2013年4月から、妊婦の血液から染色体異常を判定する「新型出生前診断(NIPT)」が始まりました。その半年後となる11月末に発表された日本人類遺伝学会のNIPTの臨床研究によると、4月からの受診者数3514人のうち、NIPTで検査陽性だったのは67人。このうち確定検査を受けた62人中56人が、胎児にダウン症などの障害があることがわかりました。さらに56人のうち、53人が中絶を選択したことが明らかに。NIPTは日本の問題だけではありません。1979年に出生前診断が開始し、現在では診断することが当たり前になっているフランスでもNIPTが今話題になっています。なぜなら、2013年5月に「答申120号」の発表があったから。答申120号とは国の機関である「生命科学および健康に関する国家倫理諮問委員会(CCNE)」がNIPTについてまとめた報告書で、内容はNIPTにGOサインを出したというものです。NHKプロデューサーの坂井律子さんの著書『いのちを選ぶ社会 出生前診断のいま』の中で、CCNEのジャン=クロード・アメゼン委員長は、坂井さんのインタビューに対してNIPTの利点を「新しい技術によって羊水検査を受けずに済む人が増え、流産のリスクを回避できる」と述べています。一方で、助産師など800人からなる団体「出生前医療を救え」の代表である産婦人科医師のパトリック・ルブランはNIPTに対して反対の声明を出し、次のような指摘をします。「治療という名で障害の根絶を行っています。これはおかしい。(中略)NIPTに費やすお金があるなら、生まれてくる21トリソミー(ダウン症)の子の生活の質を向上させる研究に使うべき」。対立する意見を主張する二人ですが、坂井さんはインタビューを通じて両者に共通している部分があることに気がつきます。それは、「出生前スクリーニングは『データの世界』である」という点。ルブラン医師のように医療現場で働く人は「検査の流れ作業の一部になる」という問題意識があり、CCNEのアメゼン委員長も情報の奴隷になることを危惧しています。「やがて良い遺伝子を持つ同士の見合い結婚がさかんになり、子どもをつくるかつくらないか、どんな子どもをつくるか、遺伝子の解析を見て考えるようになるでしょう」とアメゼン委員長。出生前診断の先進国であるフランスの現状を知ることで、日本の未来が見えてくるのかもしれません。
『いのちを選ぶ社会 出生前診断のいま』 著者:坂井 律子 出版社:NHK出版 >>元の記事を見る

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