(Photo by Harry HowGetty Images)

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 米ゴルフ界、世界のゴルフ界の2013年は、どんな1年だったのか。その1年を言い表す一言は、どんな言葉になるのか。
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 そう問われたら、私は「リベンジ」と答える。とはいえ、その和訳は怖くて暗い「復讐」ではない。リベンジを果たした選手も、リベンジを眺めた人々も、誰もが思わず笑顔になるような復活や雪辱。そんな心温まるリベンジが今年はメジャー4大会すべてで見られた。
 アダム・スコットは2012年の全英オープンでメジャー初優勝に王手をかけながらアーニー・エルスに敗れたが、公けの場では見せなかったあのときの悔し涙を糧に、今年のマスターズを制し、「オーストラリア人はオーガスタで勝てない」という悲しいジンクスを覆した。
 ジャスティン・ローズは17歳のアマチュアとして出場した1998年全英オープンでいきなり4位に食い込んだ活躍が、まるで人生の最高潮だったかのごとく、プロ転向後は陽の当たらない道を歩んできた。プロデビュー直後から21試合連続予選落ちを喫し、欧州ツアー初優勝まで4年、米ツアー初優勝まで12年。最愛の父を白血病で失い、苦渋と辛酸を舐めた日々は、今年の全米オープン優勝でようやく報われた。
 フィル・ミケルソンは、すでにメジャーチャンプだが、愛国心に富む彼の何よりの悲願は惜敗続きの全米オープンのタイトルを手に入れること。そして今年、彼はついに米国のナショナルチャンピオンに輝きかけたのだが、最後の最後に大会6度目の惜敗を喫し、「心が張り裂けそうだ。立ち直るまでには時間がかかる」と肩を落とした。すでに43歳。「今年がラストチャンスだった」と、すっかり弱気になった。が、翌月、全英オープンを初制覇。まだまだ、やれる。まだまだ、勝てる。あの敗北と勝利によって、ミケルソンは大きな勇気と激励を世界中の人々にもたらした。
 そしてジェイソン・ダフナーの全米プロ優勝は、まさに絵に描いたような雪辱だった。2011年の全米プロで首位を独走しながら終盤に崩れ、プレーオフに持ち込まれてキーガン・ブラッドリーに惜敗。その悔しさを今年は勝利へ。決してハンサムとは言えない小太りのダフナーが美人妻と一緒に優勝トロフィーを掲げた姿が人々に語りかけたものは何だったのか。スター性なんてものが備わっていなくても、誰よりも努力して頑張って結果を出せば、輝くスターになることができる。ダフナーの勝利は、そう言っていたように思う。
 報われるべき努力が報われ、実った勝利。深く熱い想いが通じた勝利。そんなハート・ウォーミングな勝利を飾った今年のメジャーチャンプたちの年齢は、スコットとローズが32歳(優勝当時)、ミケルソンが43歳、ダフナーが36歳。20歳代のメジャーチャンプが誕生するなど若年化が進んでいる近年のゴルフ界においては、ちょっぴり“高齢化”に感じられなくもない。
 けれど、長い時間をかけて練習を積み、人間を磨き、しっかり土台を固めれば、簡単には崩れない強さを備えるようになる。今年のメジャー4大会は、これからも長く輝き続け、ゴルフ界を支えていく真のチャンピオンを生み出したと言えそうだ。
 そんなふうにメジャーチャンプがやや“高齢化”したとはいえ、ゴルフ界に枯れてしまった感がまるで感じられないのは、メジャー以外の面で若者の台頭や活躍が目立ち、ゴルフ界の年齢的なバランスがうまく取れていたからだろう。
 マスターズでは14歳(当時)の中国人少年、グァン・ティンランが予選通過を果たし、大きな注目を集めた。米ツアーでは出場資格を何一つ持たぬまま、スポンサー推薦に頼って挑戦を始めた19歳(当時)のジョーダン・スピースがジョンディア・クラシックで初優勝を挙げ、あれよあれよと言う間にトッププロの仲間入り。
 そして我が日本のホープ、松山英樹が全米オープン10位、全英オープン6位に食い込み、わずか6試合で米ツアー出場権を獲得した活躍ぶりは、今さらここで説明するまでもないだろう。
 大きな可能性を秘めた若者たちが次々にデビューする世界のゴルフ界。果たして彼らは、今年のメジャーチャンプたちのように時間をかけて夢のタイトルを手に入れるのか。それとも、瞬く間に輝くことができるのか。
 あくまでも、今年は今年、未来は未来だが、ともあれ2013年は熟成された格別の味わいをメジャー4大会で味わうことができた1年。そして、その味は、心温まるリベンジという味わいだった。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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