このままでは、米国財政は破綻する!?
昨年末にマーケットを震撼させた「米国の財政の崖」問題が再び台頭しています。債務上限を引き上げないと、この10月にも米国財政は一時的にデフォルト(破綻)の可能性があるというのです。本当なのでしょうか?

米国の債務上限問題は、米国政府が発行可能な国債残高の上限を決めている公債法をめぐっての問題です。近年、米国政府は医療費や年金など、社会保障費等の支出の増加が続いています。税金だけでは賄えず、国債発行に依存しているのです。結果、国債残高の増加に伴い、公債法の上限引き上げを何度も繰り返してきました。今回も上限引き上げを行ない、国債資金調達によって米国政府の資金繰りショートが回避されるかに注目されています。

しかし米国議会は、上院では民主党が、下院では共和党が多数を占める「ねじれ議会」です。上院で可決しても下院で覆されるなど、スムーズな議会運営ができず、資金ショートの可能性が高まりつつあります。結果、米国政府機関の閉鎖が起こり、世界経済に悪影響を及ぼすと市場関係者は懸念しているのです。

一方、この問題は毎年のように騒がれており、「どうせ直前で回避されるだろ」という、うがった見方もあります。ですが、1995年のクリントン政権時に、この問題をめぐって米国政府が一時的に閉鎖した過去があります。意外にも侮れない問題なのです。

そしてそれを懸念してかFRB(連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長は、9月のFOMC(連邦公開市場委員会)で投資家の予想を裏切り、金融緩和縮小を行なわず、景気下支え策を続投しました。

しかしFRBは、本当は少しでも早く金融緩和を縮小したいはずです。というのも、金融緩和を続ければ続けるほど、FRBの財務が悪化するからです。金融緩和を行なうために、FRBは民間銀行から長期国債を買い入れ、代わりに民間銀行は現金を手にしました。積極的に貸し出しを行なわない民間銀行は手元に現金が余ります。民間銀行は、余剰現金をFRBの口座に入れ、利子を稼いでいるのです。結果、FRBが金融緩和を続けるほど、自身の民間銀行への利子負担が増えるのです。負担が増せば、FRBが経常赤字となり、米ドルの信頼を揺るがすかもしれません。実際、FOMC議事録には、このコストを意識した文言も見られました。

仮にこの問題を目先通過しても、米国政府の財政をめぐる話は再度出てくるかもしれません。FRBのことを思えば、いつまでも金融緩和で資本市場を支えてくれると考えるのは危険かもしれませんね。

崔 真淑(MASUMI SAI)
Good News and Companies代表

神戸大学経済学部卒業後、大和証券SMBC金融証券研究所(現・大和証券)に株式アナリストとして入社。入社1年未満で、当時最年少女性アナリストとしてNHKなど主要メディアで株式解説者に抜擢される。債券トレーダーを経験後、2012年に独立。



この記事は「WEBネットマネー2013年12月号」に掲載されたものです。