“労災”が認められるのはどの範囲まで?

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 ブラック企業という言葉は、2013年ユーキャン新語・流行語大賞の候補語50語にも選ばれ、近年、ニュースなどでよく目にするようになった。パワハラ、長時間労働、残業代未払いなど、問題を抱える企業はそれだけ多いということだろう。

 この『パワハラに負けない!―労働安全衛生法指南』(笹山尚人/著、岩波書店/刊)では、数々の労働事件や若者の労働相談にのってきた著者の笹山氏が具体的なケースをもとにアドバイスし、働く人を守ってくれる労働安全衛生法について解説する。

 勤務中に怪我をしてしまった。パワハラなど仕事のストレスが原因のうつ病になってしまった。このような時に重要なのが労災保険だ。
 労働災害(労災)とは、労働者が業務中、怪我、病気、障害、死亡する災害のことをいう。労災に対しては、労災保険によって労災だと認定されれば、国から医療と現金の保険給付を受けることができる。これは労働者とその家族の生活を保障するため、使用者の過失や支払い能力を問題にせず、簡易に、迅速に、定額の補償を受けられることとした社会制度だ。

 労災保険を受給できれば、医療費の心配なく、治癒に至るまで通院を継続でき、休業することになった場合もその期間の休業補償も受給できる。
 労働災害を認めてもらおうと考えた被災者は、まず事業所を管轄する労働基準監督署(労基署)に書面にて請求しなければならない。労基署では、当該の怪我や病気が「業務上」発生したものであると認めれば支給決定を行うことになる。そこで問題となるのが、いかなる場合が「業務上」発生したものであると認定されるかだ。
 この「業務上」には、その要素として「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの要素に基づいて判断される。「業務遂行性」とは、「事業主の支配ないし管轄下にあるなかで」という意味。「事業起因性」とは、当該の病気やけがが業務遂行によって発生したといえる関係、つまり仕事と病気・怪我の因果関係が問題になるということだ。
 本書では病院に勤務する看護師が、長時間労働と肉体の酷使による腰痛で、労働災害申請ができないかという相談を弁護士にするという物語で、労働災害について紹介している。

 職場の環境や労働環境は働く人にとって、とても大事なことだ。それなのに労働に関する法的知識やノウハウを知らない人は多い。労働安全衛生法と聞くと、小難しいことも多そうだが、自分自身の仕事や健康を守る手段でもある。本書では小説風の体裁でわかりやすく労働衛生法について知ることができる。会社に属して働く以上、誰にでも関係のあることなのだから、知っておいて損はないはずだ。
(新刊JP編集部)