ドストエフスキー文学に生涯かけた翻訳家、その数奇な半生を追う。

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ドストエフスキー文学と共に歩んだ一人の女性の、数奇な半生を追ったドキュメンタリー「ドストエフスキーと愛に生きる」が、2014年2月下旬より、渋谷アップリンク、シネマート六本木ほか全国で順次公開される。

80歳を超える翻訳家スヴェトラーナ・ガイヤーの横には、華奢な姿に不似合いな重厚な装丁の本が積まれている。「罪と罰」「カラマーゾフの兄弟」「悪霊」「未成年」「白痴」、言わずと知れたロシア文学の巨匠・ドストエフスキーの長編作品だ。それらを“五頭の象”と呼び、彼女は生涯をかけてドイツ語に訳した。

1923年ウクライナ・キエフで生まれ、スターリン政権下で少女時代を過ごし、ナチス占領下でドイツ軍の通訳として激動の時代を生き抜いた彼女は、なぜドストエフスキーを翻訳したのだろうか。高潔なる知性と独自の哲学を持って、ドストエフスキー文学の真の言葉を探す横顔には、戦争の記憶が深い皺となって刻まれている。

本作では、一切の妥協を許さない彼女の織り成す深く静かな翻訳の世界と、紡がれる美しい言葉たち、丁寧な手仕事が繰り返されるスヴェトラーナの静かな日常を追う。一人の女性が歩んだ数奇な半生にひっそりと寄りそう静謐な映像が、文学の力によって高められる人の営みをたおやかに描き出した作品だ。

映画「ドストエフスキーと愛に生きる」は2014年2月下旬より、渋谷アップリンク、シネマート六本木ほか全国順次公開。

☆「ドストエフスキーと愛に生きる」ストーリー

言わずと知れたロシア文学の巨匠・ドストエフスキーの長編5作品、それらを“五頭の象”と呼び、生涯をかけてドイツ語に訳したウクライナ出身の翻訳家スヴェトラーナ・ガイヤー。80歳を超えても自宅で翻訳に勤しみ、静かに暮らしていた。しかし、工場の教員をしていた息子が実習中に頭に怪我を負い、半身不随の重傷となってしまう。彼女は翻訳と大学講師を休む事に決め、寝たきりの息子を世話するため毎日病院を訪ねた。そして、息子の食事を用意していたスヴェトラーナは、ある既視感にとらわれる。それは封印していた過去の扉、父親とのある記憶につながっていた。