世の中にはたくさんの"中古品"があるが、スポーツでよく目にするのが"中古ゴルフクラブ"。たしかにゴルフクラブは頻繁に買い替えられているイメージがある。それは、ゴルフという競技が、"結果を道具のせいにすることもできる"スポーツだからかもしれない。

 止まったボールを打つ。ただそれだけのことがうまくいかない。ボールと自分の間には、ゴルフクラブしかないのだから、うまくいかないのはクラブが悪い。非常に妥当な理論だ。

 ラウンド帰りに中古ショップへ直行してその日使った道具一式を売りはらい、すぐに新しいゴルフクラブを購入したという人の話も周囲でよく聞く。もちろん、本人だってスコアが悪いのは道具が悪いだけではないことを重々理解していると思うが、どうしても我慢できなかったらしい。そうやって中古ゴルフクラブ店の在庫が豊富になっていくのだろう。

 ただし、いくら頻繁に買い替えるとしても、アマチュアゴルファーがプロ仕様のゴルフクラブに手を出すことはほとんどない。

 たとえば、サッカーの場合、本田圭佑が使用するミズノのスパイク「イグニダス 3」が、野球ならワールドペガサスから桑田真澄が使用していたグローブの復刻版「WNGG18」が発売されている。たとえ素人だとしても、道具くらいはプロと同じでいたいと願う......。それが普通の感覚だろう。

 ところがゴルフクラブだけは、自分のレベルに合ったものを選択する。プロ仕様のクラブを手に入れても、それを使いこなせなければスコアが良くなることはないからだ。そもそもスコアが悪いのに高スペックのゴルフクラブを揃えるのは、相当恥ずかしい行為とみなされる。つまり、自分の技量に合ったゴルフクラブを探すという難解なパズルも、ゴルフの楽しみのひとつといえる。

 ではアマチュアゴルファーは、スコアやテクニック以外でプロに近づく術はないのだろうか......。

 そこで紹介したいのが、今回の時計だ。

 ブランド名は「ヤーマン&ストゥービ」。聞き慣れない名前かもしれないが、それも当然。2007年に創業したばかりの新興勢力だ。彼らは、徹頭徹尾ゴルフにこだわった時計を作っており、聖地「ST ANDREWS LINKS」のオフィシャル・タイムキーパーも務めている。

 最大の特徴は「機械式ゴルフ・カウンター」。これは一打ごとにプッシュボタンを押すことで針を動かし、打数をカウントしていく機能。ゴルフ以外には使用しないニッチな機能だが、回転ベセルでハンディキャップを表示するなど、使い勝手に優れている。

 さらに、衝撃が大きいフルスイングでも問題なし。ケース内にショックアブソーバーを搭載することでムーブメントを守ってくれるのだ。ちなみに、リューズやプッシュボタンが9時位置側にあるのは、時計を着けてプレイするうえで、手の甲にボタンが食い込む不快感を軽減させるため。すべてのディテールが、ゴルファーのために考え抜かれている。

 この「ヤーマン&ストゥービ」が、有名ゴルファーとのパートナーシップを作った。といっても名前貸し程度であれば、時計業界ではよくある話。

 しかし彼らのゴルフへの愛情は、相当深かった。何と、有名ゴルファーが試合で使用していたアイアンを溶かして、時計ケースを作ってしまったのだ。

 第一弾、第二弾はセベ・バレステロス。そして第三弾がニック・ファルド。いずれもゴルファーが憧れるスーパースターであり、少しでも彼らに近づきたいと願う人にとっては、垂涎モノの時計となるだろう。

 ただし、この時計を着けているからといって、スコアが良くなる可能性は万が一にもないであろうし、バンカーショットが急にうまくなることもないだろう......。悪しからず――。

篠田哲生●文 text by Shinoda Tetsuo