「ゲーム・オブ・スローンズ第一章 七王国戦記」BD BOXの中身。
原作の1巻にあたる、全十話が収録されている。ボーナスディスクには原作者ジョージ・R・R・マーティン自らが解説する七王国の諸名家の設定や視覚効果の解説が入っている。初回特典は他にフォトブックやポストカードなど。

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20世紀どころか21世紀に渡って最高のファンタジーと評されている「氷と炎の歌」シリーズを、80億円もの費用をかけて完全に実写ドラマ化した「ゲーム・オブ・スローンズ」。「第一章:七王国戦記」(小説版のタイトル:「氷と炎の歌 第一巻 七王国の玉座」)のBD/DVDに続き、「第二章:王国の激突」(同:「氷と炎の歌 第二巻 王狼たちの戦旗」)が12月4日に発売されます。

20世紀うんぬんは、適当に言っているわけではありません。氷と炎の歌はローカス賞のサイトで行われた投票の20世紀ファンタジー小説と21世紀ファンタジー小説とで、上位に入っているのです。20世紀版では1巻の「七王国の玉座」が2位(1位はロード・オブ・ザ・リングス「指輪物語」)で3巻の「剣嵐の大地」が12位で2巻の「王狼たちの戦旗」が30位に、21世紀版は4巻の「乱鴉の狂宴」が6位にと、現在文庫で日本語訳が出ているものはすべて上位に入っているのです。

舞台はウェスタロスという架空の大陸。かつては七つの王国に分かれていたのですが、今は統一されています。ところが、王の統治にはかげりが……次々と動き出す野心を持つ有力諸侯達。果たして覇権を握るのは誰だ?!

簡単に言うとこれだけなのですが、もちろんこれだけではありません。冒険、愛、情熱、陰謀、裏切り、欲望、殺人、セックス全てがぎっしりと詰まった群像劇なのです。物語が進むと、そこにさらに魔法のようなものも登場します。

多くの人を魅了してやまないのは、それぞれのキャラクターが魅力的で、なおかつ細部に渡るまで世界がきっちりと構築されているからでしょう。でも、あまりにも精密に作られていることと、さまざまな人物の視点が切り替わりながら物語が描かれていくために、なかなか一回では各諸侯の関係がわかりにくいかもしれません。というわけでここで、原作を読むのが面倒な人向けに、知っておくと見たときに理解が深まる、少し物語が始まる前の歴史を説明していきたいと思います。

ウェスタロスには七つの王国と、それを治める王がいました。それを侵略して配下に治めたのが「ターガリエン家」です。ドラゴンの末裔を名乗るターガリエン家は、西方世界からドラゴンを伴ってウェスタロスへ侵略したのです。

ターガリエン家の治世が続くのですが、物語の始まる17年前、その残虐性と狂気から狂王と呼ばれたエイリス・ターガリエンに対して内戦が起こります。立ち上がったのは「バラシオン家」のロバート・バラシオンと、「スターク家」のエダード・スターク、そして「アリン家」のジョン・アリンでした。

3人が諸侯を束ねて連合軍を作り、ターガリエン家の軍勢を打ち破るとそれまで中立を保っていた「ラニスター家」の当主タイウィン・ラニスターが反乱軍側へ加担。王都キングズランディングを略奪します。そして、エイリス・ターガリエンの護衛だったジェイミー・ラニスター(タイウィンの息子)は王を弑逆するのです。このことからジェイミー・ラニスターは「王殺し」とあだ名されるようになりました。

ここで皆殺しにされたかと思ったターガリエン家ですが、8歳になる息子ヴィセーリス・ターガリエンと、エイリスの身重の妻が逃亡に成功します。後に娘であるデナーリス・ターガリエンが誕生。その際にエイリスの妻は死んでしまいます。

内戦終了後、ロバート・バラシオンが王となり「鉄の玉座」に座ることに。そしてラニスター家との同盟のために、タイウィンの娘でジェイミーの双子の姉であるサーセイ・ラニスターと結婚。ジョン・アリンは「王の手」と呼ばれる宰相へ就任。エダード・スタークは自らの北部の領地ウィンターフェルへと戻るのです。

そして月日は流れ、北部総督であるエダードの元に、ロバートが来訪するところから物語りが始まるのです。ジョン・アリンが謎の急死を遂げたため、エダードを新たな王の手にするために、北部へとやってきたのでした……

物語は、いくつもの人物、諸名家の視点で進行します。ひとつの大きなテーマが王の治世にゆらぎが出たので、野心を持った諸侯が立ち上がる群雄割拠の時代を描いたものです。

もうひとつのテーマが、ウェスタロス北部での話。スターク家の治めるウィンターフェルには、北部に大きな壁があります。ハドリアヌスの長城みたいなものと思えばいいでしょう。この壁は氷と砂利で造られており、遙か北の彼方に住む謎の生き物「ホワイト・ウォーカー」の襲撃に備えて造られたものです。壁には誓約で結束した「冥夜の守人」が勤めています。8000年以上も目撃されていなかったホワイト・ウォーカーですが、なにやら壁とその向こうで次々と異変が起きるのです。さらには壁の向こうに追放された人たち「野人」も動いている様子。王国内の争いと、壁の向こうの脅威とで板挟みになってしまう冥夜の守人勢は、主にエダード・スタークの私生児ジョン・スノウの視点で描かれます。

最後のテーマがターガリエン家の末裔デナーリスの冒険譚。ウェスタロスから海を越えて何千マイルも離れたところで、追放された貧乏人の立場から、蛮族の族長と結婚し、軍勢を得て、鉄の玉座を目指します。

これだけ複雑な視点や物語が絡み合っているので、原作はとっても長いです。1冊あたり900ページ以上にもなります。原作者のジョージ・R・R・マーティンは1巻を書き上げベストセラーになったとき、たくさんきた映画化の話を最初は断りました。映画の枠の中だと、削る部分が出てしまうからです。ところがテレビドラマシリーズだと、これだけ長く重厚な物語でもあますところなく描くことができるということで、ようやく映像化されたのです。

そういう経緯で映像化されたゲーム・オブ・スローンズは原作の再現度はかなり高くなっています。ロケ地は主に北アイルランドとマルタ。そこに築かれた数々のセットは本当にそこに七王国があるかのようです。もちろん俳優陣も豪華。特に重要人物の一人であるティリオン・ラニスター(タイウィンの息子でサーセイとジェイミーの弟)は、小人症だけれども頭の回転の早い「小鬼」や「半人前」と呼ばれるトリックスター。主要視点人物の一人でもあります。これを同じく小人症であるピーター・ディンクレイジが熱演。原作者やファンからの熱烈なラブコールがあって実現しただけあって、ティリオンは彼以外ありえないというぐらいのはまり役です。実際、エミー賞やゴールデングローブ賞の助演男優賞を受賞しています。

さて、このドラマを見るに当たっての注意事項がひとつだけあります。それは、これから第一章を見る人は、公式ページのIntroductionを見ない方がいいよ、ということです。第二章の宣伝が主となっているので、さりげなく第一章のラストのネタばらしがあります。なのでなるべくそこは見ずに、他のコンテンツを見るようにしましょう。

また、原作側の方でも少し混乱があります。翻訳者が4巻「乱鴉の狂宴」から交代したのでした。ただ、この交代のときに、各固有名詞をより発音が近い形に変更したのです。例えばケイトリンがキャトリンになったりしました。組織名も「冥夜の守人」は前の訳だと「夜警団」だったりと、とかく混乱をしたのです。現在は1巻から3巻も改訂訳版も発売されているので、原作に興味のある方は改訂訳版を買うようにしましょう。現在はKindle版も4巻まで出ているので、ものすごく分厚いこの本を持ち歩かなくて済むので助かります。なお、本記事の固有名詞の表記は基本的にドラマ版に準拠しています。

とにかく長く、荘厳で、複雑なストーリーですが見始めると止まりません。年末の12月26日と27日にはスターチャンネルで第一章と第二章をそれぞれ一挙放送がありますので、そちらで見るのもいいでしょう。年末年始は是非この物語を堪能してみてください。
(杉村 啓)