10〜15分後にピークに達し、その後は徐々に低下することから、脳が酢酸を分解していることがわかった。

なかでも情報処理をおこなっている白質(はくしつ)と灰白質(かいはくしつ)周辺は、脳全体の60%も濃度が高まることから、酢酸を好んで集めている、と考えられている。

まとめると、

・350mlの缶ビールを飲むと、完全に酔いがさめるのに1.5〜2.1時間かかる

・1日350mlのビールを4本飲み続けると、依存症になる可能性が高い

・脳は、二日酔い状態で発生する酢酸が好きらしい

短縮すれば「脳は二日酔いが好き」なのだから、人間は酔っ払いになるべく誕生したと言えるだろう。

■まとめ

酢酸を求めているなら、お酢を飲めば脳も少しは満足するだろう。

お酢ドリンクは種類も豊富なので、わかっちゃいるけどヤメられない人はぜひ試して頂きたい。

(関口 寿/ガリレオワークス)