『WORST』33巻(秋田書店)

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 1980年代前半に一世を風靡した『ビー・バップ・ハイスクール』(講談社)や『湘南爆走族』(少年画報社)を筆頭に、1990年代には『ろくでなしBLUES』(集英社)、『湘南純愛組』(講談社)など、不良マンガにはそれぞれ各年代を代表する作品がある。その中で、1990年代から2000年代にかけて、個人的に思い入れのある作品を選ぶとすれば、断然『クローズ』と続編の『WORST(ワースト)』(共に秋田書店)だ。

 その『WORST』の最終巻となる第33巻が、12月6日に発売となる。この最終巻の発売を記念して、現在は東京、大阪、名古屋、福岡の主要駅に巨大ポスターが展示されていることからも、この作品の人気ぶりが伺えるのではないだろか。

『クローズ』や『WORST』がすごいのは、登場する高校生(もしくは学校に通っていない同年代)たちの肝がいちいち据わっていて、見た目や物腰が高校生離れしている点だ。ケンカひとつするにも「筋を通す」だの「仁義を切る」だのといった類のことをきっちりするし、私服がネクタイにスーツの奴もいるし、顔が傷だらけの奴だってひとりや2人じゃない。1エピソードに2〜3人は出てくるので、累計だとものすごい数になる。むしろ顔に傷のない奴が少数派なのかもしれない。立派なヒゲを蓄えている奴もいて、とにかく男性ホルモンの分泌量が尋常じゃない。登場人物たちが将来ハゲるんじゃないかと心配になるくらいだ。

このシリーズは、主人公以外の登場人物のキャラ立ちもしっかりしていて、彼らのバックボーンもしっかり描かれているため、サブキャラの人気も高い。さらに『クローズ』初期の頃と比べて高橋ヒロシ先生の画力が大幅にアップしているので、どうしてもカッコいい造詣になってしまうようだ。そのためか、登場人物がほとんど同じ顔になってしまうという弊害も発生している。だから、読み手としては顔の傷や髪型でしか人物を見分けるしかないのだが、主要人物の中でも髪型をころころ変える奴がけっこういて、そうなると一目で誰かわからない。髪型が変わったら完全に新キャラだもの。

 これだけ書いているとトンデモマンガなのだが、ハッキリいって面白い。僕は90年代前半の中学生の頃から30歳を過ぎた現在まで『クローズ』と『WORST』を愛読していて、恥ずかしいことに中学時代は『クローズ』に登場する本城俊明(ポン)の影響でマスクをして通学していたし、部屋の壁には粘着テープを貼って「武装戦線」なんて書いてたりもしていた(友達は坂東ヒデトが着ていたボタンのついたTシャツを着ていたし、金持ちだったのでライダースジャケットを着ていたりしていた。マスク姿の僕はライダースジャケットがうらやましかった)。さすがにリーゼントにしたり、顔に傷を付けたりはできなかったが、出来る範囲で真似できることはしていたと思う。

 90年代後半にスカジャンのリバイバルブームがあったり、学生服の夏服にリストバンドをつけるのが流行ったり、タトゥーブームがあったのも、『クローズ』や『WORST』の影響が少なからずあったのではないかと思っている(件の友達も、高校を卒業してから和彫りのタトゥー入れていた。これもうらやましかったが、自分には似合わないし、温泉に入れなくなるという理由で諦めた。本当はタトゥーを入れる度胸がなかっただけだけど)。

『WORST』が支持された理由は、きっと上記のようなスタイルへの憧れと、男としての生き様への憧れを、本作が同時に上手く掴んでいたからだと思う。90年代前半に中学生だった僕はそんな主人公たちに感化され、「高校生になったら『クローズ』のような、カッコよくてデンジャラスな高校生活を送るんだ!」と意気込んでいた。しかし、入学早々に自分の実力と度量のなさを思い知り、イケイケの先輩や同級生の後ろで虚勢を張るだけのモブキャラになってしまった。

 きっと、僕みたいに『クローズ』や『WORST』になれなかった大人が、その憧れのままずっと愛読していたからこそ、『WORST』はこれだけの作品に成長したのではないだろうか。完結してしまった今、少しさびしい気持ちがする。でも、高橋先生ならまた続編やスピンオフを描いてくれるだろうという期待も持っている。それで今の中高生が、僕みたいにマスクをして学校に行ったり、部屋に架空のチーム名を書いたりする感化のされかたをしちゃえばいいのに。大人になってからの"不良になれなかったけど、憧れてやってしまった間抜けなエピソード話"は、デンジャラスな武勇伝よりもよっぽど盛り上がるから。
(文/高橋ダイスケ)

■『WORST』第33巻
作:高橋ヒロシ
出版社:秋田書店
価格:440円