『コミケPLUS』Vol.1(ビルトランス)

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 そろそろ日本最大の同人誌即売会・コミックマーケット(以下、コミケ)の時期も近づき、wktkの止まらない人々も多いはず。昨年は『黒子のバスケ』サークルの出展中止といった騒動もあったが、準備会の努力もあり夏コミでは無事復活。今回も、平穏無事に開催されることを祈るばかりだ。

 そんなコミケを前に話題になっているのが、12月9日に発売されたコミケ情報専門誌『コミケPlus』(メディアパル)だ。この雑誌は「コミケット参加者サポートマガジン」をうたい文句にして、コミケの参加者の中でも特に初心者に向けた情報を軸に構成されている。

 ここ数年、コミケで話題になっていることのひとつが、ルールを知らない参加者の急増だ。従来、コミケに参加するには、事前に自分で情報を仕入れる必要があった。今でこそ、夏冬の開催時期になれば、テレビでも季節の風物詩のように取り上げられるので、ネット上のさまざまな媒体、SNSを通じて開催情報は理解できる。

 しかし、コミケは単に行けばお客様扱いしてもらえる催しではない。来場したすべての人は"参加者"であり"客"ではないのがコミケの基本。ゆえに、さまざまなルールをよく理解して、場を維持していく責任が求められる。そもそも、そうしたことはカタログを読めば書いてあること。あるいは、"先達"に教わるものであったハズだ。

 しかし、コミケが広く世間に知られるイベントになったことで、事前知識もなく来場する人が急増した。その結果、夏には熱中症対策が不十分で倒れる人もいれば、お客様気分で「店長を出せ!」と意味不明なキレ方をした人がいたという話も......。『コミケPlus』創刊号の巻頭特集は「冬コミ参加完全マニュアル」。まさに、こうしたヤバい状況を打破する内容だ。なにしろ特集の中では、事前の準備の仕方から、サークルへの差し入れは何が歓迎されるかまでを解説。さらには、コスプレイヤーに「食事やトイレはどうしていますか?」とか、未経験者が「どうすればいいんだろう?」と思うところまでをもしっかりと解説しているのだ。

 とにかく、微に入り細に入り、参加者、特に初心者がコミケに行く前に不安になることを丁寧に教えてくれる『コミケPlus』。しかし、初心者に向けた内容のためなのか、「空気を読みまくっている」部分があるのも事実だ。いや、空気を読み、建前を重視しているがために、事実と正反対になっているといったほうがよい。その最たる部分が、「スタッフ参加編」の「こんな勘違いをしてはいけない」という記事。ここには「スタッフは同人誌などが優先的に買える!?」という質問に「買えない。同人誌が欲しければ一般参加で!」と書かれているのだ。

「大手サークルともなれば開場前にスタッフがやってきて"取り置き"をお願いしますというのは、いつものこと。事前に、サークルの側から"何冊必要か"聞いておくこともありますよ」(あるサークル参加者)

 コミケ運営スタッフになると、開催中に同人誌を買う時間は限られる。そのため、休憩時間を利用して分担して買い物に回る共同購入も一般的だ(もちろん、買い物中はスタッフ証は外しているので、一般参加者扱い......のはず?)。前出のように、スタッフに対しては事前に取り置き対応をするサークルも多い。早い時間に完売してしまうサークルでも、スタッフに対して親切対応をするところも多いので、「優先的に買えるか?」と聞かれれば、やはり「買える場合が多い」というのが正しいところだ。かといって、初めてスタッフになった人が、フラリとサークルに行って優先的に取り置きしてもらえるかといえば、それはないのも事実。

 かつては、オタク系雑誌でもコミケに対して「建前はこうだけど、実際はこう」とか言及していることは、よく見られた(徹夜組のこととか)。そうした記事も見られなくなった時代ゆえ、いきなりムチャな「事実」に言及することを避けたのか。まぁ、スタンダードなルールを知らなくては建前と本音も理解できないはず。とりあえず、コミケに行きたいという未経験者が身近にいれば、この雑誌を読むように薦めてよいネ。
(文/信太 森夫)