【インタビュー】ウール業界最重要人物のひとり、ザ・ウールマーク・カンパニーCEO Stuart McCullough (スチュアート・マカラック) 氏が語る業界とビジネスの展望

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取材・文: 編集部  写真提供: ザ・ウールマーク・カンパニー

1964年に設立された世界で最もよく知られている紡績繊維ブランド、Woolmark (ウールマーク)。27,000以上の牧羊業者が出資する非営利法人「Australian Wool Innovation (オーストラリアン・ウール・イノベーション、以後AWI)」が所有する同ブランドは、世界最高水準の天然繊維であるメリノウールを訴求するとともに、「International Woolmark Prize」や、今年Alexander Wang (アレキサンダー・ワン) がアンバサダーに就任した「Merino Wool. No Finer Feeling TM」、英国のチャールズ皇太子が後援者を務める「Campaign For Wool」など、グローバル規模のキャンペーンを多く打ち出している。The Woolmark CompanyとAWIのCEOを務め、『The Business of Fashion』から世界のファッション業界最重要人物500人のひとりに選ばれたStuart McCullough (スチュアート・マカラック) 氏に、ウール業界や今後のビジネス戦略について話を聞いた。


Stuart McCullough, CEO of AWI

- まずは簡単な自己紹介からお願いします。

昔は牧童でした。農場で羊飼いとして働きはじめたのが、ウール業界でのキャリアの出発点です。それからウールの商人として仕事人生のほとんどを費やし、日本や台湾、韓国、中国などにウールを卸していました。AWI に入社したのは2001年なので、この会社で働きはじめて12年が経ちましたね。ここでの最初の仕事はマーケティング関連でした。転勤でニューヨークに4年間いたこともあります。いまの役職に就いてから3年が過ぎました。

 

- Stuartさんが働きはじめたころと現在を比べると、ウール業界はどのように変わったとおもいますか? 大きな変化はありましたでしょうか?

残念なことに、あまり大きな変化は起こっていないんです。ウールが流行って、流行遅れになって、また流行っての繰り返しです。この業界で25年間働いているので、ウールにおける流行の大きな流れを見てきています。昔のモノでも完ぺきなほどすばらしかったりしますよね?Woolmarkはまさにそれで、すばらしい仕組みであり、ブランディングのためのプラットフォームでもあります。

ウールの加工に関しては、技術的な発展がたくさんあるとおもいますが、テキスタイルの面では十分なイノベーションはまだ見られません。これはごまかすことのできない事実です。イノベーションは確かに起こっていますが、残念ながらウールのテキスタイル自体には大きな発展はまだないです。この質問に対して、ウール業界が大きく変わったと言えたら良いのですが、実際はそこまで変わっていないのです。これが本音です。

変わった点をあげるとすると、商品のプロモーションの方法だとおもいます。端的に言うと、デジタルです。当たり前ですが、あなたのウェブマガジンのようなモノは20年前には存在しませんでした。存在したのはテレビや映画、そして紙媒体です。いまはインターネットが加わり、マーケティングの手法もとても洗練されてきています。私たちの会社は、急速にイベント主体のPR会社かつデジタル企業の方向に向かっています。ウール生地のすばらしさを、インターネット上でも大きくプロモーションをしたいです。



- Woolmarkにとって、今後数年における重要なマーケティング戦略はなんでしょうか?

いくつかあります。ひとつ目は 「Merino Wool. No Finer Feeling(TM)」といって、ウールの持つ無限の可能性に対する関心を高め、高級繊維としてのメリノ・ウールの認知度を高めることを目的とした戦略で、現在UNITED ARROWS (ユナイテッドアローズ) と一緒に取り組んでいます。2つ目は 「Cool Wool」という昔ながらのブランディング戦略です。少し暖かい時期でもウールが着心地良いということを訴求するショルダーシーズン向けのキャンペーンです。3つ目は 「International Woolmark Prize」。新進気鋭の若手デザイナーたちを支援するプロジェクトです。これらすべては、弊社がパートナーたちと一緒になって取り組むプラットフォームです。No Finer FeelingはAlexander WangやUNITED ARROWSと、International Woolmark Prizeは新進気鋭のデザイナーたちと、Cool WoolはPaul Smith (ポール・スミス) と取り組んだりしています。パートナーは小売業者だったり、デザイナーだったり、ブランドだったりします。いつもなにかしらのパートナーシップを組んでプロジェクトを進めます。ブランド、テキスタイル、パートナーシップ、これら3つがとても重要な要素です。

 

- 現在日本市場に注力していると聞きました。

もちろんです。日本市場に再び投資をはじめる時期が来たと感じています。人的資源を変えましたし、マーケティング・コミュニケーション専門の社員も増やしました。日本は昔からウールの大量消費国のひとつです。弊社の今後の3ヶ年マーケティング計画において、日本市場は大きな比重を占めています。人口が多いですし、市場規模も大きい。ウールは高価な商品なので、日本市場には期待しています。

 

- いま他に注目している市場はありますか?

SM: もちろん中国、そして米国です。米国経済は回復してきていますね。ヨーロッパと英国も重要ですが、やはりこれからの中国市場に注目しています。人口も多いですし、ウールにとって最適の気候でもあるので。中国は人件費が上がってきているので、生産国というよりは、消費国になってきているんです。昔はウールを加工して洋服をつくって、北米やヨーロッパにシッピングをしていたのですが、いまはつくった洋服の半分を消費しています。国内消費がすごいんです。

 

- Stuartさんは、インターナショナルレベルでのビジネス計画や商品開発管理、マーケティング&セールス戦略などの分野で20年以上の経験がありますが、ビジネスを運営する上で重要な要素とはなんなのでしょうか?

どのビジネスにおいても、大切なことが5つあります。これらすべてをうまく調節しなければなりません。ひとつ目は運営方式、2つ目は戦略、3つ目はオペレーション、4つ目は測定、そして最後はカルチャーです。簡潔に言うと、運営方式はビジネスのルール、基礎となる法則で、戦略はこれからどこに向かいたいかについて。オペレーションはどのようにそこにたどり着きたいか、測定はどれくらい速くそこにたどり着き、どれくらい能率的だったかを測ること。最後のカルチャーはとても重要で、ほとんどの人が忘れがちです。カルチャーとはそこで働く人々のことで、彼らのための良い環境作りなしでは最初の4つの点は無意味です。彼らなしではなにも成し遂げられません。これらの5つはすべて関連していて、優秀な従業員がいても戦略なしではなにもできません。戦略があっても従業員が優秀でないとその戦略を効率的に遂行できません。これらの点はどのビジネスにも当てはまるとおもいます。私は毎朝、起きる度にこれらの点をどう改善できるか考えています。すべてを完ぺきにこなすことはできませんが、できるだけ改善できるよう毎日仕事をしています。

<プロフィール>
Stuart McCullough (スチュアート・マカラック)
CEO at The Woolmark Company & AWI

国際ビジネス企画、商品開発マネジメント、マーケティング・セールス戦略立案、戦略的提携の交渉およびコーポレート・コミュニケーションにおいて、20年以上の経験を持つ。 過去10年間、AWIの指導的立場を務めると同時に、ビジネスユニットの戦略立案、移行、構築、展開など多くの局面において責任者を務める。職務には新商品の開発とその商業化や、北米で のAWI拠点の運営の開始、起ち上げ、管理などが含まれ、また、複雑な動物福祉の問題を介した世界中の関連団体とのコミュニケーションも先導。近年の変革期には、AWIシニア・エグゼクティブに対する戦略アドバイザーを務め、2010年には最高経営責任者(CEO) に任命される。 牧場でジャッカルー(牧場の見習い)として羊毛産業でのキャリアを開始し、ウールクラッサー(羊 毛を仕分ける専門職)、羊毛のテスティング、羊毛輸出、トレーダー/バイヤー、グローバルセール スマネジメントなどの、羊毛を生産する側と需要を生み出すパイプラインのあらゆる局面を経験する。