宮里優作のツアー初優勝は多くの人の心を打った(撮影:福田文平)

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 日も傾きかけた東京よみうりカントリークラブの18番グリーン。劇的なチップインパーで悲願のツアー初優勝を決めた宮里優作は、ウィニングガッツポーズを作るとそのまま突っ伏してプロ11年分の涙を芝の上に落とした。
ゴルフ界の今年の一文字は?
 人気低迷が叫ばれて久しい国内男子ツアー。だが、2013年ツアー最終戦にして演出されたドラマは多くの人々の心を打ち、男子ゴルフの魅力を伝えて余りある結末となった。それは、若手スターの海外進出や試合数減など暗い話題の多い男子ツアーにおいて来季への光を灯す一勝でもあった。
 宮里優作は今年33歳。いわゆる“松坂世代”だ。松坂大輔(ニューヨークメッツ)、村田修一、杉内俊哉(共に読売ジャイアンツ)らが名前を連ねる1980年生まれの面々は最強世代として野球界に一時代を作った。
 だが、球界の松坂世代がベテランの域に達してユニフォームを脱ぐ選手も出る中、ゴルフ界ではまさに今がアブラが乗った時期ともいえる松坂世代付近の30代の存在感は決して高いとは言い難いのが現状だ。アダム・スコットがマスターズを制し、ジャスティン・ローズが全米オープンで初のメジャー制覇を成し遂げたことも、日本の同世代とのコントラストを色濃くさせていた。
 近年は石川、松山、池田勇太、藤本佳則ら若手の台頭に加え、昨年は藤田寛之が賞金王、ランク2位は谷口徹とアラフォーの2人が終盤の話題を集めた。しかし、一方で谷原秀人、矢野東、近藤共弘、宮里優作、岩田寛といった30代の活躍が乏しく、中核となり世界の猛者達と渡り合っていくべき世代の空洞化は男子ゴルフの課題をそのまま表していた。
 その現状に吠えたのが谷口だ。「もっと自覚を持ってやって欲しい。僕らの時は常に優勝争いをしないといけないという責任感があった。今はたまに優勝争いしてあとはダメ」。今季日本の30代の勝利は松村道央、小田孔明、小林正則、谷原秀人、そして宮里の5人のみ。44歳のベテランが願いも込めて託した思いは、今季も数字となって表れることはなかった。
 だが、宮里の最終戦優勝はそのドラマ性もあいまって男子ツアーに大きな注目を集めることに成功した。苦しい時期を乗り越えながら自らのゴルフを磨き、人生を積み重ねて人間としても厚みを増した33歳の見せた劇的な勝利に日本中のゴルフファンが思いを重ねあわせた。石川遼、松山英樹がいなくとも年齢を重ねて研鑽を続けてきた30代の選手にはこんなにもドラマがある。そう訴えかけることができただけでも、宮里のツアー初勝利は何勝分もの価値があったのかもしれない。
 初めての優勝スピーチで男子ツアーの現状を語った宮里は記者会見でもこう言った。「僕らの世代の成績が良くないと思う。僕らみたいのがどんどん絡まないとツアーが盛り上がっていかない」。最終戦でさした一筋の光を消さないために。男子ツアー活性化を支えるのは、遅れてきた30代の実力者達しかいない。

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