テレビやウォークマンなどのエレクトロニクス事業で知られるソニーが、アメリカの老舗映画会社コロムビア・ピクチャーズ・エンタテインメント(現ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント=SPE)を買収したのは、1989年のこと。今でこそ「スパイダーマン」シリーズ、「ダ・ヴィンチ・コード」などのヒットがありますが、当時は巨額な赤字を抱える業界最下位の映画スタジオでした。1996年に、ソニーはSPEの大幅な経営革新を断行。ソニー本社から、経営再建のための副社長として送り込まれたのが、のちにSPE社の社長に就任し、日本人唯一のハリウッド経営者となる野副正行氏です。野副氏の書籍『ゴジラで負けてスパイダーマンで勝つ: わがソニー・ピクチャーズ再生記』では、SPE社が業界トップに返り咲くまでの道のりが綴られています。一般企業は経営を行ううえで、合理性や将来性、効率を求めます。一方で、ハリウッドの経営の特徴は、野副氏の言葉を借りれば「ドンブリ勘定性、場当たり的、迂遠性」。コスト管理を1円単位で行う日本の製造業出身者からすれば、異文化ともいえる状況でした。一本の大ヒット作によるリターンがケタ違いなこともあり、制作費が100億円を超えようとも、ハリウッドには日本式経営と違った"ぬるさ"があったと言います。そこで、野副氏をはじめとする経営陣は、映画業界人の職人的気質を尊重し、日本企業に買収されたことへの不安を緩和しつつ、世界的なメーカーとして培ったソニー流のアプローチをハリウッドに持ち込みます。ひとつは「テンプレート」の導入。個々の企画を映画の「ジャンル」「予算規模」などでグループ分けすることにより、商品としての特性を可視化しました。もうひとつは、金融工学の世界では一般的となっている「ポートフォリオ」理論です。映画を1つの"資産"とみなし、規模やジャンルの異なる作品を「安全ではあるが伸びの少ない安定資産」「伸びしろはあるもののリスクも大きな危険資産」などに分類。年間の公開スケジュールの中で、興行収入が最大化する理想的なラインアップを計算しました。米国人スタッフのサポートにも支えられたSPEは、経営の再建に成功。作品がアメリカの年間興収ランキングでトップの地位を占める、主要映画スタジオに生まれ変わりました。タイトルにもある米国版「ゴジラ」の失敗の理由と、そこから得た"学び"については、本書を御確認ください。
『ゴジラで負けてスパイダーマンで勝つ: わがソニー・ピクチャーズ再生記』 著者:野副 正行 出版社:新潮社 >>元の記事を見る

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