「三中全会」後の改革再加速に期待。恩恵を受ける注目業種は消費関連
中国企業が多数上場する香港の株式相場が6月以降、力強く回復している。中国経済にも成長鈍化の危機を乗り切った様子が見られ、再び中国株が注目される可能性は高い。今後の相場見通しと注目セクターについて2人の専門家に聞いた。

PM2・5対策で天然ガス関連銘柄も注目される!

香港の主要インデックスであるハンセン指数は、6月の1万9813ポイントを底値として上昇トレンドに転換。9月には2万3502ポイントと3カ月ほどで約19%上昇し、その後も2万3000〜2万3500ポイントで推移している。シャドーバンキング(影の銀行)問題で株価が大きく下げた5月以降の最悪期は脱したとみてよさそうだ。

一方、中国が10月18日に発表した7〜9月のGDP成長率は7・8%と、前四半期(4〜6月)の7・5%に比べて加速。中国経済の成長鈍化も底入れしたかのように見える。

「7〜9月の成長ペースが加速したのは、中国政府が公共投資をやや拡大したからです。習近平政権は、中国の経済構造の抜本的改革を推し進めており、それが経済成長の減速に結びついていましたが、ちょっとアクセルを噴かせば改革を進めながらでも下支えできるという安心感を市場に与えることができました。習政権にとっては、むしろ心おきなく改革に取り組める環境が整ったといえるでしょう」とは、東洋証券の中尾正敏さん。

習政権が進める経済構造改革とは、「持続可能な経済成長の実現」と「成長の恩恵が広く社会に行き渡る社会づくり」のために、公共投資や輸出に依存してきた経済から、消費主導型の経済に移行させる取り組みだ。

構造改革の必要性は以前から認識されていたが、過去10年間はむしろ投資への依存度が拡大。これが「PM2・5」に象徴される環境汚染の深刻化や貧富格差の拡大といった社会問題を引き起こした側面もある。習政権は、国民感情を安定させ、政権を盤石にするために改革を積極的に推し進めるはずだ。

「11月に開かれた『三中全会』(中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議)では、都市化を進めるための戸籍制度改革、社会保険や教育・医療制度の改革、一人っ子政策の緩和を柱とする人口政策などが話し合われました。いずれも国民生活を向上させ、消費を増やすためには不可欠な取り組みです。これをきっかけに、中国の改革ペースは加速することになるでしょう」と中尾さんは語る。

香港在住のストラテジストである岡三証券香港支社の忍足眞理さんも同様の見方だ。「一人っ子政策の緩和が実現に向かえば、粉ミルクや紙おむつなどベビー関連銘柄が注目されるかもしれません。また、環境問題への対応が進めば、風力発電や太陽光発電、汚水処理など環境関連の銘柄が物色される可能性もあります」(忍足さん)

東洋証券の中尾さんも、環境関連が有望セクターのひとつとみている。「PM2・5を減らすため、エネルギーを石炭から天然ガスに転換させる動きが進むはず。天然ガス発電に取り組む北京京能清潔能源電力が注目されるかもしれません。もちろん、消費拡大の恩恵を直接受ける消費関連も有望です」(中尾さん)

また、「資本市場の整備がさらに進むはずですから、証券株にも注目したいですね」と中尾さんは語る。

北京京能清潔能源電力(電力)

北京市所属の国有企業傘下のクリーン発電事業者。天然ガスコージェネレーション(熱電供給)と風力発電が主力で、天然ガス発電では北京市で最大規模だ。
北京市はPM2・5対策として地元の発電・熱供給における天然ガス利用の拡大を図っており、成長のチャンスはきわめて大きい。
また、風力発電は北京市のほか、内モンゴル自治区、寧夏回族自治区でも展開しており、2013年6月中間期の部門売上高は前年同期比42・2%増と好調。会社全体では52・4%増収、36・6%増益となった。

株価:3.27香港ドル
日本円だと:約42円
売買単位:2000株
時価総額:201億1000万香港ドル
PER:17.36倍
配当利回り:1.44%

テンセント(IT)

インスタントメッセンジャー(IM)サービス「QQ」を主力とする大手ネット企業。「QQ」の月間アクティブユーザー数は2013年6月末時点で約8億1850万人と中国で最大規模だ。
2011年には「LINE」と同じようなスマートフォン向けのチャットアプリ「微信」を提供開始。また、今年9月には中国の検索エンジン大手「捜狗」の発行済み株式の36・5%を取得するなど、ビジネス領域をどんどん拡大している。2013年6月中間期は前年同期比38・4%増収、27・7%増益を達成。

株価:401.40香港ドル
日本円だと:約5086円
売買単位:100株
時価総額:7464億3600万香港ドル
PER:40.12倍
配当利回り:0.24%

海通証券(金融)

上海で1988年に創業した証券会社。2007年に上海A株上場、2012年に香港H株上場を果たす。
総資産および純資産規模は中国で2位。売り上げの約4割は個人向けを中心とするブローカー業務で、国内外合わせて220の営業拠点を展開している。顧客数は約400万人に上る。上場株式のほか、富裕層の投資家向けにプライベートエクイティーも取り扱っている。
2013年6月中間期は、売上高が前年同期比15%増の67億3300万元、純利益が同31・7%増の26億7100万元。

株価:11.00香港ドル
日本円だと:約140円
売買単位:400株
時価総額:1214億7800万香港ドル
PER:22.5倍
配当利回り:1.38%

※株価、指標は2013年11月8日現在。為替は1香港ドル=約13円。

中尾正敏(MASATOSHI NAKAO)
東洋証券 投資調査部長

1986年、東洋証券に入社。その後、同社香港、ロンドンの現地法人社長を経て、2008年3 月より現職。


忍足眞理(MARI OSHIDARI)
岡三香港 ストラテジスト

岡三証券香港支社で中国株およびASEAN(東南アジア諸国連合)株を担当。ウイークリーレポートは国内外の投資家に人気。



この記事は「WEBネットマネー2014年1月号」に掲載されたものです。