FXで発生した利益に関わる税制は2本立てになっていて、投資家たちの間では「フェアじゃない!」という不満が募っていた。そこで、2012年の取引から一本化されることになったが、こうした変化に伴って、意外な「駆け込み節税」のチャンスが生まれているのだ!不利になりがちな店頭FXの税制が年明けから変わる!中身は同じなのに、どこを通して取引するかで適用される税制が大きく異なっていたのがFXの世界だ。まず、「くりっく365」や「大証FX」のように取引所を通じたトレード「取引所FX」には株式と同じく、「申告分離課税」が適用される。これに対し、FX会社や証券会社との相対取引「店頭FX」は「総合課税」の対象となる「雑所得」として扱われる。取引所FXの申告分離課税の場合、原則として確定申告の必要が生じるが、ほかの所得とは合算されず、純粋に「利益×20%」の一律税率が課される。ところが、店頭FXの総合課税の場合はほかの雑所得と合算したうえで、収入が多ければ多いほど税負担が重くなる累進税率が適用されてしまうのだ。したがって、店頭FXで大きく儲けた人は、同じ金額を取引所FXで稼いだ人よりも税制面で不利になりがちだった。こうしたアンフェアな状況に対して不満が高まっていくのは当然のことで、税務当局もようやく重い腰を上げ、2012年の取引分から店頭FXにも申告分離課税が適用されることになった。つまり、FXに関わる税制がついに一本化されるのだ。これに伴い、店頭FXでも日経225先物やオプション取引、CFD、カバードワラントなど(下右図参照)との損益の通算(損益の差し引き)が可能に! また、最長3年間の「損失繰越控除」も認められるようになる。含み益発生中の場合、年内・年明けのどちらの決済が有利?「とはいえ、それは今回の確定申告分(2011年中の取引)には無関係でしょ!」おそらく、ここまで読んでそうツッコミを入れた読者もいるだろう。しかし、それはとんでもない早合点だ。こうした制度変更に着目すれば、店頭FXにおいても今回の申告分から意外な節税効果が得られる。税理士の林さんは次のようにアドバイスする。「現時点で含み損が発生しているポジションがあって、すでに別のポジションで利益を確定させている人なら、あえて年内に決済するのも一考。確定させた損失分だけ利益が減るので、適用される税率が低くなる可能性が出てきます。反対に含み益が発生しているポジションがあって、すでに別のポジションで損失を確定させている人も同様です」これに対し、年内の決済を踏みとどまったほうがいいのは、「まだ2011年中に1度も損益を確定させていない」という人だ。現時点で建てているポジションにおいて含み益と含み損のどちらが発生していても、とにかく決済は年明け以降に先延ばししたほうが税制面では有利になる。含み益が出ている場合は、2012年にそれを利食うことで20%の一律税率が適用される。一方、含み損を抱えている場合は、年明け以降の決済によってほかの先物取引などとの損益の通算が可能となる。「節税は図りたいが、為替差損もこれ以上は拡大させたくない」と考えるなら、ポジションを売り買いの両建てにするのもひとつの手だ。「利益の規模やほかの雑所得の状況次第で総合課税の適用税率はかなり異なってくるので、節税効果をきちんと試算したうえで、年内決済と年明けまで持ち越しのどちらが得策かを慎重に検討すべきでしょう」(林さん)ところで、両建てといえば、一部のサラリーマントレーダーが密かに課税の繰り延べテクを実践しているという。本来、会社員の多くは、FXで年間20万円超の利益を稼ぐと確定申告の義務が生じる。そこで、これにかかる税金を抑えるために、通貨ペアは問わず、とにかく新たに両建てのトレードを仕掛けるのだ。そして、含み損が発生したほうのポジションを年末ギリギリに決算し、あえて損失を確定させる。すると、損失を通算した分だけ年間の利益は減少し、課税額も抑えられる。そのうえで、含み益が出ているポジションは年明けに決済すれば、その確定利益は翌年の課税対象となる。もちろん、この手法にはコストが生じる。売買手数料とスプレッド、さらにロングとショートのスワップポイントの差額だ。しかも、年末〜年始の相場動向次第では、未決済のポジションが含み損へと逆転しうる。これを免れるためには、年末の決済直後に同じポジションを建て直し、両建てを復活させる必要がある。
林 裕二林税理士事務所法人税、所得税等の決算申告業務や税務相談、企業内セミナー講師、原稿執筆等に従事。ファイナンシャル・プランナーとしては、独立系FP会社、証券アナリストや保険コンサルタントとの共同による包括的コンサルティングを行なう。「くりっく365」のセミナーでは講師も務める。
―--この記事は「WEBネットマネー2012年2月号」に掲載されたものです。