2011年はさまざまな市場で投資家たちの絶叫がこだまするような相場展開が続いたが、それを尻目に驚異的な右肩上がりを描いたのが金価格だった。意外と知られていないが、年明け早々から新たな制度が発足し、その売却益に関して税務当局の監視の目が強化されるという。やましいことを企てようとしても税務署に筒抜けに大荒れの相場に翻弄されて株や為替のトレードで四苦八苦したのとは対照的に、独歩高の様相を呈した金(ゴールド)を首尾よく売り抜けた人は少なくないはず。おのずと、その儲けを申告する人も増えることになるだろう。ただ、年明け以降に売却する場合は、制度の変更に留意しておくべき。実は2011度の税制改正で、「金地金等の譲渡の対価の支払調書制度」なるものが創設されたのだ。この制度が適用されるのは2012年1月1日以降で、まず金地金などの売却代金が200万円を超える場合は、買い取り業者に本人確認書類(運転免許証や健康保険証などの写し)を提出することが義務づけられる。そして、買い取り業者はその書類をもとに売却者の氏名や住所、支払金額、売却日などの詳細を記載した「支払調書」を所轄の税務署に提出する。つまり、金の売却で200万円超の資金が動いた場合は、完全に税務当局がその実態を把握することになるわけだ。「これだけ高騰してきたわけですから、過去に買った人が今売って、利益が出ていないわけがありません。金に関して脱税めいたことを企てようとしても、2012年1月1日以降は筒抜けになるということですね」(林さん)別にやましいことはないものの、痛くもない腹を探られるのは不愉快極まりないと考える人は、年内に売ってしまうのも一考かもしれない。ただ、金に対する課税は保有期間に応じて税率が異なるので、5年以内の場合は税負担が重くなってくるが……。なお、本誌でも紹介(2012年2月号57ページ)した通り、金地金やコイン、プラチナなどの貴金属で発生した売却益は総合譲渡所得として、ほかの該当所得と合算のうえで総合課税の対象となる。ほかの損益状況も売買判断に関わってくるわけだ。一方、金の税金といえば、消費税のことも気に留めておいたほうがいい。金を購入した場合は投資家のほうが消費税を負担するが、それを売却した際には買い取り業者から消費税を受け取ることになる。足元でにわかに消費税率引き上げが現実味を帯びてきているが、現行の5%時代に買っておいた金を増税後に売ったケースを想像してもらいたい。仮に8%に引き上げられれば、自分が負担した5%との差額(3%分)が利ザヤとなるのだ。合法的に得られるものなので、後ろめたく感じる必要はない。実際、3%から5%に引き上げられた際にも利ザヤに着目した人が少なからず存在したようだ。
林 裕二林税理士事務所法人税、所得税等の決算申告業務や税務相談、企業内セミナー講師、原稿執筆等に従事。ファイナンシャル・プランナーとしては、独立系FP会社、証券アナリストや保険コンサルタントとの共同による包括的コンサルティングを行なう。「くりっく365」のセミナーでは講師も務める。
―--この記事は「WEBネットマネー2012年2月号」に掲載されたものです。