マルシェとはフランス語で「市場」。都内では各地でマルシェが開催されるようになった

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 年末・正月の食材買い出しで大混雑する東京・上野のアメヤ横丁(アメ横)。この時期、200万人ほどが訪れるというアメ横の賑わいは、市場で買い物をする楽しさを実感させてくれる。実はここ数年、東京都内でも市場が身近なものになりつつある。様々な個性を持った“マルシェ”が続々と誕生しているのだ。規模はさまざまながら、作り手の顔が見える台所として、マルシェが人気を集めている。

 マルシェとはフランス語で「市場」。パリには80ものマルシェがあり、週末になるとパリのマダムたちは、新鮮な旬の食材を求めてお気に入りのマルシェへと出かけるという。フランスでは青果や肉、魚などの生鮮食品をはじめ、チーズなども扱っており、簡単な食事ができるスペースがあるところも。このマルシェが日本でも定着しつつあるようだ。

 青森、千葉、三河(愛知県)……東京・有楽町の交通会館前には週末、全国各地から集まった生産者たちの威勢のよい声が響きわたる。野菜や果物、コーヒー豆、パン、はちみのお酒まで、こだわりの食料品がところ狭しと並ぶカラフルな売り場に、足を止める客も多い。30代の主婦の女性はこう語る。

「毎週来ています。スーパーでは手に入りにくい新鮮野菜が目当てです。ちょっと高いものもあるけれど、逆に、形が崩れたりしていて、安く手に入る場合もあるんですよ。近くに商店街がないこともあり、会話をしながら買い物ができる場所は新鮮です。珍しい野菜も多く、見ているだけでも楽しいですしね」

 都内ではほかに、六本木ヒルズの「ヒルズ・マルシェ」、国際連合大学前広場前で開催される「Farmer’s Market @UNU」、代々木公園けやき並木他の「Earth Day Market」をはじめ、週末を中心に、マルシェが各地で開催されている。

 マルシェと聞くと、パリからやってきた新しい風のようにも思えるが、ニーズを支える意識は決して新しいものではない。背景には、食の安心・安全意識の高まりによって拡大したここ数年の“産直(産地直送)ブーム”がある。

 例えば地方では、以前から「道の駅」の直売所が人気を博している。関東最大級の直売市場のある「はなぞの」(埼玉県)や、京野菜が安く手に入る「ガレリアかめおか」(京都府)など、全国的な人気スポットとなっている道の駅も少なくない。

 今後、日本にマルシェは根付いていくのだろうか。全国8都市でマルシェを開催している「マルシェ・ジャポン」の川久保篤さんは、生産者側にとってのマルシェの効用をこう語る。

「これまで生産者にとっては、スーパーやJA(農協)、飲食店など、作った生産物の出口が限られていました。これらには、形や品質を一定にしないと置いてもらえないといった制約もあります。マルシェが広がることで、生産者の販売チャネルが増えるとともに、生産者自身が“値付け”できるようにもなりました。また、マルシェは、生産者が消費者に直接、自分たちのこだわりを伝えられる場でもある。その際に消費者のニーズを直接聞くこともできますから、それを、生産に生かすこともできるのです」

 そして、日本型マルシェの今後の課題については、「屋外が多いので、天候に左右されるという点がありますね。また、現在日本では基本的に、常温で管理できるものに販売が限られています。肉や魚といったメインディッシュになるものが売れないんですね。今後の拡大のためには、その点を考えていかなければいけないかもしれなせん」と話す。

 生産者にとっても消費者にとっても、機会の増加であることは確かなマルシェ。2014年4月からは消費税が上がり、最近は野菜価格の高騰も懸念されるなか、マルシェは、より賢く楽しい買い物に一役買うかもしれない。