「ヒットの発信源は辺境がキーワード」と品田英雄氏

写真拡大 (全2枚)

 テレビ離れが叫ばれる中、今年これほどまでテレビドラマがヒットすると誰が予想しただろうか。もちろん、NHKテレビ小説「あまちゃん」とTBS日曜劇場「半沢直樹」のことである。

 だが、2つの作品が人気を博した要素をひとつずつ並べていくと、今年1年を象徴するあらゆる「ヒットの法則」が、まるで“数珠つなぎ”のように関連性を持ってくるから不思議だ。

 当サイトでは昨年に引き続き、『日経エンタテインメント!』編集委員の品田英雄氏に2013年のトレンドを総ざらいしてもらった。

 * * *
「あまちゃん」と「半沢直樹」に共通しているのは、視聴率が確実に稼げる著名な俳優や女優を起用せずにヒットしたことです。

 無名に近かった能年玲奈と個性派俳優の堺雅人。結果的に2人は“はまり役”となったわけですが、スター性のある「人」に頼らず「企画力」で勝負する時代に入ったことを印象づけました。

 企画優先の配役は、2人のオーバーでわざとらしいセリフが受けたことでも花開きました。

 なにも「じぇじぇじぇ」「倍返し」だけではありません。林先生の「今でしょ」のポーズもそう。つまり、普通で自然な姿勢が好まれる傾向から、派手でインパクトのあるキャラクターに皆が惹かれている。長らく続いた安全志向に飽きている証拠です。

 そういう意味では、ヒットの発信源は「辺境」がキーワードといえます。

 ゆるキャラや地方アイドル、ゴールデンボンバーにしてもメインストリームから外れたところから出ています。面白くて新しいキャラであれば、たとえ非公認であっても、たとえばネット住民の目に触れ、拡散することで一気にメジャーにもなれるのです。

 さらに派手さに注目してみると、商品開発にも活かせる興味深いテーマが浮かび上がります。地味なモノトーンがオシャレだった時代から、カラフルで強い色使いが受けています。

 メンバーのイメージカラーを打ち出す「ももいろクローバーZ」やポップなファッションが人気の「きゃりーぱみゅぱみゅ」。それだけではありません。トヨタが限定生産した「ピンククラウン」や、登場人物に色の名前が付けられた『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(村上春樹著)が売れたのも、時代に即した色使いの妙といえるでしょう。

 アベノミクスで景気が上向くとともに、世の中のあらゆるトレンドにも明るさが出てきているのでしょうね。

 しかし、ヒット作りの法則は急激に変わったわけではありません。私は昨年の今ごろ、当サイトにて“非ユビキタス社会”の到来を予見して、「いまだけ・ここだけ・あなただけ」のパーソナルなサービスが鍵を握るとお話しました。その流れは今年も続いています。

 12月にグランドオープンした「イオンモール幕張新都心」は、その象徴ではないでしょうか。

 スマホやタブレットの普及によるユビキタス社会によって、人々はわざわざ店舗に足を運ばなくても欲しい物がネットで手に入る時代。しかも、アプリの「ショッピッ!」を使って商品のバーコードを読み取れば、一番安い店から商品が届く。つまり、リアル店舗がショールーミング化しているのです。

 でも、だからといって人々が外で買い物をしなくなったわけではありません。

 旅に出掛ければ地方の名産品を買いあさり、コンサート会場では音楽CDや関連グッズが飛ぶように売れる。その場に立ち会い買い物をしたいという気持ちは、時代に関係なく人間の本能なんです。そういう意味では、エンターテインメント性を兼ね備えたイオン幕張店の今後には注目です。

 2014年は「非日常性を追求し、思わず人の本能が反応する仕掛け」ができるかどうかが、ヒットの条件となりそうです。

【品田英雄/しなだ・ひでお】
1957年生まれ。学習院大学卒業後、ラジオ局(現・ラジオ日本)を経て日経BPに入社。1997年『日経エンタテインメント!』を創刊して編集長に就任。その後、同誌発行人を経て編集委員に。2012年10月より日経BPヒット総合研究所上席研究員を兼任する。

■撮影/山崎力夫