呼吸器疾病の専門家で中国工程院院士の鐘南山氏は18日に広東省広州市で行われたフォーラムで、「毎年少なくとも100万人が、室内の空気に含まれている汚染物質を吸引したことが原因で死亡している」と述べた。鐘氏は新型インフルエンザの死者数で「わが国の発表は信じられない」と述べ、当局による死者数ごまかしの“手口”を暴露したことがあり、歯に衣を着せない発言で、人々の信頼も厚い。

  広東省広州市で18日「子どもの健康な成長に愛情を、学校の環境汚染に関心を」と題するフォーラムが開催された。鐘氏は沈痛な表情で、「肺炎で死亡する5歳以下の児童の約半数は、室内の空気に含まれるる顆粒状汚染物質が原因だった」、「毎年少なくとも100万人が、室内の空気に含まれている汚染物質を吸引したことが原因で死亡している」と述べた。

  全国的に発生しているスモッグについては「空気1立方メートルに含まれるPM2.5が10マイクログラム増えるごとに、慢性閉塞性肺疾患(旧称:肺気腫)患者の入院率は3.1%上昇」、「PM10が10マイクログラム増えるごとに、慢性閉塞性肺疾患(旧称:肺気腫)患者の入院率は2.4%上昇」とのデータを明らかにした。

**********◆解説◆

  鐘南山氏は2003年のSARS(サーズ、新型肺炎)発生時にはいち早く同病気の危険性を警告し、政府に対して治療法を提案した。同治療法が採用されてから、SARSの重症患者の死亡率は大幅に低下したとされる。

  09年に新型インフルエンザが流行した際については、発病者などの推移について予測を発表した上で、「(疑わしい症状による死亡者が出た場合)死後にウイルスの検査を行わなわず、新型インフルエンザによる死亡者として数えない」などと、当局による死亡者数ごまかしの手口を暴露。さらに「ごまかしは必ずやきわめて深刻な事態を招くことになる」と強い怒りを示した。

  自らの専門分野について、権力者に対しても不正は絶対に許さないという姿勢は、多くの人々の共感を呼んだ。(編集担当:如月隼人)