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1990年代は、現在の旅客機開発の基本的な考え方が確立された時代だった。

航空機メーカーが航空会社の意向を取り入れて旅客機を開発することで、機内の快適性をより向上させるという乗客への配慮。エンジン音を軽減し、二酸化炭素や窒素化合物の排出量抑制させることなどによる社会・環境への配慮。さらには、運賃下落や燃料費高騰などで高まる航空会社の経営リスクを軽減するための燃費効率向上という航空会社への配慮。これらなくしては旅客機開発ができない時代に入っていく。

○ジャンボに代わる快適な大型機・777

そのひとつの完成型とも言えるほどの旅客機が、ボーイング777型機である。現在、日本航空は777-200、777-200ER、777-300、777-300ERと同機種を多数保有している。777-300は先に開発された777-200の胴体を10.2m延長したストレッチ型で、機体の全長は73.9mとジャンボ機(747-400型機)より3.2mも長い。国内線で使用される777-300の座席数は500とジャンボ機並み。その上、ジャンボよりも低燃費で低騒音であるため、日本航空では需要の高い路線に777型機を就航させ、ジャンボ機を退役させた。

一方、777-300の航続距離を延長したタイプが777-300ERだ。「ER」はその性能の通り「Extended Range」の略であり、より遠くまで飛べる旅客機が必要となる国際線の長距離便に多く使用されている。

777-300ERを世界で最初に発注したのは日本航空であり、04年の7月に初就航した。ジャンボより胴体の長い777-300は機内のスペースも広い。そこで日本航空は、777型機としては初めてとなるファーストクラスを設置した。その1席ずつが独立したシート「JALスカイスリーパー・ソロ」は、02年度に航空業界初のグッドデザイン賞を受賞。日本の自然をイメージしたデザインはオーガニックデザインの旗手 ロス・ラブグローブによるもので、上質な革を使用し優しく包みこむようで、斬新な中にも随所に優しさを感じさせるものだった。

その後08年には、「空に浮かぶスイートルーム」をコンセプトとした「JALスイート」が導入された。大型シェルで包まれ「JALスカイスリーパー・ソロ」対比で占有面積20%拡大したものだったが、13年1月からは更に進化させ、木目調の上質な空間へとデザインを一新した。

エグゼクティブクラス(ビジネスクラス)には同じく、グッドデザイン賞(03年)を受賞した「JALシェルフラットシート」を設置。航空機の座席では世界で初めて座席をシェル(貝殻状のカバー)で包みこむデザインで、プライベートな空間を確保するとともに、未来感覚あふれるスタイリッシュな機内空間を演出した。その後08年には、シェルフラットの基本コンセプトを継続しながら更に睡眠にこだわり、よりフラットなベッドに近づいた「JALシェルフラット・ネオ」を導入(08年グッドデザイン賞受賞)。また、13年1月には、足元まで十分に広いフルフラットベッドと個室に近いプライバシー感を備えた「スカイスイート」を導入した。

777-300ERには、「普通のエコノミークラスよりもう少しゆったり過ごしたい」という声を受けて誕生し、いまや数多くのエアラインが採用している「プレミアムエコノミー」も設置されている。グッドデザイン賞(08年)を受賞の「JALスカイシェルシート」は、エグゼクティブクラス(ビジネスクラス)の「JALシェルフラットシート」のよさを継承したものであった。更に13年1月〜はシートピッチを約10cm拡大。プレミアムエコノミーで世界最大級のリラックス空間となり、多彩な機能をプラスした「スカイプレミアム」を導入した。

エコノミークラスでも全席でオンデマンドによるエンターテインメントが楽しめるようになったり、12年7月〜には、機内インターネット接続サービス「JAL SKY WiFi」を導入するなど、日本航空の777-300ERは快適性向上という時代の要望、それを最先端のテクノロジーの領域で実現した大型機でもある。

○燃費効率を20%削減した787

しかし、航空会社も航空機メーカーも現状に満足することはない。日本航空が12年4月から就航させたボーイング787型機は、それまでにない快適性と経済性を実現した。

同規模機の767と比較した場合、燃費効率は約20%も改善され、二酸化炭素の排出量は10%以上、窒素化合物の排出量は12%以上も削減された。また、機内の気圧や湿度も従来機より高くなり、揺れを少なくする機能も改良されるなど居住性も格段に向上。日本航空の787はLED照明で四季を表現したり、トイレにウェシュレットを付けたりなど、日本人向けのサービスをより充実させている(詳細は連載第1回目参照)。

787は当初、「ソニック・クルーザー」の名称でより高速で飛ぶ旅客機として構想された旅客機だった。しかし、航空機メーカーの間では2003年にコンコルドが商業飛行を終え、その後は超音速旅客機(スーパーソニック)の開発が進まなかった。その事実に象徴されるように、時代が求めたのは必要以上に速く飛ぶことではなく、より経済的で快適で環境に優しい旅客機だったのだ。

○エアバスの旅客機運航へ

更に日本航空は13年10月、ヨーロッパの航空機メーカーであるエアバスの旅客機を初めて発注した(※1)。エアバスA350型機である。A350は787型機と同じく機体重量の大半をカーボン素材が占め、湿度も気圧も従来機より高くなる。また、燃費効率は「既存の航空機よりも1席あたり最大25%も向上」(エアバス)させるとしている。日本航空では19年の運航開始を見込んでいる。

今後20年間でジェット旅客機は、2012年の1.8倍に増えると予測されている(※2)。それまでには、もっと性能に優れ快適な空の旅を提供してくれる新しい旅客機が更に生まれることは間違いないだろう。そうした中で日本航空がどんな新造機を就航させてくれるのかも、また楽しみである。

※1)2004年4月に統合した日本エアシステムの機材を除く
※2)日本航空機開発協会資料より

(緒方信一郎)