取締中の交通警察官。基本的に2人一組だ。違反の取締まりを実施している箇所は、大体決まっている。見通しの悪い交差点を曲がった直後は、要注意ポイントだ【撮影/中安昭人】

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日本で15年間の編集者生活を送った後、ベトナムに渡って起業した中安さん。日常的にバイクに乗る中安さんが日々体験するホーチミン市のバイク渋滞。現地に行ったことがある人ならいちどは経験、そして「なぜ?」と疑問に思う、ベトナムならではの交通事情とは?

 ベトナム・ホーチミン市における交通事情の話の第3回目。

賄賂はこっそり渡さなければならない

 クリーム色の制服を着た警官、これが交通警察官だ。バイクに乗っている人間にとっては「天敵」である。交通事情の話をするうえで、交通警察との闘いについて触れないわけにはいかない。

 私が最初に、交通警察官に捕まったのは、1998年のこと。左折禁止の交差点をうっかり曲がったところで、待ち構えていた警察官に止められた。以下、そのときの会話を再現するが、当時はベトナム語が皆目分からないから、会話はボディランゲージが中心で、内容は想像力で補ったものである。

「キミ、キミ、ここは左折禁止なんだよ」
 確かに警官の指さす方向を見ると、左折禁止の交通標識が立っている。が、私が走ってきた方向からだと、街路樹が邪魔になって、まったく見えない。

「免許は?」
 警官も、私が外国人だと分かって、身振り手振りを交えながら話しかけてくる。ベトナムでは国際免許は通用しないので取得しておらず、旅行者なのでベトナムの免許も持っていない。日本の運転免許証を見せるが、当然、「これじゃダメ」と却下された。

 押し問答をしているうちに、彼は自分のカバンの中からピカチューが表紙になった可愛いノートを取り出し、そこに「50000」という数字を書いた。ははーん、5万ドン(当時の通貨レートで約440円)を払えば見逃してやるということだな。

 私は、ポケットの中から当時の最高額紙幣である5万ドン札を取り出して、彼に渡そうとすると、何と彼は「とんでもない!」という風に、慌てて受取りを拒否する。どうして?

 謎はすぐに解けた。彼は私に背を向けた状態で、背中のほうに回したショルダーバッグのふたを開けたのである。そうか、現金を直接、受け取るのは良くないんだ。空いている彼のカバンに私が自発的にお金を入れた、ということにしたいんだな。

 私は折りたたんだ5万ドンを、彼のカバンの中に入れた。
 
 彼はピカチューのノートをしまいながら、中に5万ドン札が入っているのを確認したようだ。それで無罪放免となった。

 ちなみに、左折禁止の標識は、やはり見えにくいらしく、私が問答をしている間にも、他のバイクがやって来ては、別の警官に止められている。まさに入れ食い状態だった。

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