注目大学はどう戦うか(1)

 90回記念大会で23校が出場する今回の箱根駅伝。戦前の前評判では、出雲駅伝と全日本大学駅伝を制して箱根で同校初の3冠を狙う駒澤大学と、層の厚さをどこもが警戒する東洋大学、そして前回の覇者で服部翔大(4年)というエースを持つ日本体育大学が3強を形成すると見られている。

 だが、他の大学も指をくわえて見ている訳にはいかない。3強の一角を崩すことを大きな目標にして、「隙あらば優勝も」と密かに狙うチームもある。その筆頭が早稲田大学だ。

「うちの層が薄いのは伝統のようなものですから」と苦笑する渡辺康幸監督だが、自信を持っているのは、学生ナンバーワンランナーの大迫傑(4年)とともに、5区の山本修平(3年)という武器を持っているからだ。

 総合5位に終わった前回の箱根駅伝、山本は本調子といえる状態ではなかったが、区間賞の服部に2分17秒遅れる1時間22分52秒で区間3位。日体大には2分35秒離される1時間22分の往路2位でゴールした。その疲労を引きずって、春のシーズンは調子が上がらなかったが、夏以降は徐々に復調し、11月の全日本では「状況を見て確実に走れた」と、4区区間3位の走りに手応えを感じている。上り調子で本番を迎えられそうな状況だ。

 2年前、1年生の時は山上りの5区を1時間19分52秒で走っている。その時よりも実力は確実にアップしており、渡辺監督は「本人は08年に駒野亮太が出した1時間18分12秒の早大最高記録を意識しているが、条件がよければ1時間17分30秒くらいで上がれる力があるのではないかと思っている」と語る。

「でも実際にはそんな簡単なものではないし、服部君でもいって1時間18分中盤だと思うんです。だから山本には1時間19分でいいと言っている。うまく引っかかれば、もう少し上にいける感じですね」(渡辺監督)

 6区にも「下りが強いから前回も走らせたかったが、1年生だったので最後の平坦を懸念して使わなかった」(渡辺監督)という三浦雅裕(2年)がおり、山の上り下りには自信を持っている。

「うちの戦い方は単純だと思います。往路は飛び道具のふたり(大迫と山本)を中心にして下級生でつなぎ、復路は上級生で固めるという方法だけ。でも、うまく流れに乗れば面白いレースができると思う」

 そう語る渡辺監督が問題にするのは1区だ。箱根での起用を想定して出雲と全日本で使った柳利幸(2年)が、両大会とも大きく出後れてチームを流れに乗せることができなかったからだ。

 駒大は出雲、全日本と、1区にエースの中村匠吾(3年)を起用して先手をとっている。箱根でも中村を起用してくると予測すれば、最初から速いペースの展開になる。

 2区起用が有力な高田康暉(2年)は、11月に行なわれた上尾シティハーフ大学生の部で、1位と2秒差の3位と順調だ。1区に1年生の武田凜太郎あたりを使うことができれば、3区に大迫を置いてジャンプアップさせ、4区を5000mで13分台のスピードを持つ平和真(1年)で流れに乗せ、5区の山本につなげることができる。だが、中村のスピードに対応できず秒差ではつなげないと判断すれば、エースの大迫を1区で、というパターンも考えられる。

 1区に1年生を使えれば、復路は前回も出場している柳や志方文典(4年)、田中鴻佑(4年)、田口大貴(3年)に加え、全日本で7区区間3位で、上尾シティハーフでも1時間02分59秒で17位になった井戸浩貴(1年)と、枚数はそろっている。渡辺監督の構想通りのオーダーが組めれば、3強の一角を崩すことも可能になる。

 一方、上位10名の5000m自己ベストの平均タイムが13分49秒68と、出場校中トップの明治大学も、そのスピードを活かせれば上位に食い込む可能性を持っているチームだ。

 前回は7位に沈んだが、その要因は9区と10区のブレーキだった。能力の高さは、8区までは東洋大と2位争いをしていたことでも証明されている。

 そのメンバーが8人残っているのが明大の強みでもある。西弘美監督は「エースを育てきれていないのがうちの弱み。だから金太郎飴のようにしぶとくいくしかないが、各選手とも積極的なレースをして、他校の選手を利用して自分の能力を引き出せれば面白い」と、各選手に殻を破るような走りを期待している。

 個々の選手をみれば、前回1区2位だった文元慧(3年)は、全日本でも1区で駒大の中村に51秒差の4位とまずまずの結果を出し、前回2区だったエース格の大六野秀畝(3年)も、全日本では最長区間の8区で、駒大のエース窪田忍(4年)に18秒差の区間4位と健闘、チーム順位を3位に上げている。

 さらに今年5000mで13分28秒79を出したスピードランナーの八木沢元樹(3年)が3区か4区で爆発すれば、いい流れを作れそうだ。

 ただし、山下りの6区には前回区間2位で走った廣瀬大貴(4年)がいるものの、山上りの5区は大江啓貴が卒業して不在になっている。復路にも1万m28分台の選手をずらりと並べられる状況だけに、5区さえうまくしのげば上位進出は十分あり得る。

 一方、1年生と2年生に力のある選手が揃い、うまくいけば嵐を起こせるかと期待されていた青山学院大学は、エースの久保田和真(2年)を使えなくなったのが大きな痛手だ。原晋監督は、出雲は6区、全日本は2区のエース区間に起用して、それぞれ区間4位、6位という結果を残している神野大地(2年)を2区に起用すると明言したが、5区の育成とともに、次へつなげるための戦いになりそうだ。

 次につなげるという意味では、山梨学院大学も同様だ。全日本では1区11位の滑り出しながら、2区で井上大仁(3年)が区間賞の走りで建て直した。その後、1年生の2人が区間二桁順位だったものの、3年と4年の上級生が堅実に走って順位を上げ、アンカーのエノック・オムワンバ(2年)がシード権獲得の5位に食い込むお膳立てした。

 前回の箱根ではオムワンバが2区で16位から4位まで順位を上げた。1区がトップとの差を極力小さくして中継すれば、2区でトップに立って3区の井上につなぎ、主導権を握ることも可能になる。全日本の1区では1年生で1万m28分46秒02の記録を持つ佐藤孝哉を起用したが、11位と出遅れている。1区に誰を使うかが大きな課題になる。

 来年は、12月22日の全国高校駅伝で、4校がトラック勝負になるデッドヒートを制して初優勝をした山梨学大付属高校から、好タイムを持つ選手が複数入学する予定。来年以降を狙うためにも、序盤で波乱を巻き起こしたい。

折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi