現在、冬の個人向け国債が、各金融機関から販売されている。アベノミクスがスタートしてから約1年間経つが、市場金利は上昇しておらず、その結果、個人向け国債の利率もほとんど上がっていない。例えば、発売中の『固定3年』の利率は0.08%で、1年前の12年12月の『固定3年』と比べて0.01%しか上昇していない。同様に、『固定5年』は1年前より0.02%高い0.15%、『変動10』に至っては0.43%と0.05%低下している(『変動10』は発行時の利率)。

 利率面だけを見ると、今回の個人向け国債もおススメはできないが、実は、金融機関が実施している販売キャンペーンの方は、まずまず充実している。これを上手に利用すれば、お得になる可能性があるのだ。各社の基本的なキャンペーンは、購入金額に応じて現金がキャッシュバックされるというもの。50万円以上100万円未満の購入で1000円をキャッシュバックしてくれるのが、野村證券、楽天証券、SBI証券、マネックス証券。この50万円は、今回のキャンペーンが受けられる最低購入金額となっている。なお、購入する個人向け国債の種類は問わない(以下同)。

 このキャッシュバック分の投資金額に対する割合は0.2%。もし、50万円で『固定3』を購入したとすると、運用期間は3年間なので、0.2%÷3年間=約0.067%となり、実質的な年利は、0.08%+0.067%=0.147%となる。こうして計算をすると、利率はかなり上がったように見えるが、0.2〜0.3%台がゴロゴロしている、ネット銀行や地方銀行のお得な定期預金と比べると、それほど魅力的な水準とはいえない。

 お得になるのは、高額の購入によるキャッシュバックである。購入金額が増えるとキャッシュバックの現金が増額され、SMBC日興証券、野村證券、みずほ証券では、1000万円分の購入で5万円をキャッシュバックしてくれる。購入金額に対する現金の割合は0.5%で、今回のキャンペーンでは最も率が高い。

【松岡賢治のマネーtab】個人向け国債のキャンペーンを賢く活用する裏ワザ

■キャッシュバックで現金をもらうことを目指し、個人向け国債を購入する

 そして、これを最大限利用して、よりお得ができる裏ワザがある。いったん個人向け国債を購入して、1年後に解約(売却)するという裏ワザだ。個人向け国債は、発行後1年間は、原則として中途換金はできない。しかし、発行後1年経過すれば、いつでも国の買取による中途換金が可能となる(その際は元本割れのリスクはなし)。ただし、中途換金時には、ペナルティーとして直前2回分の各利子が差し引かれる。これは、直近1年間分の利子がもらえないという意味だ。逆に、1年間分の利子を支払えば、発行後1年経てば、いつでも中途換金してよいことになる。

 この仕組みを裏ワザとして利用するのである。まず、1000万円で個人向け国債を購入する。そして、1年後に売却をすると、1年分の利息はペナルティーで返金するため利息は0円となるが、キャッシュバック分の現金5万円はもらえることになる。つまり、キャッシュバックで現金をもらうことを目的として、個人向け国債を購入するのである。

 1000万円なら、現金だけでも1年間の利率に換算すると0.5%。かなり魅力的な水準といえるだろう。地方銀行のお得なネット定期は、100万円といった限度額があるが、こちらは1000万円である。実質的に元本が保証されている金融商品で、短期で、まとまった資金の運用先としては、ベストに近いかもしれない。

 冬の個人向け国債の購入期間は12月30日まで。証券会社ごとに販売額の枠が設定されているため、売り切れという可能性もあるので注意が必要だ。余裕資金があり、良い運用先が見つからないという人は、一考してはどうだろうか。

(文/松岡賢治)

マネーライター、ファイナンシャルプランナー/シンクタンク、証券会社のリサーチ部門(債券)を経て、96年に独立。最新刊に『人生を楽しむマネー術』(共編著)。