写真提供:マイナビニュース

写真拡大

子供が大人になるきっかけのひとつに「サンタクロース」がある。いい子にしていれば、サンタクロースがクリスマスにプレゼントを届けてくれる。彼を「信じるか、信じないか」で論じてはいけない。子供にとっても大人にとっても、その存在は大事な役割を担っている。それを気づかせる映画が『ポーラー・エクスプレス』だ。

俳優トム・ハンクスが大好きで、4人の子供たちに読み聞かせた絵本が原作。それを『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のロバート・ゼメキス監督がCGアニメに仕立てた。声優はトム・ハンクスが主人公の少年、車掌、サンタクロースなど5役を担当。日本語吹替えは車掌とサンタクロースを唐沢寿明が演じている。

同作品は冒険活劇の中に、子供へ、そして大人への真摯(しんし)なメッセージが込められている。さあ、ボールドウィン284S3型蒸気機関車が引っ張る「ポーラー・エクスプレス」で、サンタクロースに会いに行こう!

○クリスマスイブの23時55分、謎の列車が現れた!

サンタクロースは本当にいるの? クリスマスイブの夜、少年は半信半疑でベッドに入った。耳をすませば、サンタのソリの音が聞こえるはず。でも、世界中の子供にプレゼントを届けるには、ソリに載せきれないし、光より早く飛ばなくてはいけない。サンタは本当にいるのかな? パパとママが「この子は大人になった」なんて言っている。それってどういうこと?

でも、心の片隅で少年はかすかに期待していた。そんなとき、部屋が揺れ、爆音が轟く。窓の外からまばゆい光が差し込み、外に出た少年の前に、なんと蒸気機関車が引っ張る列車が停まっていた。車掌は言う。「君は疑っているようだ。ならば乗りなさい」

急行「北極号」(ポーラー・エクスプレス)が走り出した。車内には大勢の子供たち。列車は貧しい家で男の子を1人乗せる。少年はチケットをなくした女の子を助け、貧しい男の子を励ます。彼らの思いを乗せ、列車は雪の街を疾走する。ハリウッド映画の定番、屋根上のアクションシーンもある。連結器を飛び越え、トンネルに入るまでのスリリングなシーン。氷河の警告。凍った湖。いくつかのピンチを乗り越え、北極点をめざして走り続ける……。

子供たちにとってはハラハラドキドキのアクションアニメ。その中で、車掌をはじめ、列車に乗り合わせた大人たちは、サンタを疑い始めた少年にメッセージを投げかける。そして大人になってしまった人々へも問いかける。「君は子供に夢を与えているかい?」 直接的なセリフではなく、そのメッセージは"鈴の音"に託されている。

○蒸気機関車のモデル「ペレ マルケット1225型」は実在する

同作品はアニメであり、ファンタジーだ。だから蒸気機関車も架空のそれらしい絵だろうと思っていたら、じつに精密で迫力がある。この機関車のプロフィールについては、物語の序盤、乗客の1人が教えてくれる。「ボールドウィン284-S3バークシャー型、1931年製造、自重211トン、牽引力は40両」、まるで実在しているかのように詳しい。

そう、この機関車は実在の車両をモデルにしているのだ。日本の漫画『銀河鉄道999』のC62形のようなものだ。ただし、ポーラー・エクスプレスの機関車の出自は、セリフの説明とはちょっとだけ異なる。ボールドウィンといえば米国の歴史ある鉄道車両メーカーで、日本の鉄道黎明期に蒸気機関車を輸出した会社でもある。

ただし、車両のモデル名はボールドウィンではなく「ペレ マルケット1225型」。オハイオ州のライマ・ロコモティブ・ワークスが1941年に製造した機関車だ。ペレ マルケット鉄道は米国ミシガン州を発祥とし、五大湖周辺に路線網を広げ、カナダのオンタリオ州に達していた。ライマ社は1225型を製造した10年後にボールドウィンと合併する。それを劇中で詳しく説明しても仕方ないし、米国でも日本でもボールドウィンのほうが有名だから、映画ではボールドウィン製と紹介したようだ。なにしろ子供のセリフである。

この機関車がモデルに選ばれた理由は、大型で見栄えがあることと、型番が「1225」、つまりクリスマスナンバーだったから。「284」は車軸の配置が「2-8-4」で、先輪2、動輪8、従輪4という意味。この配置を「パークシャー型」という。日本ではD60形、D61形、D62形の例がある。デゴイチ(D51形)は先輪2、動輪8、従輪2だった。デゴイチよりひと回り大きいといえる。もっとも、アメリカの機関車だから、日本の機関車より格段に大きい。

ちなみに、劇中ではおもちゃの蒸気機関車も登場する。こちらはライオネル社の「ポーラー・エクスプレス列車セット」の復刻版だ。こんなおもちゃがあるほど、絵本の『ポーラー・エクスプレス』は有名なのだろう。この作品を家族で観て、「少年の体験と列車のおもちゃの関係」や、「小さなプレゼントボックスの中身」について語り合っても楽しいかもしれない。メリークリスマス!

○映画『ポーラー・エクスプレス』に登場する鉄道風景

(杉山淳一)