大みそかは必ず見るという人も、最近はまったく見ないという人も、その動向が気になってしまうのがNHKの紅白歌合戦。毎年"紅白離れ"が指摘されますが、いまだに視聴率は40%台を維持しています。東京オリンピック開催の前年である1963年には、81.4%という歴代最高視聴率をたたき出した紅白歌合戦も、今年で64回目。社会学者・太田省一氏の書籍『紅白歌合戦と日本人』は、日本人が紅白を観続けてしまう理由を多方面から分析し、解き明かしています。『アイドル進化論』などの著書がある太田氏は、緻密なデータで、時代時代の紅白の在り様を分析。日本人が希求する「安住の地」としての紅白を浮き彫りにします。紅白歌合戦がはじまったのは、1951年のこと。敗戦直後の「アメリカニズム」を体現するものとして始まり、高度経済成長期の失った故郷を希求する日本人の心の拠りどころとして役割を担った、と太田氏は指摘します。大きな時代のうねりや、時代ごとの人選や流行歌の歌詞に込められた想いを、著者独自の視点で紹介しているのが本書の特徴。紅白本番中に、思わずこぼれてしまった司会者たちの"本音"も取り上げています。司会者による2つの「気持ち悪い」発言があったことをご存知でしょうか。1つ目は、1977年。司会の元NHKアナウンサー・山川静夫氏が、ちあきなおみの歌『夜へ急ぐ人』を聴いたあとに口にした「何とも気持ちの悪い歌ですねえ」との発言です。もう一つは1983年、総合司会のタモリがひな壇に座る歌手陣を眺めて放った「すごいメンバーで、これぞ芸能界という感じで多少気持ちの悪い面もありますけれども」という一言です。著者は、山川静夫氏による発言を、紅白が維持してきた「ホームドラマ的親密さ」を脅かす、「異質なものに対する防御としての本音である」と指摘します。また、タモリによる発言を、紅白が醸し出そうとする「ホームドラマ的親密さ」の嘘くささを暴露したものと語ります。発言があったのは、紅白が「ホームドラマ的親密」から「ワイドショー化」へと変貌をしていく転換期。ポロリとこぼされた本音が、実は時代を切り取る象徴的発言だったことがわかります。今年の紅白では、北島三郎が"紅白引退"を表明しました。まさに、時代の転換期を目の当たりにするチャンスかもしれません。また、司会者、出演者のポロリ発言に注目して観ることもできるでしょう。やはり、紅白は見どころ満載です。 
『紅白歌合戦と日本人 (筑摩選書)』 著者:太田 省一 出版社:筑摩書房 >>元の記事を見る

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